ロイス ジャズ タンノイ

タンノイによるホイジンガ的ジャズの考察でございます。

旅の空

2013年06月27日 | 旅の話
タンノイの音は、枕をそばだてて聴き、香爐峰の雪は簾をかかげてこれを見る
平安時代は、遠方に住むひと、古都平泉を和歌に詠んでも、じっさいに束稲山のサクラを観ることは難しかった。
あるとき、小雨にけむる北上川対岸を走って、いまでは平らな農地になっている束稲山下を抜け、柳之御所遺蹟を初めて見に行った。
横断歩道の傍に無断駐車したこの柳之御所は、大きな堀に囲まれ、長屋王の建物にも似た豪華な書院や池や築山などの跡があった様子が想像されて、歴史に浸る気分の一刻は申し分ない。
御所の傍らを流れる北上川と、対岸の束稲山の間にも武家屋敷や町屋が並んでいた記録があるが、当時人口15万ともいわれる人々の経済生活はどのようなものか。
かりに、板葺き家が千戸も再現されて、どれでも一泊素泊まり千円。
そこにおじゃまして夜鳴きそばでも食べながら、芭蕉は二泊したらしいから温泉でも入って一句詠む。

おもしろや ことしの春も 旅の空





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那須邸の音楽

2013年06月23日 | タンノイのお話
悠久のジャガー氏はROYCEのタンノイに耳をかたむけておられる。
音楽堂を森林の一角に建築された趣味人の、その後の推移を知りたいものである。
『コーネッタ』のユニットをふたたびⅢLZのエンクロージャーに戻され「とても良い音に鳴っています」と写真を見せてくださった。
ジェフローランドや、マッキントッシュ、2A3アンプの音など古今の名器を試されて、たんたんと快活に所見は述べられていくのが、音楽を聴くように耳を奪う。
御仁が一瞬席を外されたとき、いささかの意図もあるわけもなく当方はご婦人にお尋ねした。
――最近の音のご様子、そうとうな仕上がりと感銘いたしました。
「わたくしには、こわしているのか造っているのか、さだかではありません」
なにぶんご婦人は、声楽の研鑚を深く積まれたかたである。
謙譲こそ平安の要諦なのか、あくまで涼しげなご婦人であった。
お帰りになったあと、残された写真を拝見していると、『三無の茶室』の植栽が季節を彩って、音楽堂のなかで小さく見えるアルテックスピーカーと枠に据えられたⅢLZが並び、趣味を持つものには空想が絶好の眺めである。
室内の壁面を飾る絵画もまた、すばらしい。
省みて、ふとトーレンス226のSPU-Aの針圧を計りなおすと3.2グラムであるが、季節が緩んだ今朝がた、少しネジをひねったあれが原因か。
4.5グラムにすると、コントラベースの定位も音はいつもの風景になった。
タンノイの音は毎日変わるが、二人の演奏家ほどには違わない。
しかし、日本の各地のタンノイは、それぞれ確たる別の世界を持って鳴っている。





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Sonny Rollins on Impulse!

2013年06月18日 | 巡礼者の記帳
梅雨のすこしまえ、南シナ海を「いかだ」に乗って帆を膨らませている探検家の様子がテレビに映っている。
アレッと注視したその面影であるが、だいぶむかし、アパートの白黒テレビで見たニューギニアの奥地を探検中の青年と似ている。
半世紀もまえになるが、当時青年の彼は、
「自分の体内に、日本に無い未開地のいろいろな寄生虫が住んでいる」
と言って宿主の貫禄をみせつつジャングルをかきわけていたが、そのころ同じ奥地で消息を絶ったアメリカ大富豪の有名なロックフェラー事件があり、最後に見たという土人と会って話ができたことをボソッと言った。
日本各地の民話の採集で有名な宮本御仁の風貌とも、どこか似ている彼は、いま、いかだのうえで風向きを見ながら、寄生虫はどうなったかご健勝の様子であった。
さて、当方の車は夜の今泉街道をひさしぶりに峠越えし、民話の世界を彷彿とさせていた住居もいまでは別荘地のようであったが、左右に流れる夜の闇は黒いレコード盤の溝をカートリッジになって走るように、寝静まった街道にエンジンが響く。
やはり、起承転結を随所にみせる今泉街道はすばらしい。
気温16度の森には動物が潜んでいるのであろうか、2匹の小さな狸が縁石を走ったところが、大きな表示版にカッパ伝承の昔話が書かれてあった。
翌日royceに現れた札幌ナンバーの客人は、福島から宮城に建築のお仕事で移動中、ラックスアンプでナショナルのフルレンジを鳴らしておられるそうで、二年になったのでそろそろ北海道に戻ります、ともうされている。
ロリンズのTHREE LITTLE WORDSを喜んで「ちょっと車に取りに」とジャズを聴く人は行動が早い。






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野鳥

2013年06月06日 | 諸子百家
昔、お世話になっていた寮で彼はブランデーを手に、ガモフやアシモフやマルコムXを社会に出てまもない当方に話してくれたが、ひとはみな、こころに宇宙を持っている。
ガモフ氏とは天文物理学者で、我々が暮している宇宙に年齢が有り原子背景放射の色温度を測れば過去と未来の寿命がわかると言ったような気がするが、またアシモフ氏とは科学者兼小説家でロボット工学の先駆者。マルコムX氏は黒人公民権運動家で「ニーチェ、カント、ショーペンハウアー全て読んだがどうも彼らは、さして重要でない議論に無駄をしている」と言った。
では、一足飛びにフェーズが移動し、当方の母屋の庭や二階から観察する野鳥世界は、黒沢橋と新国道橋の一角に納まって季節のうつろいを見せている。
ここで観察した移動物体を、13枚の組写真にしてみたのである。
子供の時、太陽を我慢して一分間肉眼で見ると、光球が七色に変色していた。
飛行機雲はマイルド煙草の広告がやはり優れている。
白鳥は列になってシベリアから飛んで来るらしいが、最近疫病が言われ息を止めて上空を見る。
モズは肉食で獲物を木の刺に射し貯蔵する、メスのみが抱卵する。
ピーヒョロヒョロと鳴くトビは、高空を円を描いているが人間のアブラゲを攫うこともあるという。
ハヤブサは小鳥を狙う肉食で、空の一点に止まっている。急降下の時速は380キロを出す。
ヤマドリは柿本人麻呂の歌に「あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む」とある。
オナガはカラスの仲間で集団行動し、鳴き声も多彩。
ヘリコプタは滑走路がいらない。ドイツ人が飛行体を実現し、アメリカに亡命したロシア人シコルスキー博士が実用化した。
ツバメはカラスを避けて民家に巣を造る?
ヒヨドリは人に馴れツバキの蜜や青虫などを食べる。まれに集団になると農作物を荒らす。
カラスは、手強い。
ヒバリは、大伴家持が万葉集に『うらうらに照れる春日に雲雀上がり心悲しも独りし思へば』と詠んだ。
オニヤンマは、あのスズメバチを捕まえて食事する。
ウグイスはオスが啼いて縄張りを守り、メスがヒナを育てる。
カモは集団で水辺に生活しているわけがある。
セキレイは尾羽根を上下にゆらし、クモや昆虫を食する。
ホトトギスは目の周りに黄色の輪をもち、トッキョキヨカキョクと啼く。平安時代、夜に厠に行くと闇に鳴き声がして怪しまれた。
スズメは、子供の時、庭に米を撒いて籠をかぶせ捕まえたが、捕まえたあとが面倒だ。
ツグミは口をつぐんでいるが、野生姿に見栄えが有る。
シジュウカラは黒い帽子を被って庭に立ち入ってくる。
カケスは雑食で周囲の擬音を真似て啼くこともある器用な鳥。
雁は月の夜に鉤形の隊列で飛び、伊豆沼でも見るが禁猟。
キジは付近の河川敷に住み、繁殖期にかん高い鳴き声がよく聴こえる。
ヤマバトはデデッポッポと啼いて、羽根がきれい。
アオバズクは夜行性の敏捷な猛禽。遠くの森でホーホーと鳴き声がする。
これらの観察に双眼鏡はニコンの12X36を使い、手持ちで視界がグラグラする限界。
ほかに野生の熊も早朝に山から磐井川を降りてきた噂があったが、それを見たときは危ない。
タンノイは良い音であるが、このようなものが周囲に生息している。
蝶鳥の 浮つき立つや 花の雲




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映画館

2013年06月01日 | 亀甲占い
当方が大町に住んでいた頃、150メートル離れたところに裕次郎や小林旭の出ずっぱり映画館があった。
かりに京都の地図でその住家を四条烏丸にあてると、映画館は四条大宮である。
良く見た映画館は、京都駅から少しさがった東寺のあたりで、シェーンのラストでズドーンという拳銃が凄く良い音の、星座名の館である。
磐井川を桂川に見立てると、西院の付近に三軒、そうそうたる映画館が有り、西京極にも時代劇専門の映画館があった。
このように、以前は六軒の映画館があったが、テレビが普及し、誰も自宅で小さな画面で映画を見るようになったので、少なからず本物は閉館されてしまった。
オーディオも、いまでは耳にイヤホンを差し込んで、一般的に聴いているのは知っている。
油断のならないのはこのような時代の流れである。
以前お客が、一関にもうひとつ西五条大路あたりにも映画館があった、と話してくださった。
「製糸工場で働いていた女工さんが大挙して押し寄せる映画館で、蚕の匂いでいっぱいだったね」
レコードを聴くのに、そういえばプレーヤーと針が必要だが、先日会報を配布する御仁のお話はこうである。
「チゴイネルワイゼンを聴こうと昔のプレーヤを押入れから出しソニーの針を取り寄せたら、一万両でした」
そうこうしているとジーンズでショーを仕切っているBS番組の良く似たご婦人が「ここは何のお店か」と申されている。
針を使ってレコードを聴く店ですがな。

目にかかる 時やことさら 五月富士





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