ピアノの2つの白鍵に挟まれた1本の黒鍵のことであるが、本当はここに音程の違う2本が並んで在るはずのものを平均律の手法は、まとめてしまったらしい。
あるとき音楽の先生が試験のあとで、もう一人と教室の前に出て歌うように言い、デュオで自慢のノドを披瀝することになった。
だがどうしたことか歌ってみると、楽譜では同じ音符を歌っているのに、全然ハモらないことに驚いた。
其奴も、さぞかし驚いたはずであるが、聞いていた者もぼうぜんとし、ピアノ伴奏した先生も予想外の結果にあきれて下を向いていた。
オクターブもちがえばまあ護摩かせるが、ほんとうの「不協和音」はまさに在る。
マイルスとコルトレーンは、彼らに同じ黒鍵のキーがロリンズは違うと言っているような気がしてならない。
『明るい表道りで』を、ロリンズとステットとガレスピーが同じ音符を同時に吹くというので注目していた前半は、きわどく非常に興味深くノリもすばらしい。
この3人は、なぜならパワーがどうしてもソリストである。
バスを3台、並べて3人4脚に結わえつけていっせいに走らせるようなダイナミズムを思いついたのは、ヴァーヴレコード社長のノーマングランツであった。
このレコード会社は、そういう意味でも興味深い豪華をやってのけるが、手ごろな装置で深く堪能するには、普通に3人のうちの1人が吹いてくれるのが良い。
サイドをRブライアントとTブライアントとCバーシップが堅める『エターナル・トライアングル』は、ちょっと前にテレビで見た百メートル世界陸上で一斉にブンブン快速に蹴走るありさまに、途中からガレスピーも走りながら吹いて割り込んでくるのがジャズである。
その日、ROYCEの客がサウンドの結果に満足されたのか、
「自分も板を組んでウエストミンスターを造ってみたい」
と申されている。
さりげなく言っているが、満足を言うあたらしい表現に、おや、と思った。
その人物を良く見ると、NHKの名物プロデューサーそっくりの御仁であるが、当方にロイヤルとヨークの音の違いを説明させて、面接の試験官のように
「それではどうも言っている意味がわかりませんぞ」
などと、くいさがってくるではないか。
おそらく妥協なく本気で造るつもりなのかもしれない。
もう一人の客人も
「あのナカミチ700デッキの音を聴いてみたいものです」
などと経験の深いところを申されて、
考えよ旅人
汝もまた岩間からしみ出た
みずたまにすぎない
と西脇順三郎氏の言うように、お二人の最終的音響装置の部屋の情景が、しばらく思い描けなかった秋である。
あるとき音楽の先生が試験のあとで、もう一人と教室の前に出て歌うように言い、デュオで自慢のノドを披瀝することになった。
だがどうしたことか歌ってみると、楽譜では同じ音符を歌っているのに、全然ハモらないことに驚いた。
其奴も、さぞかし驚いたはずであるが、聞いていた者もぼうぜんとし、ピアノ伴奏した先生も予想外の結果にあきれて下を向いていた。
オクターブもちがえばまあ護摩かせるが、ほんとうの「不協和音」はまさに在る。
マイルスとコルトレーンは、彼らに同じ黒鍵のキーがロリンズは違うと言っているような気がしてならない。
『明るい表道りで』を、ロリンズとステットとガレスピーが同じ音符を同時に吹くというので注目していた前半は、きわどく非常に興味深くノリもすばらしい。
この3人は、なぜならパワーがどうしてもソリストである。
バスを3台、並べて3人4脚に結わえつけていっせいに走らせるようなダイナミズムを思いついたのは、ヴァーヴレコード社長のノーマングランツであった。
このレコード会社は、そういう意味でも興味深い豪華をやってのけるが、手ごろな装置で深く堪能するには、普通に3人のうちの1人が吹いてくれるのが良い。
サイドをRブライアントとTブライアントとCバーシップが堅める『エターナル・トライアングル』は、ちょっと前にテレビで見た百メートル世界陸上で一斉にブンブン快速に蹴走るありさまに、途中からガレスピーも走りながら吹いて割り込んでくるのがジャズである。
その日、ROYCEの客がサウンドの結果に満足されたのか、
「自分も板を組んでウエストミンスターを造ってみたい」
と申されている。
さりげなく言っているが、満足を言うあたらしい表現に、おや、と思った。
その人物を良く見ると、NHKの名物プロデューサーそっくりの御仁であるが、当方にロイヤルとヨークの音の違いを説明させて、面接の試験官のように
「それではどうも言っている意味がわかりませんぞ」
などと、くいさがってくるではないか。
おそらく妥協なく本気で造るつもりなのかもしれない。
もう一人の客人も
「あのナカミチ700デッキの音を聴いてみたいものです」
などと経験の深いところを申されて、
考えよ旅人
汝もまた岩間からしみ出た
みずたまにすぎない
と西脇順三郎氏の言うように、お二人の最終的音響装置の部屋の情景が、しばらく思い描けなかった秋である。