ロイス ジャズ タンノイ

タンノイによるホイジンガ的ジャズの考察でございます。

音の茶室

2008年02月26日 | 徒然の記
建築集団を束ねる高清水町のT氏は、アンプ制作でも多くの管球を蒐集し、大胆に緻密に趣味の時間を構築されている。
「アンプの音色は真空管だけが決めているのではありません」と申されて、トランスやコンデンサーでけっこうな違いが出てくることを微妙な比喩でこれまでも当方に伝えようとされてきた。
そういえばT氏の知人とおぼしき人がお見えになったとき『2A3』アンプの音楽を非常に気に入っている話ぶりであったので、それはT氏が制作されたアンプにほかならず「そんなに良い?」と、さまざまのジャズレコードに、あれこれ思い巡らした。
300Bや845のデバイスに結論を急ぐことは、脂の乗った旨味を食べる前から棄てていると、玄人好みの逸品アンプの楽しみを申されたいようである。
もちまえの積極的な奉仕の気分の旺盛なT氏は、ピアノ演奏室の改築や、オーディオルームの改造に、関東方面まで広げあしげくかよわれている。
「それはちなみに六畳間の工事でいくらでしょう」とたずねると、音響研究の有名な諸先生のデータから紐解かれるので、こちらはじっと腕を組み小一時間待った。
そしてその日、参考額は答えが返ってこなかった。ロイスのコンクリート壁面をT氏はさわりながら、このうえの防音を後回しになさったのかもしれない。
誰に気兼ねなくガンガン鳴らせる六畳間は、利休の時代から夢の茶室であった。



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写真師F氏

2008年02月16日 | 巡礼者の記帳
精悍なF氏は、たすき掛け、もも立ちといったいでたちで登場した剣客である。
ひそかに、これは何者!と、思った。
ところが1曲聴いて「参りました。音楽が鳴っている。頭を洗って出直してきます」と、あっさり刀を収めたF氏は、かって『グッドマン』を鳴らしたことや、有名なジャズメンとの交流をポロリと話されるのだが、どうもその全容がわからない。
いつも旅のなかに走っているようなF氏は、ひとつには写真師で、あらゆる対象が彼のレンズに吸い取られ2次元に収斂されているようだ。
『ガウディ』をバルセロナでこころゆくまで撮り尽くそうとし、未完の建築サグラダ・ファミリアの写真集を出版した事があると申されて、当方を煙に巻いた。
このF氏の構築されるオーディオ装置はどのような音を鳴らすのか、ぜひいつか聴いてみたいものであるが、一陣の風のようにさっと消え、そのゆくえは洋として知れない。


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スターリングの客

2008年02月15日 | 巡礼者の記帳
或る時、音もなく停車した大型車から姿を見せたのは、悠揚迫らざる客人である。
持参の45回転盤の貴重なレコードを聴かせていただくと、ロイヤルも目を覚まして普段使わない筋肉をおおいに動かした。
もう一方のお客のどこかで見たような記憶をたどり、海を渡って活躍している松坂某投手に思い当たったが、その御仁は英国の俊英『タンノイ・スターリング』の音楽を楽しんでおられるそうである。
スターリングは、あるときマッキントッシュ275で鳴らした音を聴かされて、ドキッとした。
人は耳から溺れると古人は言ったが、そのサイズから中低域の厚みがこうも繰り出されては、絶体絶命の気分だった。


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アレックス・リール

2008年02月10日 | 巡礼者の記帳
立春のあとの日曜に登場されたのは、JBL4343を鳴らしている海港の街の人である。
いま港は白く長い埠頭に、塗装も新しいおおきな漁船が並んで、冬の海面は青く透明にうねっている。
むかし関西から遊びに来た人が東北の海辺の景色が見たいとレンタカーで出掛けていくのを見送ったが、とある寿司店に入ったところ、板前さんが注文を聞いてから近所に魚を取りに行ったので驚きましたと話していた。さすがに鮮度のよい海辺の寿司やさんで、否応なしにビールと寿司が眼の前をちらつく。
オーディオ装置も、海の街で鳴らすときは特別の音色があるのだろうか。
そのお客の申されるには「あれからタンノイも気に入って、いまではJBLと新しく入れたタンノイも配線して同時に鳴らしています。2つのセットを鳴らすと、それがけっこう良い感じです」と、隣りの柔らかな微笑の令夫人とうなずいておられた。
当方は、その意味する効果がすぐにはわからなかったが、川の向こうとこちらを同時に鳴らして、真ん中で聴くような景色なのか。一度、聴かせてもらいたいものである。
澤野工房からリリースされたアレックス・リール(ds)トリオのライブCDの記憶をこのとき思い出したが、すごい音であった。


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VIOLETS FOR YOUR FURS

2008年02月09日 | 巡礼者の記帳
そういえば東京に雪の降った1月、傘を持った二人が一関に登場した。
コンクリむき出しのクールなROYCEで、その室温もあがらず、
「コートはそのまま着ていてください」というと、快活な男性は、当方の傍のストーブのそばに女性をエスコートし、しばらく聞くとも無しに彼等の話をきいていたが、どうやらこの二人は都心のタンノイをBGMに流すあのクラブからおみえになったようである。
オーナーはオートグラフを聴いているタンノイのフアンであることは承知しているが、幾つかある店のうちの、そこにおかれている装置は『B&W』であって、タンノイとは対極の音で鳴っているそうである。
すると一関に遠征してきたのは、このグループで4店舗目になるのか、おもしろい。
そのときふとかたわらの女性を見ると、おや!意識して当方から視線を外しているその清楚な美人のコートのエリには、スミレのブローチが飾ってあるではないか。反則ワザの符丁だ。
気分的にスケジュールが詰まったジャズ喫茶に、この手の暗号はおひかえなさいと言いたい。よろしい、有名なコルトレーンのスロー・バラードをタンノイでゆっくり聴いてみよう。
『コートにすみれを』
 君のコートのえりに一輪のすみれを差したら 
 そこだけ春になった
 12月だというのにまるでそこだけ4月のような
コルトレーン30才の初リーダー盤に登場して有名なこの曲は、もともとシナトラの唄った曲が、腕利きサイドメンのガーランドやチェンバース、アル・ヒースに支えられたコルトレーンの手にかかればどうなるのか、といった興味で迎えられた。
タンノイで聴くなら、インパルス時代のエルビン、マッコイ、ギャリソンといった、苦み走ったサイドメンの演奏がサウンド的に玄人受けがして、圧倒的に収まりがよいと聴こえるけれど、誠実に驀進したコルトレーンの、バラードにみせるサウンドというものをさまざま聴くのは楽しいものだ。
川向うに前回訪れた組の話によれば、男性が「よーし、腰を据えて」と思って、やってきた『B』のマスターにストレートとチェイサーをオーダーしたところ「自分のぶんを注文する前に、まずそちらの女性のオーダーをきめなさい」とたしなめられたそうで、これが、そう言われたのは花の御江戸に4店舗もクラブをかまえるその道のオーナーである。店に帰って面々に報告され、しばらく盛り上がったらしい。
コルトレーンもよろしいが、当方はこころみに『We are』から1曲だけ、小田和正の古典をドーンとボリュームいっぱいに鳴らしたところ、アッと言ってスミレの人は目が宙に浮いた感に堪えぬリアクションをみせ、タンノイは多彩なところをみせた。
コルトレーンは、しだいにそういう次元からはなれた高みで一気呵成に燃焼し、追従して聴くひとも容易に少なくなったかのようだが、はたしてそんなにカオスの只中に突き進んでいったのだろうか。
或る日、コルトレーンのうわさを聞いたマイルスがステージのうしろでしばらく聴いて「ヤツは何をやってるんだ」と仲間にボソッと尋ねたそうだが、交差した道はどこに行ったのか。


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ジェンセンの客

2008年02月04日 | 巡礼者の記帳
そういえば、小正月に山形から登場した彼等は、6年まえに初めて来たときまだ少年少女の面影を残していた。
本当にジャズを聴くのかな?
今回はじめて、自宅にあるジェンセンというスピーカーの話をきいて、それはいまはめずらしい。
「父から譲られたもので、管球アンプも一緒です」
タンノイと同じ、コアキシャルユニットで、秋葉原でもめったに聴けないジェンセンの音を聴いた人は、しあわせである。
ジェンセンの粋な宇宙を、ガーランドなどで、ぜひ聴いてみたいものだが。
そのとき、S先生からひさしぶりに電話があった。静岡に遠征して新しい装置を楽しんだお話である。
「ウーハー・ユニット10個がリスナーを向いていますから、想像してください。壁全面に軽石状の石版を貼って音響を調整したオーディオ・ルームでした」
ということは、38センチウーハーが片チャンネル五発ということなのか。
ダブリュオー・セブンの映画で、世界制覇を画策する親玉が、島の要塞の天上の高いリビングルームに備えたスピーカーを思い出した。
オーディオ界は、その10発で制覇されたのかS先生にお尋ねしたところ、急に声が低くなって、いまひとつ聴き取れなかったのは、回線の混信か残念だ。
電話のおわりに、ポツリと申されたことだが「ステレオ・サウンドに紹介された、あのオーディオ装置をぜひ聴かせてください」と数日前のこと、突然好事家が訪ねて見えたと。
すこし躊躇したところで、地下の音楽室に招じ入れ、壁の電源配線からすべてやり直して好調のあの装置を、ズババン!と駆動されたそうである。
やがて玄関に送り出したその客が靴を履いた後で直立不動の姿勢になったので、あれ、何かなと思ったら「弟子にしてください」と申されたと。
このとき、回復した電話は混信もなく明瞭に聴き取れたので、S先生が「東京においでのさいはご連絡を」と、かねて申された意味が、タンノイ・マニアの当方の耳に、風穴でも開けようとされているのか。そこまでの音なら、スタックス製の耳栓などひそかに所持して、用心に越したことはないか、おのおのがた。
GAS/AmpzillaやSUMO/The Powerを世に送り出したジェームズ・ボンジョルノの熱烈な第一人者であるS先生が、ボンジョルノからの手紙を仕舞っていると聞いていたので、いつか拝見できるかもしれない。



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正月二日の客

2008年02月01日 | 巡礼者の記帳
そういえば正月二日に、粉雪を散らして登場されたのは、モーエジ氏である。
タンノイの唯我独尊ブリテン・サウンドは、ゆったりと鳴っている。
襖絵は狩野派、書は道風。正学は林派、音はタンノイ。知る人ぞ知る天上の音ではあるけれど。
さて、天才開発者であるモーツァルト・エジソン氏をそれとなく横目で観察していると、なにか「ふふふん...」と、自分はもっと天上の音を知っているもんネ、と少し、言いたがっているように感じられたのだが....。
この人物がひごろから人知れず猛烈に開発中のシステムで目指している音は、スタックスのコンデンサー・ヘッドフォンの音を圧倒的に眼前に彷彿とさせる装置であると公言されていたが、ついにいよいよ完成したとでもいうのか。
そこで彼が席を外したとき、ジャズ・マニアとうわさの連れの人に尋ねた。
いったいその音は、本当のところ、いまどんな音です?
「いやー、彼のいっている事は本当で、まず、すばらしいの一語です」
そういう御仁も、学生時代から川向うに入り浸っていたという、スーパー・ウーハーを取りつけた自宅に有る音は、もう川向うを越えた低音が聴こえている!?らしいのだが、その人物の折り紙をつけたさらに素晴らしいモーエジ氏の音、とでもいうのか。迫真のコルトレーンのサクスが眼前に浮かぶ。
うーーん。正月早々、いいかげんにしなさい。
せっかくのブルーマウンテン珈琲が、すこし苦くなって、これは、早く聴きに来いと申されているのかな。
最近、武芸の方はどうですか?.....と変化球を投げてみた。
「秋田に、とても良い人がいます」
さっと車に戻って写真を持ってきてくださった。
その構図から察するところは、長期にわたりながらどうも遠回し?のセッションで、なかなか切り出せないところが、剛の開発者の真の姿かもしれない。



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