ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

ポール・メイエ クラリネットリサイタル

2009-02-28 | コンサートの感想
少し遅くなりましたが、24日に聴いたポール・メイエのコンサートの感想を。

<日時>2009年2月24日(火) 19時開演
<会場>東京オペラシティ コンサートホール
<曲目>
■メンデルスゾーン:クラリネット・ソナタ 変ホ長調
■マルティヌー:クラリネットとピアノのためのソナティナ
■ウェーバー:歌劇「シルヴァーナ」の主題による7つの協奏的変奏曲 Op.33
■ベルク:4つの小品 Op.5
■ブラームス:クラリネット・ソナタ第1番 ヘ短調 Op.120-1
■プーランク:クラリネット・ソナタ
<演奏>
■ポール・メイエ(クラリネット)
■エリック・ル・サージュ(ピアノ)

この日は「大好きなメイエのクラリネットが聴ける・・・」といそいそと帰社の準備をしていたところ、急な会議につかまってしまい、ふと時計を見ると6時半。
すぐに頭の中でシミュレーションしました。
会社のある東京駅から新宿へ、さらに初台まで京王新線に乗り換えて、駅を降りてオペラシティの3階まで駆け上がる・・・。
「うーん、仮に待ち時間をゼロだと考えても、さすがに7時の開演には間に合わないな」と観念しました。
それでも、とにかくベストを尽くそうと猛ダッシュで東京駅に向かい、電車に飛び乗りました。
乗り換えも最高のタイミングでしたが、初台駅に着いたら6時57分。
ああ、万事休す!
しかし諦めずに必死でホールまで駆け上がると、「お急ぎください」という係の人の声がします。
なんと!間に合ったんだぁ。
私が席に着いて暫くすると徐々に証明が暗くなり、一呼吸おいてメイエとル・サージュがステージに・・・。

ホールに響くメイエの音は本当に柔らかい。
これが若きメンデルスゾーンの音楽と何ともよく似合っていました。
そして、唖然とするくらいのテクニックの冴え。
さすがとしか言いようがありません。
ただ、マルティヌーもそうでしたが、リズムの面白さが前面にでる箇所で、せっかくの妙技がホールの残響で消されてしまったことは少々残念。

そして、休憩を挟んで始まった後半の3曲こそ、まさにポール・メイエの真骨頂。
冒頭のベルクは、短いながらも味わい深い佳曲。
私は聴きながら、ずっと色鮮やかに描かれるさまざまな情景を思い浮かべていました。
聴き手にこれだけイマジネーションを感じさせるのは、すぐれた演奏であったことの何よりの証左でしょう。
ブラームスでは、どこか懐かしさを感じさせてくれる第2楽章、素朴な響きの第3楽章がとくに印象的でした。
豊かだけど決して重さを感じさせないしなやかなサウンドは、いま思い出しても微笑まずにはいられません。
プログラムの最後に置かれたプーランクは、まさにこの日の白眉。
色彩豊かで、緊張感に満ちていて、ときに、はっとするくらいの優しさに満ちていて、もう息をのむほどに素晴らしかった。
「クラリネットって、こんな凄い表現力を持っているんだ」と、第2楽章を聴きながら改めて思い知らされました。
アンコールの3曲は、さらに自由な遊び心も加わった名演。

それから、ピアノのエリック・ル・サージュについてもひとこと。
彼のソリストとしての力量は、読響とのシューマンのコンチェルトですでに体験済ですが、室内楽奏者としてのセンスもさすがに抜群です。
出るところ、抑えるところ、合わせるところ、それぞれの立ち位置が明確で、とにかくポール・メイエとの呼吸も見事のひとことでした。
奇跡的に全プログラムを聴くことができたわけですが、本当に聴けてよかった。
神様に感謝しなければいけませんね。
コメント (2)
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