ETUDE

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アーノンクール&ウィーンフィル(その2) ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調 op.92

2006-11-15 | コンサートの感想
「激しく、しかも美しいベートーヴェン」

       

アーノンクール&ウィーンフィルの後半の演目、ベートーヴェンの7番を聴いた印象です。
やはり、モーツァルトとは響きが違います。
第1楽章冒頭から、力感と柔らかさが交錯した充実した響きに耳を奪われます。
序奏の、力強いけどシンプルなあの上昇音階ですら、このオーケストラの手にかかると何とも音楽的になっていきます。
そして、主部のヴィヴァーチェに入ってからは、とくに内声部に注意して聴いていたのですが、第二ヴァイオリン、ヴィオラそしてチェロがしっかり聴こえます。
美しいメロディラインについ隠れがちですが、このあたりが、このオーケストラ特有の素晴らしいアンサンブルの秘密かもしれません。

そして、この日最も感銘を受けたのが次の第2楽章。
ヴィオラ・チェロ・コンバスが奏でる有名な主題、私はこんなに震えるような感動持って聴いたことはありません。
アーノンクールは、4小節単位で繰り返されるフレーズの最後の音をやや短めに、しかし実に意味深く表現させます。
私は思わず姿勢を正しました。
そして、続くppに音量を落とした箇所では、もう金縛りにあったみたいで、まったく身動きができません。
もの凄い緊張感、表現力。
弱音がこんなにもインパクトを持っているのですね。
このあたりまでくると、咳払いがホールのあちこちで聴こえてきました。
もちろん会場ノイズには違いないのですが、これは、決して聴衆が集中していないからではないのです。
むしろ全く逆で、あまりの緊張感に、思わず体が反応したのではないでしょうか。
ホールを埋めつくした聴衆が固唾を呑んで見守る中、音楽はさらに高揚し、第2楽章のエンディングに。
ベートーヴェンが、最後の2小節だけを、何故ピツィカートではなくアルコで弾かせたか、初めて分かったような気がしました。
もう言葉で表現できないくらいの感動。
もし、この日のコンサートがディスクとしてリリースされたら、私はこの第2楽章を聴くためだけであっても、必ず買うでしょう。
それほどの演奏でした。

そして第3楽章では、伸びやかなトリオが印象に残りました。
また、コーダのプレストの直前、ゆったりとかつ深々とした表現は見事としかいいようがありません。
私は、なぜかこの響きの中にレオノーレの序曲を聴いていました。

フィナーレは、大変に速いテンポで始まりました。しかも、すざましいまでの集中力。
強奏部では、アーノンクールが両手を大きく振り上げる例の仕草で思いっ切りアクセントを要求するものですから、さすがにウィーンフィルでも音が十分に鳴り切りません。
しかし、これがアレグロ・コン・ブリオなんですよね。
コーダのクライマックス(練習番号Rの少し前)で、唸りを上げて襲い掛かるチェロとコントラバスの迫力には思わず鳥肌がたちました。

アンコールは、ベートーヴェンの交響曲第8番の第2楽章。

アンコールを含め、素晴らしいベートーヴェンでした。
アインザッツのマスターがコメントくださったように、今回のアーノンクールに率いられたウィーンフィルの公演は、何年後かに伝説のコンサートとして語られることになるかもしれません。

私は、ウィーンフィルの音楽が、ウィーンフィルの響きが大好きです。
そして、サントリーホールという日本一の響きを持つホールで聴くウィーンフィルは、格別の魅力を持っていると信じています。
コメント (2)
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