ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

歌劇「フィガロの結婚」 ザルツブルク音楽祭2006

2007-03-02 | BS、CS、DVDの視聴記
BSハイビジョンで先週末放映していた「夢の音楽堂 ~ クラシック音楽・不滅のメロディー ~ 」という番組を観ました。
観たといっても、レコーダーに録画しておいたものを観た訳ですが、この9時間弱の番組の最後の演目が、昨年のザルツブルク音楽祭の目玉と言われていたアーノンクールのフィガロ。
いや、違いました。「ネトレプコのスザンナが聴けるフィガロ」というほうが正確?

冗談はさておき、プレミアがついて何と1枚20万円とも40万とも言われたあの公演です。
昨秋、教育テレビでさわりだけ放映されていましたから、全曲を早く観たいと思っておられた方も多いことでしょう。
実は、昨年12月に販売されたDGのモーツァルトオペラの全集にも含まれていたようですが、何せDVD33枚組という代物。おいそれとは手が出せません。
そんな折、オペラファンには最高の贈り物だったのではないでしょうか。

『ザルツブルク音楽祭2006』
モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」
<出演>
■アルマヴィーヴァ伯爵:ボー・スコウフス
■伯爵夫人:ドロテア・レシュマン
■フィガロ:イルデブランド・ダルカンジェロ
■スザンナ:アンナ・ネトレプコ
■ケルビーノ:クリスティーネ・シェーファー
■マルチェリーナ:マリー・マクロクリン
■バルトロ:フランツ・ヨーゼフ・ゼーリヒ
■バルバリーナ:エヴァ・リーバウ ほか

<合唱 >:ウィーン国立歌劇場合唱団
<管弦楽>:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
<指 揮>:ニコラウス・アーノンクール
<演 出>クラウス・グート
<収録>2006年7月 ザルツブルク音楽祭より モーツァルト劇場

   



前置きが長くなりましたが、さすがに刺激的な上演でした。
私は気がついたら3回位観ていました。
もちろん、食事時間等に1~2幕ずつこま切れで観たものを含んでのことですが、3回も観たということは、それだけ魅力的だったということでしょう。

アーノンクールの序曲は、とにかく遅い!
しかし決して重々しくはなく、不思議な軽さと言うのでしょうか、独特の雰囲気があります。加えて、序曲に限りませんが、ウィーンフィルが本当に柔らかくいい味を出していますね。
歌手も粒ぞろいで、アリアもデュエットもアンサンブルも、まったく穴がありませんでした。
ダルカンジェロのフィガロは、10数年前のザルツブルクで、そして昨年ウィーンでも観ることができましたが、プライ亡き後、当代随一のフィガロかも。
とにかく歌も演技も、まさに機知に飛んだフィガロそのものでした。
そして、ネトレプコ。
スザンナにしては少し深い声のような気もしますが、まあ舞台姿が素晴らしい。フィガロだけではなく、伯爵がころっと彼女の魅力に嵌ってしまうのも頷けます。
また、予想外に知的なスザンナだったと言ったら、あまりに失礼でしょうか。(ファンの方、すみません・・・)
スコウフスとレシュマンの伯爵夫妻も成熟した大人の歌唱を聴かせてくれましたし、スザンナ役で評価の高かったマクロクリンがマルチェリーナを歌うなど、脇役も本当にレベルが高かった。
しかし、私が文句なく素晴らしいと思ったのは、クリスティーネ・シェーファー。
どこか危なっかしい中性的な魅力に溢れた、最高に魅力的なケルビーノでした。モーツァルトのイメージどおりのケルビーノじゃないかなぁ。

しかし、これだけ素晴らしい歌を聴きながら、そして、いたるところで感心しながら、「最高のフィガロだった!」とストレートにいえないところがオペラの難しいところ。
それは、ひとえに演出です。
実演を観た人の間でも、賛否両論あったようです。

このステージでは、台本にはない狂言回しの役を演じる天使が登場します。
名前もケルビム。ケルビーノの分身?
ただし、魔笛の3人の童子のような「幸運の天使」的な存在ではありません。
いたずら好きの運命の女神といった風情です。
その結果、「自分で自分が分からない」という、全員がまさにケルビーノ状態に。
本当に面白いけど、これでよかったのかしら。

第4幕の最後は、伯爵の「コンテッサ、ペルドーノ・・・」の後、どんな演出でも一直線にハッピーエンドに向かうのですが、今回の場合はなにやら一筋縄では行きません。
もう一波乱起こそうとするケルビムの動きが、どうしても気になるのです。

また、今回の演出では、歌手を横になって歌わせるシーンが多かった。
にもかかわらず、破綻なく歌いきる歌手達には、心から脱帽です!
それから、スコウフスもレシュマンも、またダルカンジェロも、普段以上に多く汗をかいているようにみえました。
これも少々、ライトが強すぎたのでは・・・。

何やらネガティブなことを書きましたが、上演自体は「最高に刺激的な舞台であり音楽」であったことは、紛れもない事実です。
演出も、しばらくたってもう一度観たら、すんなり溶け込めるかもしれません。
再チャレンジしてみたいと思います。

P.S
今年のザルツブルク音楽祭では、同じグートの演出で再演が予定されていますが、
指揮はアーノンクールに替わってハーディング。
そして、スザンナ役にはなんとダムラウです。
声質的にはダムラウの方が合うように思うので、きっと素敵な舞台になるだろうなぁ。









コメント (9)
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