ロイス ジャズ タンノイ

タンノイによるホイジンガ的ジャズの考察でございます。

滋賀県の客

2011年06月01日 | 巡礼者の記帳
以前にもお見えになった静かな客は、沈思黙考しつつタンノイの刀の切っ先を躱している。
帰るころになって意外なご職業の当面する深遠な困惑を話してくださった。
御仁の暮らす滋賀県は、芭蕉が奥の細道の旅を終えてすぐ移り住んだ『幻住庵』のあるところだが。
Bの磐井橋そばの宿に芭蕉が二泊したとき、一関東山一帯の川辺で生産されていた『みちのく紙』という京の殿上人も愛用の文具を買い求め、それを四つ折にして『奥のほそ道』をしたためたのではないかと、異才菅江真澄は『はしわの若葉』に書いている。
当方は、滋賀の幻住庵で芭蕉が文机に広げている、一関から大切に持ち帰ったみちのく紙の情景を想像した。
以前にも思ったが、奥の細道という冊子のいきさつが教科書にでも載れば、これからの観光客はみやげにあらそって、書をたしなみ作句に堪能な友人に、このみちのく紙を買い求めることになるであろう。
経蔵のそばの堂で一手に専売すると、これからあの御仁も経を読む暇もなくなるか、母屋で心配を言ったら、まったく反応が無い。
おっと、福岡の二進法の取締役からみやげのめんたいこが、残り少なく当方の箸を待っている。
店の外に出てみると、滋賀の客の乗ってきたクルマは『ルノー・トゥインゴ』と言って、魔術師ゴルディーニのチューンナップによる豆戦車のようなパワーが、乗り心地とスピードで周囲を圧倒するのが意外である。
この御仁、そっくりだ。
あっというまに、四号線のかなたに走り去った。






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