ロイス ジャズ タンノイ

タンノイによるホイジンガ的ジャズの考察でございます。

木の芽時

2013年03月30日 | 徒然の記
ジャズLPで靴といえば、クールストラッティンのハイヒールかな
伊達藩一番町より春の便りが届いた。
高速道にも前後左右に春の靴

東北道を花巻から過ぎたあたりでポルシェ911に抜かれ、ウッ、と思ったその頃、出発前に小一時間、荷風先生の『濹東綺譚』に目を通したことを思い出した。
濹東とは隅田川東をさしているらしく、わずか120ページの1936年ころに書かれた新聞連載、時期的にバレンタイン氏がパリのことを書いた北回帰線の4年あとのようだ。
かたや隅田川、一方はセーヌ河で、サーベルを鳴らす検非違使から言問橋の番所に誘導され手持ちの風呂敷を開くように言われると、襦袢(女性下着)や印鑑証明書や戸籍謄本が出てきた様子、雨の傘に背後からアナイスのような女性が小首を差し込んで来たので、言われるまま家に行った様子などがたんたんと綴られていた。
当方は、やはり用事を思いだし熟読できなかったが、巻末に奥野という人物の解説がある。







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『ウエストレイク』

2013年03月22日 | タンノイのお話
プルプルと卓上の電話機が振動し、地下にしつらえた音響室で『ウエストレイク』を永年楽しんで居られるS先生の声である。
オーディオ装置の4セットを自在に操って、ジャズLPのコレクションを堪能する光景が浮かび、その後のご様子を尋ねてみた。
――オーディオにお変わりはありませんか?
「あれから二つほど手に入れたスピーカーがありまして、KEFの小型が新しく出ましてね」
おやおや、小型にまで触手がのびているらしい?
ところで、とお話は展開した。
「知人が鳴らすJBLの音を聴かれた著名な先生が、すばらしい!と申されたそうで、決心がついて一方のタンノイを処分されたそうです」
けしからん、と当方は思う。
「ところが、それから音がおかしくなってしまったらしいのです」
タンノイとJBLはセットの音響と、茶室のお話であった。

青くても あるべきものを 唐辛子




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早春

2013年03月20日 | 巡礼者の記帳
日本のバブル絶頂期は1989年頃といわれ、このころ然る地で所有物件を手放したところ、購入価格の2倍になっていた。
だが、買換えに余得が効果を表す20年待たねば、おなじことである。
日本中の小川のフチの空地にまで買い手の付いたころで、全国土の総価格が2360兆円。
人それぞれ何事か計算し、生き生きと大忙しであったころ、ジャズは。
夏用タイヤに替えたので、ちょっと走ってみようということになった。
郊外に出ると、白い道にまばらに車が走り、草木も芽を吹き始め気分は最高である。
岩手のいちばん南の町に国道4号線が差しかかるころ、脇道に入って昔の記憶を楽しんだ。
そこは前にも記録した花泉という土地であるが、その隣が藤沢といい、温暖な町並みと広大な田畑を眺めながらエンジンは妙に静かなことに気がついた。
さしかかった路傍の食堂を二三軒はしごしたい気分を我慢して、中央林間の更科という食堂の天ぷらお重を思い出していたが、かりにここに別荘を持てれば、近くに北上川も有り、花の育ちもよさそうである。
おや、すると街路の対向車線をはみだすような大型の消防車がピカピカ電飾を光らせて威風堂々と近寄ってくるのが見え、操縦席が五合目のような上の方にあり、このような空母のような巨大な消防車はまだ見たことが無い。麻布からでも走ってきたか。
すると隣の席の者が「あのような消防車はいまではどの町にもめずらしくありません」と言っている。
モデルチェンジは乗用車だけではないそうである。
廊下の陽射しに、ウサギは気持ちよさそうに午眠している。




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聴秋閣

2013年03月16日 | 巡礼者の記帳
先日のお客は美濃国からと申され、そういえば同郷のつながり原富太郎の横浜本牧に造作した『三溪園』という名所に行ったことが有る。
生糸で財を成した経済人で茶人の原三渓は、その蓄財で全国の古建築を広大な庭園に移築し、現在は一般公開されている。
なかでもこの聴秋閣は、非常に感心した造形で、もとは徳川家光の希望で佐久間実勝が二条城内に建造したものらしい。
二階部分はわずか2畳で流石の狭さ。
季節によってはヤブ蚊が飛んでおり、ちょっと痒い。
ここにタンノイを備えて、秋を聴きたい聴秋閣。





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スペンドールBC-Ⅲ

2013年03月11日 | 巡礼者の記帳
ジョイナスから高島屋に入るところにYAMAHAのオーディオルームがあった。
そこで鳴っていた英国スペンドール社のBC-Ⅲは、珍しかったのでいまも憶えている。
BC-Ⅱタイプを聴いて素晴らしいと感心すれば、ついBC-Ⅲのことが浮かぶのは、この社の製品に3つの選択肢があったからである。
ニューヨークのビレッジヴァンガードライブや、ウイーンフィルの田園を鳴らした音像を考える。
タンノイが眼の前に有りながら、それはそれとして。
ユニットを写真で見ると、BC-Ⅱにウーハーの加わった、ラファロのコントラベースが鳴りそうな増強である。
もはや遠い過去の製品BC-Ⅲは、マークレビンソンなどで聴いてみたかった。
関西から立ち寄られた客人は言う。
「白川郷とは離れたところで、そこではあまり雪は降りません」
そのとき、真空管アンプのノイズが鳴り始めおやおやと思ったが、一方の仙台からお見えの男女の客人は少しも騒がず
「良い音を、ありがとうございました」
と丁寧に申されて、折り目のない一枚を出した。
日本語はまどろこしい言葉、英語は戦う言葉だといわれるが、タンノイやスペンドールはブリテンの特徴が色濃く聴こえる。

月はやし こずえは風に かたぶいて




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神戸のカンタベリー氏

2013年03月04日 | 巡礼者の記帳
奈良平城京の遺跡から発見される和同開珎は、そのころ日給およそ1枚にあたって、米2升の代価であるという。
朱雀門の傍に邸宅のあった大納言『長屋王』の年収は4億円もと書かれ、現代ならば邸内にタンノイ装置などを聴く高床響所もあったはずと、雑誌から目を離したそのとき、寒気の少し緩む街路から黒ずくめの、旅の荷を背負った人が入ってきた。
室内のウエスギアンプを見て、300Bキットの組立にウエスギ氏と電話で話したと申される、静かに荒ぶる人は、山下洋輔の弾く「乙女の祈り」が午後の室内にゆっくり響いているところを聴いて、御自身も神戸で『タンノイ・カンタベリー』を楽しんでおられるそうである。
まもなく爆音に変身する有名な山下演奏を賞味されると、とても良い、と喜ばれた。
ウイーンのオーケストラが軽快にシュトラウスの「爆発ポルカ」を始めると、昨年のご旅行で、モーツァルトの「夜の女王」とムジークフェラインザールで対面された記憶を申されているが。
「むかしイタリアの古都で、しばらく勉強したことがありました」
当時をしのばれると、住まわれている神戸の地形は「入っても何でもすぐ出て行ってしまう傾向ですが一関のような盆地の地形に文化は長くとどまるようです」と面白がられるのを耳にして、御仁の都市工学の名刀が鞘走った一瞬を見た。
このタンノイの音はまったく予想していなかったと申され、このうえどのような計画が有るのかとそれは茶席むけの会話のようでもあったが、ジョバンニ・カッシーニも学んでいた古都の学問を、震災の沿岸にご尽力があるのかもしれない。





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