時間を見つけては、こつこつと録りだめたビデオテープからDVDへダビングをしているが、一向に進まない。
でも、その作業の中で久しぶりに出会った名演奏に、しばし我を忘れて見入ってしまうことがある。
サイトウキネンのブラームス全集も、まさにそんな一枚。
この1番は、1992年9月の松本でのライブである。
<日時>1992年9月5日
<会場>松本文化会館
<曲目>
■ブラームス:交響曲第1番ハ短調
■モーツァルト:ディベルティメントK.136から第2楽章
サイトウキネンのブラームスの1番といえば、FMで聴いた1990年のザルツブルグのライブ、DVDでも残されている同年のロンドン公演における演奏が、いずれも白熱のブラームスと評したくなるような素晴らしい名演だった。
とくにロンドン公演の方は、プロムスという独特の雰囲気もあって、エネルギーの迸りがもの凄かった。
今回とりあげたのは、その2年後の1992年に松本で行なわれたコンサートの映像。
1992年といえば、サイトウキネンオーケストラが、本拠を長野県の松本に構えた年だ。
2年前のヨーロッパ公演のときとはメンバーも勿論交替しているが、コンミスの潮田益子さんを始めとして、主だったメンバーは変わっていない。
天皇、皇后両陛下ご臨席のもと開かれたこの1992年のコンサート、結論から申し上げると1990年以上の出来ではないだろうか。
確かに燃えるような熱さという点では、1990年のヨーロッパでの演奏に軍配が上がるかもしれないが、この松本の演奏は造形の確かさやスケールの大きさ、そして音楽のしなやかさという点において群を抜いている。
ボストン時代からの盟友であるエヴァレット・ファースの圧倒的な存在感をもったティンパニにも支えられて、終始緊張感を保ちながらも豊かな歌に包まれたブラームスは素晴らく魅力的。
なかでも、管の何と魅力的なこと!
フルートの工藤さん、オーボエの宮本さん、ホルンの水野さん、この日本を代表する名手たちが、いずれも精緻でかつ情熱的な演奏を聴かせてくれている。
この3人が揃ったサイトウキネンの演奏は、もう聴けないのかと思うと、やはり寂しさを感じる。
そして、この才能豊かな奏者たちを見事に束ねていたのはコンミスの潮田さん。
映像を見ながら、私が最も痺れたのは、実はコンミスの潮田さんの表情だった。
献身的といいたくなるような、本当にいい表情。
腕っ節でオケを引っ張るのではなく、ともに斎藤秀雄のDNAを受け継いだオケのメンバーたち、そしてマエストロ小澤さんをひたすら信じることで、自分たちが目指す方向を自然に指し示したリーダーの姿がそこにあった。
彼らのブラームスを、「とても美しいけど個性に乏しい」という人がいるかもしれない。
確かに、ウィーンフィルやコンセルトヘボウ、ベルリンフィルといった、ほんの少し響きを聴いただけでわかるような強烈な個性はない。
でも、サイトウキネンのピュアでひたむきな演奏は、間違いなく私の心に強く響いた。
日本的な・・・なんて表現を使うと、笑われるだろうか。
また、小澤さんとサイトウキネンの関係は、ある意味でアバド率いるルツェルン祝祭管弦楽団とよく似ている。
アバド&ルツェルンの来日公演で聴いたマーラーは、私が実演を聴いて最も感銘を受けたコンサートだったが、聴きながら「このオーケストラ、アバドが引退したら一体どうなってしまうんだろう」と思ったものだが、同じことがこのサイトウキネンにも言えるかもしれない。
それほど、小澤さんの存在は大きい。
今月末に、私は松本で初めてサイトウキネンの実演を聴く。
演目は、ブリテンの「戦争レクイエム」。
果たして、どんなメッセージを伝えてくれるのだろうか。
今から楽しみである。
でも、その作業の中で久しぶりに出会った名演奏に、しばし我を忘れて見入ってしまうことがある。
サイトウキネンのブラームス全集も、まさにそんな一枚。
この1番は、1992年9月の松本でのライブである。
<日時>1992年9月5日
<会場>松本文化会館
<曲目>
■ブラームス:交響曲第1番ハ短調
■モーツァルト:ディベルティメントK.136から第2楽章
サイトウキネンのブラームスの1番といえば、FMで聴いた1990年のザルツブルグのライブ、DVDでも残されている同年のロンドン公演における演奏が、いずれも白熱のブラームスと評したくなるような素晴らしい名演だった。
とくにロンドン公演の方は、プロムスという独特の雰囲気もあって、エネルギーの迸りがもの凄かった。
今回とりあげたのは、その2年後の1992年に松本で行なわれたコンサートの映像。
1992年といえば、サイトウキネンオーケストラが、本拠を長野県の松本に構えた年だ。
2年前のヨーロッパ公演のときとはメンバーも勿論交替しているが、コンミスの潮田益子さんを始めとして、主だったメンバーは変わっていない。
天皇、皇后両陛下ご臨席のもと開かれたこの1992年のコンサート、結論から申し上げると1990年以上の出来ではないだろうか。
確かに燃えるような熱さという点では、1990年のヨーロッパでの演奏に軍配が上がるかもしれないが、この松本の演奏は造形の確かさやスケールの大きさ、そして音楽のしなやかさという点において群を抜いている。
ボストン時代からの盟友であるエヴァレット・ファースの圧倒的な存在感をもったティンパニにも支えられて、終始緊張感を保ちながらも豊かな歌に包まれたブラームスは素晴らく魅力的。
なかでも、管の何と魅力的なこと!
フルートの工藤さん、オーボエの宮本さん、ホルンの水野さん、この日本を代表する名手たちが、いずれも精緻でかつ情熱的な演奏を聴かせてくれている。
この3人が揃ったサイトウキネンの演奏は、もう聴けないのかと思うと、やはり寂しさを感じる。
そして、この才能豊かな奏者たちを見事に束ねていたのはコンミスの潮田さん。
映像を見ながら、私が最も痺れたのは、実はコンミスの潮田さんの表情だった。
献身的といいたくなるような、本当にいい表情。
腕っ節でオケを引っ張るのではなく、ともに斎藤秀雄のDNAを受け継いだオケのメンバーたち、そしてマエストロ小澤さんをひたすら信じることで、自分たちが目指す方向を自然に指し示したリーダーの姿がそこにあった。
彼らのブラームスを、「とても美しいけど個性に乏しい」という人がいるかもしれない。
確かに、ウィーンフィルやコンセルトヘボウ、ベルリンフィルといった、ほんの少し響きを聴いただけでわかるような強烈な個性はない。
でも、サイトウキネンのピュアでひたむきな演奏は、間違いなく私の心に強く響いた。
日本的な・・・なんて表現を使うと、笑われるだろうか。
また、小澤さんとサイトウキネンの関係は、ある意味でアバド率いるルツェルン祝祭管弦楽団とよく似ている。
アバド&ルツェルンの来日公演で聴いたマーラーは、私が実演を聴いて最も感銘を受けたコンサートだったが、聴きながら「このオーケストラ、アバドが引退したら一体どうなってしまうんだろう」と思ったものだが、同じことがこのサイトウキネンにも言えるかもしれない。
それほど、小澤さんの存在は大きい。
今月末に、私は松本で初めてサイトウキネンの実演を聴く。
演目は、ブリテンの「戦争レクイエム」。
果たして、どんなメッセージを伝えてくれるのだろうか。
今から楽しみである。