ロイス ジャズ タンノイ

タンノイによるホイジンガ的ジャズの考察でございます。

目黒駅界隈

2008年07月21日 | オーディオショップ
花のお江戸に、霊峰富士の見えるなごりの地名がいくつも残ったが、高層建築が静かに増殖して変容する大都会に消える風景がある。
パイ○ニアのビルディングが、なだらかな目黒の丘に突如周囲を圧倒してそびえ立つころ、遠く駿河の富士まで見通せる最上階の眺望は、初めて見るものに息を呑んだ絶景である。
そのビルディングから道路を隔てた斜向かいに、同じころ出現した『ガス・アンプジラ』『スレッショルド』など当代の名器を壁一面に蒐集展示する豪華なショールーム喫茶は、粋人が再生音楽の頂点を蒐めようとしたもう一つの眺望であったのかもしれない。
ホテルのロビーを思わせるガラス張りの壁と、タイル模様の豪華な床のオーディオ店にめずらしい右手に2人の受付嬢が起立して、左手にはレコードの輸入盤を陳列したケースが並んでいる。
衝立状の観葉植物の向こうに、ガラステーブルと皮張りのソフアがゆったりと置かれて、正面のスピ-カー、周囲の棚に陳列された逸品アンプ群が、これから鳴り響く音を約束しているようだ。
その日のお目当ての『ガス・アンプジラ』の音を聴かせてくださいと、紅茶などを注文しながら希望を伝えると、まもなく広い空間が骨太の立体感を聴かせる毅然とした音に飽和し、タンノイとは違うサウンドといえども、栄華を楽しむひとときである。
紅茶は、妙なガラス壷から注いで、まだ少し残っているからゆっくりしよう。
このような空間は、いつまでも存在するだけでありがたかったのに、気が付いたときにはいずこへか消えていたのが残念だ。
ガス・アンプジラであの空間に鳴り響いた『ウイスパー・ノット』が、いまはなつかしい記憶となった。



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ALC・ラボラトリー

2007年01月15日 | オーディオショップ
いよいよ主人という人物が電話口のむこうに現れ、当方の趣を察すると、ウインチェスターに弾を込めるようなひと呼吸をおいて、真空管やコンデンサーにまつわる蘊蓄がしだいに熱を帯び、話は、たしかな技術を誇示している。
タンノイのための『デバイディング・ネットワーク』の広告を見て。
もし、これを繋いでタンノイが豹変し、凄い音で鳴ったら....と、思うものである。
こちらが、どうやら感心していると察するや、こんどは音と音楽にまつわるボギャブラリーが機関銃のように受話器から聞こえてくる。
ティボーのバイオリンは、弦のつややかさと胴鳴りの、コルトーのピアノがうんぬん..
この話芸はどこで終わるのか。
相手は受話器の下側に語りかけ続けながら、じつは、ちゃんと上の穴からこちらを覗いているかのように、マイルスがどうのと切れ目無く立板に水、礼賛の言葉は続く。
「いちど、聴いてご覧なさい」ということで、そのデバイダーは送られて来たが、たぶん音楽はデバイダーが鳴らすのではないだろう。
ゆえにタンノイが好みの音であれば、悪かろうはずがない。
もっと関心があったのは、その試聴室で鳴っている音楽だが、ぜひいつかと思いながら、まだ果たせない。


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オーディオニックス

2007年01月09日 | オーディオショップ
オタクではないが、代理店というところにも興味があった。
江戸川にあったタイガービルのハーマンの次に訪ねてみたのは、オルトフォンの当時の日本代理店である。
代々木の並木道をすこし入ったところに『オーディオ・ニックス』はあった。
鉄骨の階段を昇って二階のドアをトントンとたたくと柔和な年配の男性が顔を見せ、ワンルームに、壁に向かった作業机が5つほど並んでいるのが見えた。
「このGTEを、トランスを外してGEの針を付けてください」
一般客が訪ねて来ることは無いのだろう。どこから来たのかときかれて住所を言うと、ビクターの人ですか?と勘違いされニコリとされた。何十年も前のことだが皆、和気あいあい静かに組み立てのようなことをされていたように憶えている。針はその場ですぐ付けてもらえた。
いつもはアキバまで行って、名物おばあちゃんにお願いして、自宅に送ってもらった。
あるとき急いでほしいというと、若い衆がカートリッジを持ってどこかに消えていったが、そのSPUは、ホールドベースが前後逆に取りつけられて往生した。
取りつけ角が傾いていても、ちゃんと音は出るからしばらく気が付かなかった。
名物おばあちゃんの居ないとき、代わりの人が菓子箱のようなものを開けて「ではこれ」と代わりのSPUを渡してくれた。
家に帰ってセットすると、片チャンネルから音が出なかった。
電話するともう一個送られてきて、トクしたのだろうか?
オーディオ・ニックス時代の製品は、いまでもプレミアムがつくようだが、我々の知らないノウハウが、彼等にはあったのではないか。
オルトフォンの蘊蓄をぜひ聞きたいものである。

☆読売新聞日曜版に連載していたドナルド・キーン氏から、家の者に年賀状が届いた。表も裏も自筆で、本物かどうか論議になっている。
☆牛乳店の社長がお見えになって「わたしの母校です」と、サッカー全国制覇の感激もあらたに盛り上がった。味のある勝ち進みでドラマのようである。


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音の記憶

2006年07月31日 | オーディオショップ
初恋の人に逢いたい。と、オカネを積んで探させる人もあるという。
良い音の記憶も、忘れがたく候。
たとえばホーム商会の4343とマークレビンソン。思わずそこで鳴っていたLPを買い求めに学大駅のレコード店に走ったもの。
家で聴いたら、これが同じレコードかと、うーんジャケットを何度もひっくり返すしまつ。オーディオ装置恐るべし。
突然電話が鳴って「マークレビンソン、手に入りそうなんです!」それはK市のK氏からで、彼も4343にマークレビンソンを合わせたいと申される。
一世風靡した音で間違った選択ではないが、ひとつ気掛かりなのは、最近6回もROYCEに通われて、タンノイを聴きながらJBLの話をしたことで、あった。
良い音は、だれが聴いてもまぎれもなく良い音だが、最高に良い音は、まだ誰も聴いたことがなくて、人の心のなかにあるのが音の深遠。

☆ホーム商会の前を通った趣味の先輩から、まえに頂戴したメールをひもといて「花の帝都」のよすがを偲ぶ。

しばらくご無沙汰し失礼しました。
パソコンは復旧した様でなによりです。
あっという間に今年も6月を迎えはや折り返し、月日の経つのは早いものです。
今年はせめてこれこれはーーーと思っていたオーディオの事、レコードの事等
未だなにも出来ずにいます。
そういえば先に貴兄にお話したホーム商会のまえを先日通りましたらアルテックのA5のキャビネが入り口まえに半梱包状態で置いてありました。
AV店に重量級のスピーカーシステム?まさか店内用ではあるまいし
今でも近所でこのような大型の需要があるのかと不思議な気がしました。
当方もアルテックの大型スピーカーは一部、下の写真のものや、デュプレックスのものを集めてはみましたが、お蔵状態でとてもオートグラフに並べて鳴らすスペースはありません。
ではではこの辺で。


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水沢の『J』

2006年03月29日 | オーディオショップ

タンノイ・ウエストミンスターを試聴できると新聞広告でその店を知って、いつか訪ねてみようと思っていたが、時が過ぎた。ポチが西向けば尾は東で、国道4号線を三十キロ北上すると水沢市の佐倉に着く。しかし佐倉は広かった。金ケ崎のプールの帰り道、夏の日ざしの照りつける中、道ゆく高校生やらオヤジさんに尋ねてやっとたどり着くことができた『J』である。
モダンな店内に8組ほどセットされた現代スピーカーから、さっそくタンノイを鳴らしていただいた。アキュフェースのトランジスタアンプによる音は、ジャズもクラシックも整ったバランスである。オーディオ人口も減少するなか、これほど多岐に品揃えしてある店は少なくなっているが、やはり水沢市の底力というものか。
奥の方に、ガラスドアで仕切られた小さな別室があって、ビデオの大型スクリーンにサウンド・トラックをバックアップする装置があった。この音が、小型スピーカーとは思えない強烈な馬力とスケールで、堂々たるサウンドである。ジャズ・ビデオでも上映した場合、オーディオの王道はいったいどうなってしまうのか、と心配したが、時間をかけて聴いてみるとやはりそう簡単なものではないジャズの音。
ポパイのマンガでハンバーガーをつまむ人にちょっと似た人がこちらをみて笑っているが、その方が店員さんのようである。SPUの針交換をお願いしてみると一週間で戻ってくるとのことで、ついでにオルトフォンのコネクトケーブルをケースから出してもらって購入し、ひとまず凱旋した。
このケーブル、こう言っては身もふたもないが自作ケーブルとあまり違わない音でがっかりする。交換針を取りに行ったとき、上級ケーブルと交換してくれるのか淡い期待で言ってみると、あっさりO・Kと言われた。
いきさつをK氏にお話しすると、このハンバーガーさんのことはご存じで、K氏の宅にも水沢から出張されたことがあるらしい。「とてもよい人です」と話しておられた。
さて、次に『J』に行ったとき、店主の愛蔵盤と書かれたデスクが売り場に多数陳んでいて驚いた。箱に残っていたほとんどがクラシックの名盤であった。
先日Royceにみえたジャズ好きのI氏によれば、その昔『J』の社長から、クラシック入門の手ほどきを受けたことがあると聞いた。気さくで穏やかな方であったそうで、一度お会いしたかったものである。
この『J』の近くに、30品食べ放題の店があると、呉服商のかたが楊枝を咥えながらお腹をさすってROYCEにやってきてジャズを聴いた。御仲間と「当分もうけっこう」と言いながら、食べ残したカニとアワビを残念がっているのを聞くと、まだ食事前のこちらはロリンズのブローがおなかにこたえて、その会話が妙に忘れられず居た。
そこで『J』から足を伸ばし饗宴に参じてみたが、寿司から焼き肉、団子にケーキと進んで、時間制限の競技会をがんばって、秘書が帰りの車で「苦しい」とハンカチで顔を蔽い、「また行こう」と言っても返事がなかったのが残念だ。

☆はじめて「オレオレ、サギ」の相手と二日にわたってやりとりした。
親戚の大学生がライブドアの株で72万損して、親に内緒で...という設定だった。哀しそうな声が忘れられない。
☆さかもとコーヒーの「カフェ・タブロー」を初めて淹れてみた。七つくらい数える味の中に、煎茶の味がまじってどれも上等。

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佐沼のオーディオ・ショップ

2006年03月27日 | オーディオショップ
丁度〈クインシー・ジョーンズバンド〉がブパブパッ!と「STOCKHOLM SWEETNIN」をやっていたそのとき、『オーディオマップ』という書籍を創っている人から電話がかかってきた。広告の話かと思って「今、レコードをかけているから時間がない」と口実を言って、やんわり断った。
電話の向こうで渋い声の男性が「また、かけなおすから何時がよいか」ときいている。熱心な人だ。おまけにどうも声のトーンが「こっちもメシよりジャズが好きですよ」と言っている。そこで「広告なら予定がない」といったのだが、一銭もいらないからお宅のような本格的なジャズ喫茶を全国的に初めて網羅して紹介する初めてのガイドブックである、などと二度もくり返している熱心さ。本格的とは何かの間違いのような気もするが、本当に指定した時間にまたかかってきたのには驚いた。これも何かの縁というのか。
あとで本になって載っているのを『T』のマスターが教えてくださった。
あのときちょうどRoyceにいらしたお客は宮城県佐沼の『H』というオーディオ・ショップの御曹司であるが、そのショップには永い歴史があって周囲には錚々たるマニアが顧客として控えている。いちどSA氏に案内されお邪魔したところ、コンクリートの堅牢な店内に『タンノイGRFメモリー』がとても良い音で鳴っていた。
この装置のためにお店にセットされていたパワーアンプがSA氏の制作になるもので、楽器演奏されるという店の方の調整されたサウンドはキリリとピントの合った音であった。
ROYCEのFMチューナーは、ニューヨークで84選局したとうたい文句の「SONY・ST-5000F」だが、風格のある『エクスクルーシブ・F-3』がやっぱり良いのではなかろうかという話になって、あいにく製造中止「顧客に求められ、やっとのことで探し出すことができました」と思い出を話されていた。
一関から南に37キロ、車で四十分のところにこの貴重な店は在る。

☆仙台から知人が訪ねて来て、砂子浜の母の実家に『小田○正』が遊びに来たと、写真を見せてくださった。ほかの7人くらいは皆正座だが、小田くんはアグラで、そこがとても良い。おしのびなので、その写真は掲載できません。
☆ご近所のK氏から、国府弘子の6拍子のワルツの説明をうけましたが、バンドをやった人は話が核心を突いている。

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JBLオリンパスと4350

2006年03月24日 | オーディオショップ
駅前でブテックを経営の『P・BOX』さんは四国のお生まれだが、一方で原子力に纏わるさまざまな事象に学問的に関わる不思議な人だった。論文を貸してくださったので、その博識が記憶に残っている。
或る日のこと「建て替えのため大町のほうにしばらく店を移転しました」と言われたので立ち寄ってみると、そこは以前『BON』が在った場所である。はてなと思った。それでは『BON』はどこに?
さて、これまでタンノイには英国オースチン社のKT88をプッシュプルで使用されたアンプが良いとの評判で、目黒に住んでいた頃、日本フィルのビオラを奏する人から譲っていただいたその『TVA-1』を永いこと使っていた。
やっとのことで手に入れた当時人気絶頂のそのアンプ、それによって感動した音楽の数々をいまもたまに思い出す。
これからアンプを取りに伺いますとお宅に電話を入れたそのときのこと「お気持ちは解りますが、一人で運ぶのは止めておかれたほうがよいですよ」とビオラを奏する人は忠告された。そこで知人を同道すると、ワイングラスを片手に玄関に現れたビオラの人は「持つべきものは友ですね」とおっしゃって微笑まれたが、ステンレスシャーシの本当に重いアンプである。
「ちなみに今度はどういうアンプをお使いになるのですか」と尋ねると、部屋に通されて「それが、また同じアンプを購入してしまいました」とにっこり笑い、真新しい『TVA-1』を指さされたのには驚いたものだが、この、また同じものを購入したくなるアンプというものもあると、『TVA-1』を使ってそう気がつかされた、凄いアンプだ。
そこで止めておけばよかったのに、あるとき、もっと良い音にしようと輸入代理店に『TVA-1』を送った。コンデンサーと管球8本を全部交換して新品同様、マニアのサガで一段と良い音を期待したところが、戻ってきたそれは自分の耳に恐るべき寂しい音であった。見解の相違ではある。
良くないことは続く、真空管がある事情で壊れた。ハーマン・インターナショナルに電話すると「一関には取引先で『BON』さんがありますから、そちらに真空管を送りましょう、そこで受け取ってください」となった。
「P・BOX」さんのこんど移られたところに、このあいだまでたしかにその老舗『BON』はあったのだ。
年配の社長はゆったりとイスに掛けて「それでどんなスピーカーを使っているのです?」と、微笑んでおられる。
「そのスピーカーなら、一度聴きに行きたいですね。ふーん、ハーマンがウチを指定しましたか」と、ちょっと喜ばれて「12AX7球だと2本で3千円くらいかな」と言った。
そこで内ポケットに手を、と思ったそのとき、
「社長、違います」とレジの女性がゆっくり申されたのが残念だ。
「ほほう、ずいぶん高くなったものだねぇ」と『BON』の社長は気の毒そうな顔になった。
球の値段は音に反映するのだろうか、そこが知りたいといろいろ買い揃えて解ったことは、各社それぞれ特徴があって、どれも個性の違う音がする。したがって、今聴いているアンプの音もそれで終わりではなく、短慮は慎み、いろいろ差し替えてみればアッと驚くことになるであろう。
その夏は凄い颱風が来て、磐井川に水が溢れた。
『BON』の倉庫には、ダンボールのケースに仕舞われた『JBLオリンパス』が在ると、地元マニアのあいだでまことしやかなうわさがあるのは、ほんとうだろうか。
JBLオリンパスの音は、駒沢通りに近い『H商会』にセットされてあったものが良かった。
ここのマニアックな経営者は、2トラック38のオープンデッキを繋いで『オリンパス』をデモンストレーションし、この店でJBLに開眼する客も多かった。
その音を例えると、ちり紙をバチで叩いてもチーンと音がするのかと期待の湧くような、まず『タンノイ』とは対極の恐ろしい装置である。
ところがそのころ『オリンパス』と入れ替わるようにJBL社が発表したのが『4350』で、五反田の東京卸売センターでオーディオフェアが行われたとき聴くことができた。
十二畳でも狭いと思わせるこのスピーカー、音を聴こうとブースは黒山の人だかりで、鳴らしていたフラメンコギターの音が、自分の耳にはどうもガット弦ではなく金属の剛弦に聞こえるのだが聴衆を圧倒して轟く。まさに釘付け状態で、誰も動けなかった。
「会場の音量が基準値を越えましたので各ブースの方はボリュームを下げてください」と場内アナウンスが警告しているが、もともと静かな日本のブースは、さようでございますかとさらに大人しくするのに反して、轟音でアナウンスの聞こえないJBLのブースはびくともせず一人気を吐いていたのがじつに良かった。

☆たぶんうまくいかないであろうと思っていた。ゲートウエイのノートパソコンに光ケーブルを繋ぐことだが、ランカード認識とか、これまでも『牛』には手をやいた。暴れ牛を乗りこなそうと剛者のあつまるメーカー品だ。
出張設定で颯爽と登場したTu氏は、ところがじっくり腰を据えて、見るとハードデスクのデフラグなんかをやりだした。何時間もかかるのにである。少しも騒がず澄ましているが時間の無駄ではなく、これが決め手か?。時間超過は奉仕だそうで、夜十時を廻ってデフラグが終わると、全てがあっというまに完了した。これから盛岡まで帰るそうである。コーヒーを飲んでいただいて「シェリーマン」などを聴いて「言葉でどういうかわからないのですが、そこに演奏者が居るようですね」などと、一線で働く人は皆、人間が出来ている。
☆AK氏からめずらしく電話をいただいた。「スピーカーケーブルの容量計算をして、こんど最適のラインケーブルを選択する」とオソロシイことを申されるので当方はギャップを感じる。このあいだのジャズボーカルCDも、どこから取り寄せたのか?と思われる逸品ぞろいで、うっかり口をきけなかった。

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ジェットストリーム

2006年03月18日 | オーディオショップ
炎天の青空に金魚売りの乾いた声が吸い込まれていった記憶は『JBLのオリンパス』。酢醤油でヒリヒリしたところてんを飲み込んだ縁台の記憶は『アルテックのA7』。
『タンノイⅢLZ』を購入した秋葉原のS無線の二階に上がると、そこは50畳はありそうなブルーのカーペットの敷かれた仄暗い柱のない試聴室に、びっしりと3段に並べられたスピーカーがオーケストラのような圧倒的な光景で並んでいる。このスピーカーが独立したチャンネルで一斉に音を出していればオーケストラと変わらない凄い音が聞こえたことであろう。
右手の棚には一世風靡のアンプがずらりと並んで、備えつけた用紙に①SPU②ラックス38FD③タンノイオートグラフ④クラシックと書いて白シャツの係員に渡す。男はランプの明かりにメモを見て、お客のリクエスト順に淡々とそれをこなしてゆく。
係員は、すでに鳴る音は承知していてオーディオの何かを悟っていたかもしれないが、説明を発するでもなく、しばらく順番を待って、次々と鳴らされてゆく装置と組み合わせの音を聴くのであった。
全国から詰めかけている客の中に、メーカーの社員とおぼしき仲間と連れだってヒソヒソとライバル会社の音についてコメントが交わされるものだから、興味深く聞き耳を立ててしまう。
部屋の一番奥の左と右にだいぶ離れて鎮座していたのが『タンノイ・オートグラフ』という複雑なホーンエンクロージャー構造で他を圧倒していた英国のスピーカーで、はたしてあんなに離れて右と左にあっては音像がつながるものか訝ったが、突然鳴り出した其の音は、タンノイの片鱗をのぞかせてはいたものの、やはりどこかおかしく、この程度であろうはずがないと聴こえる。
しかし、周囲の人が不平や落胆を気配にもみせず粛として聴き入っていたのは、五味康佑という審美の巨魁がすでに決定的な折り紙を付けて疑いの差し挟む余地がなかったことと、変であるとはいえども普通聴くことのできるどのような音像よりも、非常に並外れていたその音であった。
店側も、調整不十分と承知し堂々と鳴らし、まったく問題にしていなかったふしがある。
『オートグラフ』や『ハーツフィールド』は、其処にあるだけでありがたい別格の存在で、購入した人が趣味に合わせて部屋を造り、ドライブアンプを取りそろえ音を調整し、無限の可能性に挑戦する素材である。
『オートグラフ』の片鱗を味わうことができる、小型で廉価の求めやすい『タンノイⅢLZ』は、それでも月給数ヶ月分というバチ当たりの手当てに奔走し、とうとう或る土曜の夕刻住まいに届けられたときのことは忘れ難い。其の夜聴いたFM東海の深夜番組「ジェットストリーム」の甘露の音が、城達也のナレーションにのって昨日のことのようによみがえる。

遠い地平線が消えて、
ふかぶかとした夜の闇に心を休める時、
はるか雲海の上を音もなく流れ去る気流は、
たゆみない宇宙の営みを告げています。
満天の星をいただく、はてしない光の海を
ゆたかに流れゆく風に心を開けば、
きらめく星座の物語も聞こえてくる、
夜の静寂の、なんと饒舌なことでしょう。
光と影の境に消えていった、はるかな地平線も
瞼に浮かんでまいります……
これからのひととき、月曜から金曜までの毎晩、
日本航空があなたにお送りする音楽の定期便
ジェットストリーム…

☆お客の運転してきたアーリーアメリカン調のワインレッドの車に見とれた。

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ふところの深いS電気

2006年03月15日 | オーディオショップ
いまでは単相や3相200Vを引き込んで100Vに落としてパワーアンプを稼働させることは広く知られている。その効果はズバリ有る。うまくいけば初心者でも解る程度にどっしりとしてなめらかな音になる。0.5の視力の人が1.2になったようであり、普通車が大型車になった乗り心地だ。しかし、あまり効果のない場合もあるから、非情な賭けである。
千葉の大先生からそう囁かれて、或る日農業用25キロの降圧トランスを買った。つぎに一関市内の電気店をまわり、なるべく太い電線を20メートル捜したが、「これなら、どう?」S電気の社長が作業場からズルズルと引いてきた太いのを見てこれだと思った。どこかの工場から解体してきたものだそうだ。
「なんに使うの?」
わけを話すと、ゆっくり首をかしげている。そして社長は話題を変えて「オレにはテレフンケンの球がごっそりストックしてある」と急にマニアの顔になった。
スピーカーは『ボザーク』だというから、オーッとマニアぶりに感心した。いったい何を聴くので?と踏み込んだら、社長はふと身を引いてしばらく考えてから「テレビだ!・・・」と言った。テレビを聴かせてほしいとは言いにくい。怪しい人物だ。
これまでの降圧トランスのアイデアを聞いて、迫市のSA氏が、「よいものがあります」
やはり工場で使用していたという50キロ重量の鉄の塊トランスを雨よけの鉄板をはずして取り出した。
それは、まったく別物の音だった。トランスでこうも音は変わるのか。SA氏は、当方に譲ってからシマッタと思われたが、あとのまつりだった。


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LP蒐集を楽しむ

2006年02月21日 | オーディオショップ
ジャズの中古レコードを販売している店がH町にあると聞いて半信半疑の或る時、同じH町にお住まいのK氏が「ついてくればわかります」と言われた。
花曇りの日、国道342に乗って一関から十二キロほど南に向かい稲子川に架かる小さな橋にむかう。このK氏の車というのが、駐車場からお尻がはみ出している高級車だが、運転スピードがなぜか車のずうたいに似合わず猛烈に早かった。一関H町間の道路は坂道もあれば陣屋の脇の細い道もある。踏み切りも渡れば、握りこぶし一つくらいの隙間の場所も通ったが、とにかくK氏はマン島レースのように走っていた。たびたび見失いそうになってこうなったらネコやタヌキくらいなら突っ切るしかないのかとアクセルを踏んだものだから、寿命が縮んでいるとすればあのときか。
あとで思い返せば、このK氏の選んだコースは一味違っている。途中、奈良の山野辺の路のような風光明媚な隠し道路もあって、新発見の風景に気を取られ、こちらはあぶなく路肩から脱輪するところであった。ただ早いだけのK氏ではない。
橋を越えてすぐ先、右手に神社の鳥居があり、左手に、たしかにその店はあった。
そこでK氏と別れ、C店に入ってみると壁のボードに大変なジャケットがびっしり展示されて、思わずありがたさにクラクラする。
ABCの順に仕切られたボックスに麗しのジャズジャケットは並んでおり、アーチストが目当てであるならそのアルファベットを頼りに容易に掘り出し物が手に入る。ただしアートペッパーはAで捜してはならずPの仕切りに有る。オスカーピーターソンもOではなくPである。JJジョンソンはJで問題ない、などと考えていると、BGMに流れるジャズの音が良すぎて思考が妨げられる。一度に二つのことが出来ないタチなのだと笑う。
この店には錚々たるジャズメンのライブ演奏ビデオテープも奥の棚にひっそりとあるので、これを入手し家に持ち帰れば、即、ジャズの歴史に輝く巨人の演奏と映像でご対面がかなう。ジャズ好きにとってはオアシスだ。
プレステッジの『MILES』もここで発掘したが、演奏の出来栄えにプライスが付いているのではない。稀少盤であるかモノラルかステレオか、で値がつくのであろうか?以前から仙台のバークリーレコードさんの場合も思ったことだが、ジャズと縁のない一般人には値段の深さに驚くことであろう。
千葉の大先生から届いたCDのなかに廃盤市場で高額に扱われるオリジナルデスクの紹介されているサンプラーがあって、これはジャズを聴くというより骨董品を扱う感覚である。
このCDはEMI盤のTOCJ-5710で、ジャズ導師寺島氏の企画と書かれてあるが、なるほど幅広くご活躍の人である。
【リバティー】
50年代のウエストコーストジャズを収めた「ジャズインハリウッド」シリーズ。ノクターン原盤が多い。ジミーロウルズ、ライトハウスのハワードラムゼイ、ジュリーロンドンのボーカル、マーティペイチオーケストラにアートペッパーが参加したもの、などなど貴重。
【パシフィックジャズ】
稀少なものといえば20種しか無い10インチ盤。一番高いのはPJLP1のジュリーマリガンカルテット、またアルヘイグトリオPJLP18は誰も見たことが無い幻の名盤。ボブブルックマイヤーやチェットベイカーアンサンブルも高い。
【ジャズウエスト】
全部で10種しか出てないのでみんな貴重。
一番高いのはJWLP8テナーマンだが、リターンオブアートペッパーJWLP10も探している人が多い。日本版が登場したことのないジュリアスウエッチャーカルテットは稀少盤。
【インペリアル】
ブルース系の作品が多い。ソニークリスの3枚、ウオーンマーシュ、ハロルドランド、チャーリーマリアーノは二枚の十インチ盤のみ。EP盤ではハーブゲラー、オスカーペデイフォード。
【ブルーノート】
オリジナルはなんでも高いブルーノートだが、1500番台では1568ハンクモブレー、リーモーガンのキャンディ、ケニードーハムのカフェボヘミアあたりが少ないらしい。
【トランジション】
一応1から30番まであるが発売されたものは20種もない。ワトキンスアットラージ、バーズアイビュー、バードブローズオンビーコンヒル、ジャズアドバンス、ジャズイントランジションあたりが高価。
【ダイアル】
SP盤が主体のため相場があってないようなもの。探している人も少ない。チャリーパーカーは高い。
Royceに来られた客が、遠目にベイシーインロンドンのジャケットを見て5万円!と言っていたが、たはは、それはじつのところポリドール再発盤なのでせいぜい3千円である。
気仙沼のMS氏が一枚15万円したというデビュー十インチ盤などをときどき持ってこられるが、耳の穴のうぶ毛も逆立つような、間違いなくすごい音のものもある。ターンテーブルのマットをこのときばかりは掃除して、かけさせていただく。なんでも、ラジオで聴いた曲に矢も盾もたまらず、手を尽くして探し求められた結果、斯様な値段になってしまったそうであるが、そこまで熱くなれてこそ、幸いなるかな人生というものか。
昔、練馬ナンバーの赤いボルボで来られた御医者も10インチ盤を二枚携えてみえられ、拝聴したことがあったが、「ついでに本場の英国サウンドでこのビートルズを聴かせてほしい」と紙袋からLPを取り出したのにはまいった。
このマニアのこだわる高額なオリジナルレコード群について、千葉の大先生にうかがったところ「ブルーノートオリジナルの有名な蒐集家を廻って、めちゃくちゃ触らせてもらったが、オリジナルといえども盤質の良いレコードは意外に少なかったですね」とのご返事であった。であるからこそ盤の状態のよいものはますます貴重品となって、骨董蒐集のような感覚で取引きされるのであろう。
秋田のジャズ研究家でドッドッとBMのオートバイを飛ばしてくるお客があった。このC店の存在を話すと、ふたたび秋田から車を替えて陣容を整えてそこを訪ね、そのさい、店主のオーディオ装置を別室にて聴かせてもらったそうである。このお客には2万枚くらいのコレクションがあると申されていたが、いまだ蒐集の途上なのか、あの仙台のバークリーレコードさんにも秋田まで出張してもらったことがあると話しておられた。
秋田のT氏やJO氏、唐桑町のS氏、江刺のT氏、古川のU氏、気仙沼のSS氏、厳美のKO氏などにもお話ししたところ、走りながら考えるタイプの人々は早速C店に駆けつけられていた。
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