昔も今も、3月15日といえば、勘定奉行署に諸表を納付する期限であったが、どうしても深夜明け方まで事務が追いつかない。
そのとき、つれずれに初めて『ラジオ深夜便』を聞いた。
関西の海洋学の学者が、外国の大学にいて教鞭を執りながら学術論文をいくつも完成させていく生活経験を、エリックサテイのピアノのように淡々と、良い味を醸し話していた。
書類を投函して月夜の勘定署帰りの車のラジオでも続きを聞いて、つい、聴いたことをコメントしようと行動したのがめずらしい。
「あなたの研究生活は聞いてとてもおもしろい」
と、研究室にメールしておいたところ、なんと学究に忙しい時間を割いてお返事があった。
「あの放送は昼の時間の収録でしたが、深夜にもかかわらず、東北では、ほかにもう一人のかたからメールをいただきました」うんぬんの内容である。
このとき初めて『ラジオ深夜便』番組を知ったが、そういえば先日久しぶりにおみえになった志津川の元船長さんとご一緒の貴婦人も、ラジオ深夜便のことを申されていた。
「ジャズ喫茶に初めて来ましたが、わたしは、多少思い違いをしていました。ジャズについては、ラジオ深夜便で何度か聴いております」
一方、元船長さんは、得意の手帳からメモ紙を取り出してこちらに渡し、筆跡もかわらずご健勝で、なによりのことである。
そういえば勘定奉行署からあのあとに連絡があった。
「二階の奥の部屋まで出向いてください」
!!
なにかおたっしとはいただけない。書類の数字に不備が有ったらしい。
しかたなく夕刻行くと、くだんの御仁はやっと出先から戻っていて、対面した当方は机の前に直立しお話を承っていた。
すると、突然背後のドアのほうから声がした。
「そのお客さんを、こちらのソフアに座っていただいて」
声の人物はすぐ姿を消して誰かわからなかったが、言われてしばらく何事か考えていた御役人は言った。
「もう、おひきとりになってけっこうです」
あのときの声の主は、決算講習会で目の前に居た新任の御奉行と似ていたようだが、古い記憶でわからない。
ラジオ深夜便は、画廊の先生からいただいた録音テープでも聴くことが出来てなるほどおもしろく、また、水戸の御仁達も話題にされていたが、ジェットストリームとも違った魅力が静かに聴取者をあつめているようだ。
翌日の勤務にそなえ、布団に入っても眠れぬひとには、あまりおもしろい話はドクであるが。
早朝の積もった雪にこぼれたウサギの餌に、スズメが一羽飛んで来た。
そのとき、つれずれに初めて『ラジオ深夜便』を聞いた。
関西の海洋学の学者が、外国の大学にいて教鞭を執りながら学術論文をいくつも完成させていく生活経験を、エリックサテイのピアノのように淡々と、良い味を醸し話していた。
書類を投函して月夜の勘定署帰りの車のラジオでも続きを聞いて、つい、聴いたことをコメントしようと行動したのがめずらしい。
「あなたの研究生活は聞いてとてもおもしろい」
と、研究室にメールしておいたところ、なんと学究に忙しい時間を割いてお返事があった。
「あの放送は昼の時間の収録でしたが、深夜にもかかわらず、東北では、ほかにもう一人のかたからメールをいただきました」うんぬんの内容である。
このとき初めて『ラジオ深夜便』番組を知ったが、そういえば先日久しぶりにおみえになった志津川の元船長さんとご一緒の貴婦人も、ラジオ深夜便のことを申されていた。
「ジャズ喫茶に初めて来ましたが、わたしは、多少思い違いをしていました。ジャズについては、ラジオ深夜便で何度か聴いております」
一方、元船長さんは、得意の手帳からメモ紙を取り出してこちらに渡し、筆跡もかわらずご健勝で、なによりのことである。
そういえば勘定奉行署からあのあとに連絡があった。
「二階の奥の部屋まで出向いてください」
!!
なにかおたっしとはいただけない。書類の数字に不備が有ったらしい。
しかたなく夕刻行くと、くだんの御仁はやっと出先から戻っていて、対面した当方は机の前に直立しお話を承っていた。
すると、突然背後のドアのほうから声がした。
「そのお客さんを、こちらのソフアに座っていただいて」
声の人物はすぐ姿を消して誰かわからなかったが、言われてしばらく何事か考えていた御役人は言った。
「もう、おひきとりになってけっこうです」
あのときの声の主は、決算講習会で目の前に居た新任の御奉行と似ていたようだが、古い記憶でわからない。
ラジオ深夜便は、画廊の先生からいただいた録音テープでも聴くことが出来てなるほどおもしろく、また、水戸の御仁達も話題にされていたが、ジェットストリームとも違った魅力が静かに聴取者をあつめているようだ。
翌日の勤務にそなえ、布団に入っても眠れぬひとには、あまりおもしろい話はドクであるが。
早朝の積もった雪にこぼれたウサギの餌に、スズメが一羽飛んで来た。