ロイス ジャズ タンノイ

タンノイによるホイジンガ的ジャズの考察でございます。

タンノイ・オートグラフの客

2007年07月28日 | 巡礼者の記帳
いつかお見えになる、と思っていた。
花のお江戸で、3店舗を経営し、タンノイ・ヨークでジャズをお客に聴かせている見識。
申し分のない人物である。
ソフアに身を置くと「あーっ、これは」と、ロイヤルの音を見つめた。
「明け方、新幹線に乗ったのでまだ眠かったのですが、眼が醒めてきました」
持参した1枚のオリジナルLPを取り出した客は、タンノイの鳴らすジャズに耳をすませ、連れの人と一緒に沸いた。
ご自宅では『オートグラフ』でジャズを聴くといい、よほどのタンノイ好きに違いない。
「やっとマランツ#7を手に入れました」と申されて、話は12AX7球の選択のことになった。
タンノイを眺めているだけで寛ぐ、忙中の閑を楽しまれつつ、都会の海を航海する人である。

☆タンノイバックロード折り曲げホーンの図は、メーカーカタログを参考にした概念図。言い古された、誰でも知っている折り曲げ構造であるけれど、所有者の誰も、実際に箱の中がどうなっているか観ることは無い。ピラミッドのように封印して音楽を聴く。

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JBLエベレストの客

2007年07月24日 | 巡礼者の記帳
梅雨明けの高速道を花巻市からお見えになった客は、以前住んだことのある一関を懐かしく思われ、新聞の記事で知った『ロイヤル』を聴きに駈けつけられたそうである。
ウエストコースト・ジャズなどをともに聴きながらうかがったお話は、大変興味深いものである。
ご実家の都合で花巻に戻られて、仲間と立上げた事業が大成功した。
ところが朝から晩まで忙しく、まったく趣味の時間が取れないまま何十年も過ぎて、或る日、突然入院していた。
一念発起、自宅の二階に二十畳のオーディオ・ルームを造り、導入したスピーカーは今を時めくあの『JBLエベレスト』六百万両という...。
「それで、どんな音で鳴っています?」お客の言葉を、今かと耳を欹てた。
「それが...ドアを開けて廊下に出たときの音が良いのです」
眼が少し笑っているが、あながち冗談ともとれない。
どうぞ、聴きにきてくださいと申されて、地図を書いてくださった。
エベレストの頂上を究めた音を、ぜひ聴いてみたい。

☆以前拝見したクリプッシュ・ホーンが「やはり床は大理石が良いかな」とのご主人の素早い判断によって、現在は寸法を整えた大理石の上に設置されているとのことである。

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フィレンツェ 1

2007年07月21日 | 旅の話
テレビで、フィレンツェのニュースを見た。
そういえば、フィレンツェというところに、行ったことがある。
ヨーロッパ中世の石畳の街、日本の安土桃山時代にはダビンチやミケランジェロがここに暮らしていた。
「モナリザ」が、あるときルーブル美術館から忽然と消え震撼させられたが、2年後にこのフィレンツェで発見された。絵は里帰りしていたのである。
この歴史の街を究めようとすれば、何年住むと気がすむのか。
ホテルでの夕食後、散歩に出て、気が付いたときには迷子になった。
通りかかった痩せた男に道をたずねると、その笑わない大学生に黙って或る広場に連れていかれた。
そこには、腕に刺青をした不気味な男女の革ジャン集団がオートバイに跨り、ブルンブルン円卓会議の最中で、ぎょっとした当方「かんべんしてよ」。
男は、そこに当方を導き、ホテルの道順を聞き出そうと、何かを喋っている。
ウタマロか空手か、一斉に上から下までジローッという男女の視線が、レントゲン光線のように爆音を伴って照射してきた。
見る旅人が、見られる旅人になったあの瞬間のことは、忘れられない。
その大学生は一緒に案内して来たが、最後まで一言も喋らなかった北イタリアである。

☆ジャズ好きの客が、羽田の奇妙な煉瓦の建物の写真を見せてくれた。旅客機の飛行角度が、今は物議をかもしそうだが。


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金子晴美

2007年07月15日 | 巡礼者の記帳
都会の日曜の昼下がり、アスファルトの長い道は乾いた時間を持て余している。
旧暦文月、帝都の夏は、すぐそこに。

☆ひさしぶりに、デッカの客はお見えになって申された。
「わたしはスーパー・ウーハーも、左右につけていますヤマハ製ですが。おかしいですね」
タンノイに低音が負けている、と笑いをとって、持参の金子晴美のLPでボサノバを堪能した。
金田アンプを自作されるオーディオの人に、タンノイはどのように聴こえているのか。

☆水沢の「ハーフノートを聴いてきました」と申される男女は、上下に二つ穴の空いたタンノイが家にあると、当方を困惑させた。

☆古川の「蔵でタンノイを鳴らす」客の同伴した新人は七代続く旧家の大音量派だった。想像もできない音量のカウント・ベイシーを鳴らさせておいて「これでは、自分の装置を聴くのは当分ためらわれます」と、句読点も堂に入っている。
よく壊れなかったものだ。

☆仙台で学んでいたとき「カ○ント」にはよく行きました、と轟音を懐かしむようにタバコをくゆらせると、男は静かに読書を始めた。

☆「タンノイを聴かせてください」と、いなせな男は有壁本陣から登場した。

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クリプッシュ・ホーン

2007年07月07日 | 訪問記
「店舗に置いて有るので、触られほうだい、汚れています」とうかがっていたが、或る日黙ってその場所に客を装って行ってみた。
目的はただ一つ、あの『クリプッシュ・ホーン』である。
街道に面した暖簾を潜ると、そこにガウディの異次元のような不思議な空間があって、奥のガラス張りのテラスから青葉に反射した陽光が射し込む、時計の秒針も動くことを忘れるような寛げる広間であった。
右手のコーナーに、オーディオ装置と本格的なスタジオ調整卓が備えられて、店主の並ならぬセンスをうかがわせている。
クリプッシュ・ホーンは、有った。
それは、アメリカ製であることを、しばらく考え込む美しさを発揮して、いかなる音像をも再現してみせるとでも言いたげに鎮座していた。
よその装置と同じ音に興味はありません、と店主は申されたそうだが、以前一度お会いしたとき、当方の3倍のテンポで会話が飛んでくるので、非常に出鼻をくじかれた。
当方の『ロイヤル』とくらべて、いかにも弁舌さわやかに鳴りそうで、そのうえ腰の抜かすような低音でも出されたら、恐ろしい。
きょうのところは、黙って引き下がることにした。
いつかきっと、何年先か、心の虫が知らせるようなタイミングが来るであろう。
撮影した写真を前に考える。
当方は、クリプッシュ・ホーンのまえで、鳥肌をたてて聴き入ることになるだろうか。

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WE INSIST!

2007年07月07日 | 訪問記

スピーカーの拝見が済んだので帰ろうと腰を上げたとき、当方の連れが奥から出てきた水兵服のキャプテンに呼び止められ、何事か話している。
その人物が、クリプッシュ・ホーンの所有者であった。
「どうぞ、こちらに...」
我々は招かれて船のタラップのようなところを昇っていくと、そこに艦橋があった。
窓からは周囲の景色が眼下に広がって、建物の下の岩場にしぶきを上げる奔流は、ちょうど帝国軍艦が浪を蹴立てているように見えなくもない。
そこにもう一人の水兵服を着た屈強な男性が、スイングする『ライ・クーダー』のように、外部との仕事を捌いている。
すごい部屋だ。
何がというのは明かせないが、微妙なセンスとハガネの規律で、粛々とそれは進んでいる。
眼下はるかに大勢の人が、我々の居る艦橋を見上げて右往左往している。
ライブの合間に、鳩談義が当方に飛んできて、眼をぱちくりだ。
当方は子供の時15羽飼っていたから先輩スジにあたるというわけか、彼は水兵のキャップを取ると「宜しくお願いします」と、さっとハガネの規律をみせた。「月月火水木金金」は当方に勤まりそうもない。
そうしているうちにも外部から大量の業務連絡がキャプテンの無線に入って、いちいち読み上げてくれる。いわゆる携帯メールだが。
油断していると、証明写真かなにかシャッターがパシャパシャ切られ、並べられたのは「プリクラ」というものであった。
そのように壁の片面が、大勢のゲストのプリクラで埋まっていた。
おや、『B』もそこにヒゲをたくわえて構えているではないか。
よろしい、当方もちゃっかり、連れに合図して水兵殿とプリクラを撮った。
マックス・ローチの名盤『WE INSIST!』できめてみた。

☆ジェームズ・サーバーの気分で楽しませてもらったが、忙しそうでチャンスは1回だけである。
☆後日、謎のA氏が見えて「どうすれば自分も、そのスピーカーが聴けるのでしょう」と申されたので「奥様同伴などはどうでしょう」と言った。楽しみに待とう。
☆「ところで鳩は何羽いるのですか?」な、なんと200羽!であるそうな。驚くなかれ、飼うということは自分の鳩と他人の鳩と識別がつくということ。




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ハマー

2007年07月07日 | 訪問記
艦橋からの景色を楽しんで、ビビッドなクルーにリフレッシュされ、ふわふわになって艦橋を降りた。
駐車場には、いつのまにか爽やかに着がえたキャプテンがふたたび登場し、当方の連れの、そのまた連れと親しそうに「アイスクリームを食べに行きましょう」などと言っているが、艦隊勤務はどうなっている?
そのとき、駐車場の一角に妙な車を見た。
「先日、ミジンコ博士も乗りました」という助手席に、気が付いたときには当方もあやかって収まっていたが、これと同じ車を記憶で捜せば米軍の『ハマー』が近い。
「たんなる営業運搬車で、なにほどのこともありません」とキャプテンは遠慮がちだ。
道幅いっぱいにしずしず進む車は、あくまでのんびりとアイスクリームの店を目指した。
すれちがう車も沿道の人も「ンガ!」と腰が引けて、葵祭りの山車でも見上げるように、好奇と畏敬の視線で見る。
助手席からフロントガラスごしに見た風景は、ちまたの駆逐艦級の車と比べ、同じ景色ではなかった。『ⅢLZ』から『オートグラフ』に替えてビバルデイを聴いたようなとでもいうのか...。
Ⅰ本のコーンの右と左にダブルで盛りつけられたアイスクリームは、手の上で食べるより早く溶けだして、当方は、なすすべなくそれを眺めた。
キャプテンは快活に振る舞いながら、我々を最後まで楽しませてくださった。


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The Broadway Bit

2007年07月01日 | 巡礼者の記帳
『矢追純一』を久しぶりに見た。
テレビ画面に大橋巨泉と登場したとき、彼は若かったが、いまは貫禄をもって「これは間違いなくUFOですね」と、権威であられる。
或る番組で「矢追さんご自身は、UFOを見たことが有るのですか?」と、女性に素朴に問われて、グッと詰まったところがとても良かった。
当方がUFOを見たのは、彼の特番をテレビで見てからだが「夢の中」のことである。
なぜか8才くらいの自分が、裏木戸を通って道端に出ると、二軒となりの池の側にそびえる大木の上空におきている奇妙な異変に気がついた。
夕刻の暗くなり始めた空に、星よりも大きく黒い光る物体があり、やがて何百という輝くUFOが空を覆って、赤い空を等間隔にゆっくり飛行してゆくのが恐ろしかった。
この世の終わりの始まりかと思った。
もし身近に『未確認飛行物体』を見れば、人生観は変わってしまうといわれているが、良いタンノイの音を聴いたときも、それはある。
徒然なるままに未確認音響物体にしびれる或る日、水戸のT氏がおみえになって、川向うで『The Broadway Bit』のオリジナル盤を聴いたそうであるが、それは十万両はくだらないといわれている。
「一曲目の『Its All Right with Me』があまりに良かったので、一万両を奮発して手に入れました」と、高価な円盤を撃墜されたお話のてんまつをうかがった。

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