ロイス ジャズ タンノイ

タンノイによるホイジンガ的ジャズの考察でございます。

行く秋に

2008年11月23日 | 巡礼者の記帳
行く秋や 手をひろげたる 栗の毬

おしゃれなA氏が、赤い車から黒のアルマーニ姿を現したのは、半年振りのこと。
前回は、庭の苔を、車が傾ぐくらい積み込んで棄てに行ったそうであるが、今回の身辺雑記は歯科医に通っておられることと、管球アンプの良い音の出そうな特価の現物を眼の前にし、しばし立ち尽くしてつい購入してしまったところが、「ええ音です」と。
余談であるが、当方は庭にコケを生やすことに三年執心したから、もったいないと思えたが時と場合によって、苔のないスッキリした庭もよいのかもしれない。
タンノイのもう一つセットしたロイヤルでない方のスピーカー装置の、かなでるカーメン・マクレエなどをしばらく聴いておられたが、「こちらの方がいい」と申される。
そのタンノイモニター・ユニットの、15インチは変わらない箱の構造がシンプルなぶん、ストレートな音が出る。アンプもパワートランジスタで、より音離れが単純である。
真空管とトランジスタの音の違いは有ると言われて、いったい音楽表現のどこに現れるの?というと、測定器には見えないところに秘密がきこえ、良否は目的と好みである。
どちらが良いか、というとき、デバイスだけで決まらず、回路や品質で評価はほんとうに逆転する。
ご持参の、エヴァンスを聴くいとまなく、用事を思い出されて立ち上がったが、帰りしな、それまで鳴っていたLPのジャケットを素早く確かめたところが、たしなみというものだろうか。

☆電話回線の勧誘電話にまじって、「いま東京に来ているが、どこのジャズ喫茶に寄ったら良いか?」と相手が尋ねている。「ハッチャーネイム!」と換わってくれる人求む、か。



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三匹の侍

2008年11月22日 | 巡礼者の記帳
ふ~ん、と見回しつつ突然現れた3人は、テレビ画面で探すと『3匹の侍』という感じであるが、駅前のかっての喫茶、ニュー・コー○ーを知っている。
「以前行った吉祥寺だっけ、喋っちゃイケナイ喫茶店という掟、まずもってきいておいて、しゃべろうかの」などと言っている。
タンノイは、マイペースで絶好調である。
「やっぱオレは、歌詞で聴くタイプだから、ハートマンとトレーンのあれを聴きたいね、よかったらお願いします」ほ、あったかな。
「ほら、いつだっけカウンターでヤッテると電話。ケイコちゃんが受話器取って、『あ~英語しゃべってるけど...』って困っているから、かしてみろ、といったんだよ」
ふーん、なんだそいつは。
「おい!ハッチャーネイム?」
『カウント・ベイシー』
「..........おっと」
「ところで、ソルテイドックかなんか一杯、頼めるの?」
この侍たちは、川向うの住人?



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横浜の客

2008年11月16日 | 巡礼者の記帳
ケニー・バレルのギターは、チェンバースのベースとT・フラナガンのピアノをバックに、ウエスとは違ったブルースをかなでている。
それまで黙ってタンノイに耳を傾けていた客は言った。
「まもなく54才になる自分を振り返ると、いずれこれからには、自宅でジャズを聴く時間もいいな、と思います」
テレビ画面で探せば、脳みその茂木先生に似ている客の横顔は、そう言って永い旅の途中に出会った歌枕を一瞬フラッシュさせた。
やがてタンノイは、BASIE楽団を唄伴にした1981年のサラを、予想外の韻を響かせて聴く心に迫る。
「このLPは、むかし某茶房で聴いてすぐネット・オークションで探した憶えがありますが、値打ちが隠れている盤は、落札も意外なものでした」
横浜に住居があり、浜松と埼玉の工場に居て、出張は仙台である、と申されて夕刻のひと時を一関で寛ぐと、鎧を着て再び歴史の流れに戻っていった。



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MAGNIFICENT

2008年11月15日 | 巡礼者の記帳
おだやかな日、庭のサザンカが花をつけた。
連れの男性が席を外したとき、珈琲カップを置いた若い女は言った。
「彼はどのジャズも大丈夫ですが、わたしはラテン系のジャズが好きです」
眼もとのクッキリしたラテン風の人である。
あなたの歳なら、レコード盤も見たことがないのでは?
「両親は仕事を持っていて、子供の時、風邪でフトンにひとり寝ていると、母がレコードをかけておいて店に出たのです。音楽を聴いていて、安らかな気分になりました」
小さな子が、微熱のまま音楽を聴いているのか。
「六年修行をすませて、いま故郷に戻り、母の仕事を手伝っています」
彼女には、都会生活が、まだ昨日のようにあるのだろう。何か言いたげに?黙った。
都会に残されたのは、サド・ジョーンズかな。



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電話の客

2008年11月09日 | 徒然の記
多くの人の探している、良い音という空気の振動に纏わる話で、最近かかってきた電話の向こうのお客は申された。
「わたしの音の先生は、『マッキントッシュ275』はすでに自分が持っている。あなたは『240』とか、ほかのものがおもしろい、と言うのですが?」
はい、なるほど。240をこれから入れるなら、せっかくですから275のほうが、あとあと良いのでは。
「ヴィンテージ品を購入して、すぐ修理でも困るので、『新レプリカの275』にした場合、あとで後悔するほど音は違いますか?そして、あまりボリュームを上げて聴く方ではないので、275より歪率の有効な帯域で聴く240程度の出力の方が向いているのでしょうか。」
両方聴いて、好きな方にすれば良いでしょう。そして、せっかく購入されるならお宅にふさわしい、新型の弩級アンプもよろしいのでは?
「そこで、自分は、何が良い音なのかまだわかっていない。一足飛びに、最高のアンプを入れて価値が解らないでいるより、経験の段階を踏んで、トランジスタ・アンプなども使ってみたいと思うのですが、初めてとはいえ、誰がみても、あまりにもミスマッチのアンプは避けたいと思います」
オーディオ・ルームにて、没頭して聴かれるのでしょうか?
「リビングに置いて、書類仕事をしながらも聴きたいし、妻は、クラシックを聴きます。」
リアルな音が好きなのか、ふくよかな疲れない音がよいのか、個々人いろいろですが...。
「それは、パソコンのデスプレイで、液晶デジタルとブラウン管の差のようなものですね?」
たぶんこのかたは、遠からず、感心するようなコンポーネントを自宅にセットされているであろう。そして、どれどれ聴かせてもらおうと訪問した人は、再び二、三の質問を受けて楽しまされながら、ポンと入れたスイッチで、すでに豊穣な果実はたわわに鳴り響いているのを聴かされ、顔色なからしめられては、油断である。
電話の最中、遠くでタンノイが、『TAYLOR”S WAILERS』を低く伴奏していた。
タンノイは、すばらしいですよと、言い忘れてしまったが。



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盛岡の客

2008年11月02日 | 巡礼者の記帳
『吉田兼好』が徒然なるままにジャズ喫茶をかまえれば、ヴァイタボックス・コーナーホーンを鳴らすような気がする。
この日、盛岡から来ましたと申されて、ソフアの端に背筋を伸ばしている紳士をみると、むかし某地で宮仕えしていたあのころ、たまに四階から降りてきて周囲を圧して手書きの紙をよこす○専務と似ている。
「これ。夕刻までタイプしてください...」などと、わざわざ用事を申しつけるその専務は、タイプを打つのは御自分でも出来る。
年に一度、思い出したようにコンタクトをみせ、それがなぜか英文タイプのご用命。
パソコンの無い時代のことで、「Dear Mr.Presidentうんぬん」という文面を庶務のライターを使ってパチンパチン打って届けた記憶がある。
肘掛けに腕をもたせてタンノイに向かっている客は、ロイヤルを『あらえびすホール』で聴いたので、ジャズを聴きたいと申されている。
「ジャズは、広く薄く聴きます」といい、何曲か聴いておられたが、これはエヴァンスですね、さきほど川向うも聴いてきましたが違和感はありません、などと静かに話し珈琲カップを持った。
あくまで上品に構えている紳士に、これがいま鳴らしているウエスタンの300Bという球です、と箱をあけて取り出してみせた。
すると、思いのほか身軽にイスを2つぶんサッと移動して球を手に触った。
先刻の、その川向うは、話もおもしろいそうですが...話をされましたか?と尋ねてみた。
「それが、まだなんです」紳士は、それまでの威厳をガタッと崩したのが、ユーモラスである。
ジャズ・フェス”81はハバート、ゲッツ、マリガンなどお歴々が初の顔を揃えたジャムセッションで、バーニーズ・チューン、ソング・フォー・ストレイホーンと音ミゾは進んでいった。
ゴルフにやや日焼けしながら、ジャズに各地の歌枕をそうとう踏んでいる興味深い人物である。





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青森市の客

2008年11月01日 | 巡礼者の記帳
枯葉を踏んで、連れだって登場した客とは、以前にもお会いしたことがある。
もう一年も経つのか、北海道のジャズ喫茶をめぐったその後のことなどを聞かせていただいた。
名刺の裏に、JAZZ SALONと銘打った華やかな室内の写真があった。
かって、タンノイを鳴らしてクラシック音楽を好まれていたこの御仁のサロンを拝見すると、聴き倒しましたと申されているような、壁一面の棚に音源ソースがある。
だが、正面に鎮座しているJBLスピーカーに、ウームと思う。
それは、ジャズのフレーバーを漂わせる人の持ち込んだ名盤の影響で、スピーカーもJBLに変え(理解のほかである)新しいフエーズになった。いまではジャズの不思議な世界の住人となられている。
「たいへんスジの良ろしい人でした」
その隣りに座って珈琲を喫する恰幅のよい紳士が、にっこり笑っている。
タンノイの膨大なクラシック音楽は、どの分野に収斂していったものか興味があって尋ねた。
「ハイドンや、椿姫や、チャイコフスキーのピアノでしょうか...」どこか遠くを見るように、すこし間があった。
いまさらであるが、ジャズの友人は、もうしわけのように付け足した。
「この音を聴いたら、タンノイを換えなかったかも、ね....」



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