ロイス ジャズ タンノイ

タンノイによるホイジンガ的ジャズの考察でございます。

浅草橋の客

2008年12月31日 | 巡礼者の記帳
冬の橋を渡るとき、一関も、川面で羽根を休める渡り鳥が見える。
ジャズで『橋』といえば、マンハッタンとブロンクスのウイリアムスバーク橋のロリンズ・スポットを、誰でも知っているが。
ロリンズはそこでトレーン、オーネット、ドルフィー達のイディオム『モード』の風を哲学していたと。
当方にとって冬の橋は、哲学するには寒い。
シベリアから、越冬に日本をめざし南下する鳥にモードを見た人々が、朝も早くから渡りをつけ、ついに現在の群れ集まる磐井川の光景になった。
あるとき、小さい子をつれてエサを持ち、岸辺まで行った。
離れた流れにいる鳥集団にむけ、「勢いよく!」と言うと、うなずいた子はおかっぱの髪を揺らせて放った瞬間、勢いに暗黙の完璧を期すあまり、エサごとからだも飛んでザブンと水に落ちていた。
うーむ......。
隊列を組んで頭上近くをよぎっていく白鳥の、羽根の風切り音がする胴体を見上げる気分は格別でいたとき、いつのころからか、それがあぶない、しばらく息を止めるのが良いという。
渡り鳥の運ぶインフルエンザはわかっていたことだが、今年はいよいよ撒餌を中止するまでになった。
ブレーズ・パスカルには、人間は考える葦であるが、ハクチョウには、突然の理屈がわからないであろう。
春になると、葦の生えた岸から一斉に北を目指して離陸する白鳥も、いずれ何事か考える葦になるのか。
1962年、ロリンズはイディオムの答えをRCAに録音して、第一作の『The Bridge』など6枚リリースした。
『下北沢のまさこ』に良く行きました、という浅草橋のいなせな男女が登場して、タンノイでロリンズを聴く年の暮れ。





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青い地球

2008年12月13日 | 巡礼者の記帳
2008年の下期、株価は、賀茂川に晒す友禅のようにゆれていた。
株を持ったことのない当方、そういえばむかしお世話になった会社で管理職の端くれになったとき、ふたごころありませんとボーナスをはたいて買った自社株の微動だにしない値打ちを思い出すのだが、特攻隊あがりといわれている総務部長がニヤリと笑って、当方は赤西蠣太ではないが汗をかいたのが妙だ。
青い球体を深淵の宇宙に浮かべる地球は、人口も金の総量も原油埋蔵量も海水の塩分濃度も大気圏から何一つ遁走していないにもかかわらず、株価という証文のイルミネーションがオーロラのように滲んで揺れている。
アフリカのジンバブエ国で、インフレに押されて紙が不足し、木綿地に1億円札を印刷しようというニュースが流れたとき、ロイスに現れた男は言った。
「ブルー・ノートに行ってきました。金髪の女性シンガーが、前評判の心配を吹き飛ばす快演を聴かせてくれました」
傍らの女性が、長い髪を背に廻しながら、「ニューヨークではありませんけれど」とあたたかい調子で秘書のように言い添えている。
その女性が、タンノイが気温になじんだ頃、「黒いオルフェ」を聴きたいと言っている。
こまったね。アイウエオ順にしておけばよかったレコード棚だ。
「彼女の部屋のスピーカー、なかなか良いのですが片方、壊れているので、うーん直したいなぁ」
あのね、その雰囲気なら、ジャズを聴くのにたぶん1個で充分ではありませぬか。

☆混雑をさけ、或る年の12月30日の朝に下鴨神社にお参りしてみた。人っ子一人いなかった。


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ホビィ・ハケット

2008年12月07日 | 巡礼者の記帳
日曜の朝、きぬぎぬの刻をはるかに過ぎて目を覚ますターレスやアルキメデスの人生を思い浮かべ、いつものように喫茶のカーテンをひらく。
コーヒーを淹れながらFMラジオをオンすると、おや~『アイ・リメンバー・クリフォード』が流れているなあ。JBLの音のようでもあるが。
しばし傾聴していると、トレーニングを積んだ女性の美しい声がして、そのテーブルの傍らに、男のまったりとした、それでいてジャズ風のポエムを哲学的に変調した会話がある。
女性の質問は、あらかじめ決められたようであるが、男性はこの女性がおそらく嫌いではない。ゆえにちょっとサービスの気分で何かを話したか、ラジオの見えないところでメル・アドでも?。インタビュアーの抑制を逸脱ぎみになった女性はついに、声がうらがえってしまっておられるなぁ。
局長としては、戻ったら注意。
オオオッ、ジャズをバックに来月のデイトの約束まで決めてるが、次回番組の予定は1月末だね。
よろしい、ターレスは円周に接近した直角の結果がどうなったか、確かめねばなるまいか。
先日、花巻のお客が里帰りの途中立ち寄られて、『ボビィ・ハケット』のLPを聴かせてくださった。
デキシー風の鳴りが、むかし画廊のご主人からいただいたニューオリンズの『アル・ハート』のLPを思い出させた。
拘っているわけではないが、ダイナ・ワシントンのLPでメイナード・ファーガソンのやった『サマータイム』のハイノート。編成局長もインタビュアーが再びハイノートになるか、いまでは注目しております。










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面接官

2008年12月05日 | 巡礼者の記帳
「ちょっと時間が空きましたので、寄せてもらいました」と申されるのは、クリフォード・ブラウンに似た、商社の部長ぜんとした御仁である。
「採用面接の仕事で御市に来まして、このまえは、何度か水沢の『パラゴン』の面接もできました...。」
ジャズの好きな人は、予定を作っている。
一級建築士の心得もあるこの御仁と、室内の造作の話になったとき、さぞ辣腕を振るわれたご自宅のオーディオ・ルームのことを伺おうと、ジャズのボリュームを下げた。
「出身は山形ですが、仙台に出来合いの住まいを手に入れまして、本格的な音響というわけではありません」
休日は敷地の接した隣家に伸びそうな樹木の枝落としが大変で....と申されて、笑顔である。
何事をまかせても上首尾におさめる、やわらかい人なのかもしれない。
リー・モーガンの『アイ・リメンバー・クリフォード』が耳に残る、25才で事故に遭ったブラウニーであるが、このLPは三つ揃いのスーツにハンカチーフを挿したソニー・ロリンズとセッションしているところに注耳して、はたしていかなるコラボにあいなったか I’LL REMEMBER APRIL から針をミゾに落とした。
水戸のタンノイ氏が以前、トランぺットは強く吹くことはたやすいが、柔らかく鳴らすのが難しいのです、と申されていた言葉を、思い出す。
共演のソニー・ロリンズは最近盛岡にも足跡を残した長寿命で、彼は誰がどう上手かったか知っている。セッションの記憶を、温泉にでも浸かりながら言葉で聞いてみたいものだが、「それは、レコードに聴いてくれ」と言うのであれば、いたしかたない。
古川珈琲の究極秘伝~珈琲鉄人という、おそろしげな豆を取り寄せてみた。
深炒りの甘みあり、珈琲豆のコクもジャズ・セッションのようにいろいろで。



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六条御息所

2008年12月01日 | 巡礼者の記帳
そういえば、秋もたけなわの或る日に、『B』とそっくり同じあのJBLマルチ豪快装置を音楽室に誂え、ジャズの楽園に逍遙するY氏が登場し、言った。
「このたび、タンノイの『GRF』コーナータイプを搬入できましたので、とるものもとりあえず鳴らしてみましたが....」
冷静ないつもの語り口が、きょうは37度5分の微熱をかもしておられるが、タンノイに触手を伸ばされることがあろうとは、まったく予想もしていなかったので、驚いた。
それで、アンプは何を?
「いま繋いでみたのはJBLの『SA660』というプリメイン・タイプです」
玄関脇の空間で鳴らした弦楽合奏が、思いのほか、あっけなく、そうとうのレベルで鳴りだしたのにハテナ?と訝って、ロイスのロイヤルを思い出され一枚のLPを持参されたのだ。
いずれタンノイの部屋に夜な夜な通うY氏を、JBLが六条御息所になってしまうのか、いささかうらやましくも思われるが、玄関先の仮の宮でも60Wの銘アンプで、水を得たように鳴ったタンノイである。


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