ロイス ジャズ タンノイ

タンノイによるホイジンガ的ジャズの考察でございます。

ケッヘル・ナンバーの謎

2007年01月30日 | レコードのお話
「モーツァルトは好きではありません」と言う人々は、生誕250周年が過ぎ、すこしほっとした。
なぜ、好きでないのか、誰もそれにとまどっている。そして、まだこれからがあると思っている。
楽譜がモーツァルトの音になるとき、英国人に演奏させるのが良いといわれて、レコード盤がアンプやスピーカーによって様変わりするように、何かを排除したり際だたせたりするのはなぜだろう。
「哀しみは疾走する。涙は追いつけない」といわれる『40番』の旋律の始まりが、ラジオでは聴くことのできない、くぐもったわずかな音符が最初に有るのを、あるとき知る。
この最も味があって貴重な音符が、哀しみの疾走の初めにわざわざ「たったの1秒」おかれたことについて、やはりきちんと考えて聴くのがよいか。
それには、円盤の縁のミゾの余裕をみて、きわどい遥か手前に針をおいて、ボリュームを上げ、席に走る。ゆえに一度も落ち着いて聴いたことはないが。
誰でも知っているジャズ・トリオ、ビル・エバンスを、たまたまぎょっとするオーディオ装置の再生音に遭遇して衝撃が消えないように、モーツァルトは、地響きを立てる低音部や、羽根のような高音部まで難なく再現できる余裕あるアンプリファイアーを要求しているような気がする。
モーツァルトを、言葉で演奏した小林秀雄と、我がタンノイの権威「五味康佑」の対談した録音テープを、啓示を期待して拝聴すると、さすがというべきか二人は、話がかみ合っていない。
対談というアブストラクト・ジャズ・セッションに感心する。
このようにあまり知らないモーツァルトだが、3桁の数字の2つが揃っている曲はなぜか違和感が少ない。
ケッヘル・ナンバーが振り当てられるのは後世のことで『モーツアルト・コード』ではないはずだが。

K299 フルートとハープのための協奏曲
K311 ピアノソナタ9番
K313 フルート協奏曲1番
K330 ピアノソナタ10番
K331 ピアノソナタ11番
K332 ピアノソナタ12番
K333 ピアノソナタ13番
K334 ディヴェルティメント17番
K338 交響曲34番
K414 ピアノ協奏曲12番
K448 二台のピアノのソナタ
K449 ピアノ協奏曲14番
K466 ピアノ協奏曲20番
K488 ピアノ協奏曲23番
K511 ロンド
K515 弦楽五重奏曲3番
K525 アイネクライネ・ナハトムジーク
K550 交響曲40番
K551 交響曲41番
K588 コシ・ファン・トゥッテ
K595 ピアノ協奏曲27番
K620 魔笛  ※ 字余り。
K622 クラリネット協奏曲
K626 レクイエム

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ジャズはサバンナへ帰る

2007年01月21日 | 徒然の記
ネルソン・アベニュー・モーニングが低く鳴りだして、1月というのに温かい冬、登場した客はコートを脱ぐと、あらわれたスーツもまた黒ずくめだった。
室内を見回し、おやーっと笑みをこぼしている。
「コーヒーを...」
「たまたま前を通って、ちょっと休みたいだけですが」と、音楽に興味はないそうである。
豆挽きがシャーッと珈琲の香り立てると、ソフアに身を沈めたそのほかと様子の違う客に、思うことがある。
コーヒーをたまに口に含みながら、深々とソフアに身を沈めて窓の外を眺めているその客に、おせっかいとは思ったが、古ぼけた1枚の写真を見せた。
すると、サッと身を起こして、自分から話り出した。
そのときそこに、土蔵でアルテックとタンノイを鳴らす客人が、若い女性を伴って登場された。
その女性は、アナログでなく専門分野がデジタルで、パソコンの組み立てはお手のものとご紹介があって、はじめて注視すると才色兼備の麗人だ。黒ずくめの男は黙った。
土蔵のご主人は、最近の出来事を「とっておきのトランスに「2A3」をプッシュプルでA級10ワットのアンプが完成しました」と、さりげなく申されながら、フィードバックのことなど、技倆の粋を傾けた喜びを隠しきれないご様子である。
完成したアンプの音を祝して、聴き比べの参考にビッグバンドからオーケストラまで5曲ほど、盛大な音量で聴いていただいた。
ちらりと、音楽に関心のないと申される黒ずくめの客を見ると、音の洪水の中で、どうやら寝息を立てている。
2人がお帰りになると、また目を覚ました黒ずくめは話す。
「そういえば、たまたま川向うの『B』にも行ったことが有る」と。
「そこは、日本有数の『しにせ』と言われてます、良い経験をされましたね」当方は出向いたことはないが、たまに、JBLの音がなつかしく思われるのは、モダンジャズという自由な前衛がいかにもストレートに聴こえるからである。
黒ずくめは「へええ、音の何がどうなのかさっぱりわからない」と申されながら、お代わりした珈琲を飲み干すと、自分は仙台の下町に住んでいますと言い、皺のない札を出して、お帰りになった。
先週、お見えになった客人が申されるには、店舗で使用する大根の漬物150本が、暖冬のせいで、干乾燥のタイミングを計れないと。


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LIVE! Shelly Manne & His Men at The MH

2007年01月18日 | 巡礼者の記帳
ハリウッド『ザ・マン・ホール』は1961年の春、コンテ・カンドリのミュートトランペットがズチズチーッ!と、くぐもった銀色の音色を引きずって、テンポの良いベースと、シェリーマンのピシピシチッチッ!とスイングする「ON GREEN DOLPHIN STREET」に耳目を奪われた観客がうっとり痺れていた。
「いやー、やっぱりタンノイは10メートルくらいの奥行きが聞こえてステージのイメージが凄いです。JBLやアルテックでは像が前に並んで、こうはいきません」老舗の社長に伴われて、初めての紳士はしきりに前後左右の音像に反応しては喜んでおられる。
そういうことに気のいく人は、ただものではない。
「すると、スピーカーは何を?」
「え、いえちょっと...4344でジャズを」小さな声で遠慮がちに型番をいう。
聞き返すと、それは名器「JBL4344」で、20年それでジャズを聴いておられる筋金入りであった。
「バックロードホーンでは、この音は出ないでしょう」タンノイ・キングダムと勘違いされ、知人のタンノイでクラシックを堪能した記憶を述べておられたが、そのままに「出ないでしょう」と合わせた。
いま眼前で鳴るロイヤルは、このロード・ホーンの特長を知る人にとっても、普段のJBLのイメージとだいぶ音像が異なっているらしい。
バックロードは、遅れてキレのよい低音はむずかしいと思われている。こちらを立てれば、あちらが立たずなのだ。
タンノイは「ちょうどよいくらいに鳴っております」と言っている。
61年代のシェリーマンに似た老舗の社長は、会話に耳を傾けて、メガネの奥の眼をパチクリしながら笑っておられた。

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ALC・ラボラトリー

2007年01月15日 | オーディオショップ
いよいよ主人という人物が電話口のむこうに現れ、当方の趣を察すると、ウインチェスターに弾を込めるようなひと呼吸をおいて、真空管やコンデンサーにまつわる蘊蓄がしだいに熱を帯び、話は、たしかな技術を誇示している。
タンノイのための『デバイディング・ネットワーク』の広告を見て。
もし、これを繋いでタンノイが豹変し、凄い音で鳴ったら....と、思うものである。
こちらが、どうやら感心していると察するや、こんどは音と音楽にまつわるボギャブラリーが機関銃のように受話器から聞こえてくる。
ティボーのバイオリンは、弦のつややかさと胴鳴りの、コルトーのピアノがうんぬん..
この話芸はどこで終わるのか。
相手は受話器の下側に語りかけ続けながら、じつは、ちゃんと上の穴からこちらを覗いているかのように、マイルスがどうのと切れ目無く立板に水、礼賛の言葉は続く。
「いちど、聴いてご覧なさい」ということで、そのデバイダーは送られて来たが、たぶん音楽はデバイダーが鳴らすのではないだろう。
ゆえにタンノイが好みの音であれば、悪かろうはずがない。
もっと関心があったのは、その試聴室で鳴っている音楽だが、ぜひいつかと思いながら、まだ果たせない。


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オーディオニックス

2007年01月09日 | オーディオショップ
オタクではないが、代理店というところにも興味があった。
江戸川にあったタイガービルのハーマンの次に訪ねてみたのは、オルトフォンの当時の日本代理店である。
代々木の並木道をすこし入ったところに『オーディオ・ニックス』はあった。
鉄骨の階段を昇って二階のドアをトントンとたたくと柔和な年配の男性が顔を見せ、ワンルームに、壁に向かった作業机が5つほど並んでいるのが見えた。
「このGTEを、トランスを外してGEの針を付けてください」
一般客が訪ねて来ることは無いのだろう。どこから来たのかときかれて住所を言うと、ビクターの人ですか?と勘違いされニコリとされた。何十年も前のことだが皆、和気あいあい静かに組み立てのようなことをされていたように憶えている。針はその場ですぐ付けてもらえた。
いつもはアキバまで行って、名物おばあちゃんにお願いして、自宅に送ってもらった。
あるとき急いでほしいというと、若い衆がカートリッジを持ってどこかに消えていったが、そのSPUは、ホールドベースが前後逆に取りつけられて往生した。
取りつけ角が傾いていても、ちゃんと音は出るからしばらく気が付かなかった。
名物おばあちゃんの居ないとき、代わりの人が菓子箱のようなものを開けて「ではこれ」と代わりのSPUを渡してくれた。
家に帰ってセットすると、片チャンネルから音が出なかった。
電話するともう一個送られてきて、トクしたのだろうか?
オーディオ・ニックス時代の製品は、いまでもプレミアムがつくようだが、我々の知らないノウハウが、彼等にはあったのではないか。
オルトフォンの蘊蓄をぜひ聞きたいものである。

☆読売新聞日曜版に連載していたドナルド・キーン氏から、家の者に年賀状が届いた。表も裏も自筆で、本物かどうか論議になっている。
☆牛乳店の社長がお見えになって「わたしの母校です」と、サッカー全国制覇の感激もあらたに盛り上がった。味のある勝ち進みでドラマのようである。


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クリニアンクール

2007年01月07日 | レコードのお話
「1週間かかります」ショップの店長は、オルトフォンSPUを握ると、こちらから見えないように親指の腹で針の先をチクチク確かめている。
誰が言い出したか、針交換はLP300枚くらいが目安と聞いた。そこでボーナスごとに替えるのだが、たいていの針はまだまだ減っていないらしい。
ほかの理由で音が悪くなっても、針先のせいになっている。
顕微鏡を中古で買ったのは針先を見るためだが、さんざんながめて解ったのは塵芥の凄さ、なぜか針の先の減った様子はさっぱり見えなかった。
針メーカーが無塵室で何千時間とレコードをかけてわかったことは、ダイヤモンドはビニールを相手に摩耗しないということ。
減るのは、ミゾのゴミ砂粒が理由であると。それが本当なら嬉しい。
SPUのシェルのピンは、肉眼でつるつるに見えても、アームのピンと圧着する先端面を拡大して見ると、ヤスリのようにザラザラで接触が非常に心もとない。
この接触は音に重要な影響があると考えられ、左右バランスや音像定位がシェルによって変わることも事実である。
さて、ここを平らに磨こうとしても、ミクロの世界ではゴミを目詰まりさせる。
それよりは、もっとよい方法がある...。

☆夜になっていよいよ雪が降った。真空管は骨董ではないが、自由な何かがある。
☆ロイヤルスピーカーのトップを被うクロシェレース。タンスの奥から取り出して労作を惜しげもなく贈ってくださった。

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HT氏の管球作品

2007年01月05日 | 巡礼者の記帳

昨年末のこと、建築設計をなりわいとされるオーディオ・マニアのHT氏が、ご自宅の管球作品を何枚か写真にしてくださった。
特長のある真空管とトランスを自家薬籠中の物として配線をデザインし、極限まで性能を追求した作品群は、華麗に氏の音楽生活を彩ってきた。
その道の人が見れば脳裏に音色が浮かぶ趣味の世界である。
だが、うっかり耳を傾けると、当方の装置も氏のサウンドカラーで染められる恐れのある、オーディオのあぶないところだ。
いつか心して、その超絶のサウンドに浸って、あぶら汗をたらしてみたい。


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亥年のお正月

2007年01月03日 | 巡礼者の記帳
「あれはダイナコ25でしょう。あのくらいの小ささのスピーカーで、ロイヤルの音を出したいものです」中央のスピーカーを眺めながら、金鉱脈資金を持たれて悠々自適のオーディオ博士は申される。
いずれ中国の人口を考えると、ロイヤルの大きさは資源活用に無理があるらしい。
「オーディオはスピーカーの性能半分、アンプの性能半分です。その両方を開発して、マスターテープでバン!と鳴らすのが最善です」ソースはやはりマスターテープに理があるのか。
「わたしは良いマグネットを持っているので、振動系だけうまく開発できると良いのです」と、ウエスターンとかハイルドライバー...と口の中で呪文のようにつぶやかれると、珈琲カップを口に運びおいしそうに飲み干し「そうそう、わたしはバッハも聴きますので、ジャズもクラシックも聴けるスピーカーにしたいと思います」と申され、さて、これから秋田の方に廻ってみましょうか。
もう外は暗くなっているが、大丈夫だろうか?
「日本では、500キロの移動も、アメリカなら1000キロです」
WHyAAー、なかなか、豪快な人物だ。
そういえば、最近手に入れたコーヒー・グラインダーは中古の煤けたナショナル製で、メッサーシュミットのカウリングのような先に臼刃が摺り合っている。最初に挽いたら不揃いの妙な粉が落ちてきて愕然とした。一日がかりで分解し磨き上げると、重いグラインダーは音も静かにビチビチと見事な粉を挽くようになったので、ナショナルを見直した。
正月早々、このお客に、整備完了のグラインダーでやっとのこと応戦したのであった。
タンノイ・ロイヤル様については、いつもマイペースであられるので、当方の関知できることは少ない。

☆A列車で行こう、でオープニングするエリントンのニューポートジャズフェスはさすがオリジナル盤のサウンドである。所有者はリンホフ氏。
☆最近ハリウッドのMrケンが日本向けにホームページを開いて通販を開始したようだ。
☆ロジカル・ウイングスさんは/www.d5.dion.ne.jp/~haji/


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