昨日、久しぶりにクラシックギターのソロコンサートに行ってきました。
大好きなギタリストの一人であるデイヴィッド・ラッセルのコンサートです。
ラッセルの実演を聴くのは、1991年の初来日の時以来ですから、15年ぶりということになりますね。
初めてデイヴィッド・ラッセルの名前を知ったのは、かれこれ17~18年くらい前だったと思います。
それは、偶然見つけた一枚のCDでした。
CDの冒頭の曲は、ラッセル自らの手によるヘンデルのチェンバロ組曲第7番だったのですが、最初のフレーズからもう痺れてしまいました。
なんと、音楽が生き生きと美しく響いているんだろう。しかも、格調高い。
こんなギタリストがいたんだと、大変驚きました。
終曲のパッサカリアにくると、もう胸がいっぱいになって、しばらくの間何も手につかなかったことを、今も鮮烈に覚えています。
当時30代の気鋭のギタリストだったラッセルも、すでに大家と呼ばれる年代。
そんな彼がどんな演奏を聴かせてくれるか、とても楽しみにして上野の文化会館に行きました。
JRが遅れていたため、開演時間も15分ほど遅らせて始まりました。
ようやくデイヴィッド・ラッセルがステージに登場。
確か50代のはずなんだけど、若い!
かつての貴公子然とした雰囲気は、まったく変わっていません。
とにかく笑顔が素晴らしく、聴き手を一瞬にしてリラックスさせてしまうところは、ラッセルならでは。
最初の曲は、ジュリアーニの大序曲。
華やかで私の大好きな曲なのですが、残念なことにほとんど印象がないのです。
これは、ラッセルには何の責任もありません。
私の近くの席から聞こえてくる携帯電話のマナーモードの振動音が、すべての原因。
それも、しつこくずっと鳴り続けていたのです。まったく残念!
気を取り直して、2曲目のバッハに期待。
これは素晴らしかった。無伴奏フルートソナタのアレンジなんですが、オリジナルのギター曲といってもまったく差し支えないくらいの名編曲であり、名演奏でした。
彼の持ち味である生気溢れる音楽に、さらに深みが加わって、まさに熟成された味。
美しい音を生み出す右手のタッチの素晴らしさと、見事にコントロールされた左手(指)の技術にも支えられて、格調高いバッハを聴かせてくれました。
前半のメインは、グラナドスの詩的ワルツ集。
原曲に非常に忠実な編曲でしたが、正直ギターには荷が重いか・・・。
ラッセルの卓越した技術を持ってしても、そう感じました。
この曲を30年前からレパートリーに入れていた名手ジョン・ウィリアムスは、もっと割り切ったアレンジだったなあ。
しかし、ジョンの弾く詩的ワルツ集は、まるでグラナドスがたった今ギターのために書き下ろしたかのような鮮度の高さと、匂うばかりの美しさを感じさせてくれました。
このグラナドスで休憩のはずでしたが、JR遅延の影響で途中からしか聴けなかった聴衆のことを気遣ってくれたのか、優しいデイヴィッドはここで1曲追加してくれました。
追加されたのは、メルツのハンガリアン幻想曲。
さすがにラッセルの十八番だけのことはあります。それはもう、素晴らしい演奏でした。
私も一度コンサートで弾いたことがありますが、こんな演奏を聴いてしまうと、激しい自己嫌悪に陥りそう。
後半は、ダウランドの4つのガリアルドで始まりました。
カポタストをつけての演奏です。
単にリュートのイメージを模するというのではなく、ギターの機能性を上手く引き出した素敵な演奏でした。
ここまで書いてきて、ふと思い出したのですが、この日のデイヴィッドは、譜面を見て演奏するときだけ眼鏡を外していたなあ。
逆ならよく分かるのですが・・・(余計なお世話でした。すみません)
この日の白眉は、次のハウグの「プレリュード・ティエントとトッカータ」でした。
セゴヴィアのために書かれたにもかかわらず、セゴヴィアが録音をしなかったこともあって、決してメジャーな曲とは言えませんが、本当に素晴らしい音楽を聴かせてもらいました。
とくにティエントは、古きよき時代への憧れのようなものがストレートに感じられて大変感銘を受けました。
きっと、この日のラッセルの演奏に刺激されて、人気がでるだろうなあ。
コンサートの最後は、ソーホの人懐っこい曲。
文句なしの演奏でしたが、この曲をとりに持ってくるなら、ハウグの曲のほうが良かったような気もします。
そして、鳴り止まない拍手に応えて、アンコールは3曲。
最後に弾いてくれたのは、バリオスの「最後のトレモロ」。
素晴らしかった!ただただ、素晴らしかった!
言葉にならないくらいです。
これを聴けただけでも、この日は元が取れる、そんな音楽でした。
「よーし、気候も良いし、これから気を入れてギターを練習するぞ!」と、心に誓った夜でありました。
いつまでこのモチベーションが持つか、甚だ不安ではありますが・・・(笑)
<日時>2006年11月02日(木)19:00
<会場>東京文化会館 小ホール
<曲目>
■ジュリアーニ:大序曲
■J.S.バッハ :無伴奏パルティータ イ短調BWV.1013
(原曲は無伴奏フルートのためのパルティータ)
■グラナドス:詩的なワルツ集
■メルツ:ハンガリー幻想曲(追加)
■ダウランド:4つの小品
涙のパヴァーヌ~ダウランド氏のガリアルド~
「つねにダウランド、つねに悲しく」~エリザベス女王のガリアルド
■ハウグ:プレリュード・ティエントとトッカータ
■ソーホ:5つのベネスエラ小品
ほか
大好きなギタリストの一人であるデイヴィッド・ラッセルのコンサートです。
ラッセルの実演を聴くのは、1991年の初来日の時以来ですから、15年ぶりということになりますね。
初めてデイヴィッド・ラッセルの名前を知ったのは、かれこれ17~18年くらい前だったと思います。
それは、偶然見つけた一枚のCDでした。
CDの冒頭の曲は、ラッセル自らの手によるヘンデルのチェンバロ組曲第7番だったのですが、最初のフレーズからもう痺れてしまいました。
なんと、音楽が生き生きと美しく響いているんだろう。しかも、格調高い。
こんなギタリストがいたんだと、大変驚きました。
終曲のパッサカリアにくると、もう胸がいっぱいになって、しばらくの間何も手につかなかったことを、今も鮮烈に覚えています。
当時30代の気鋭のギタリストだったラッセルも、すでに大家と呼ばれる年代。
そんな彼がどんな演奏を聴かせてくれるか、とても楽しみにして上野の文化会館に行きました。
JRが遅れていたため、開演時間も15分ほど遅らせて始まりました。
ようやくデイヴィッド・ラッセルがステージに登場。
確か50代のはずなんだけど、若い!
かつての貴公子然とした雰囲気は、まったく変わっていません。
とにかく笑顔が素晴らしく、聴き手を一瞬にしてリラックスさせてしまうところは、ラッセルならでは。
最初の曲は、ジュリアーニの大序曲。
華やかで私の大好きな曲なのですが、残念なことにほとんど印象がないのです。
これは、ラッセルには何の責任もありません。
私の近くの席から聞こえてくる携帯電話のマナーモードの振動音が、すべての原因。
それも、しつこくずっと鳴り続けていたのです。まったく残念!
気を取り直して、2曲目のバッハに期待。
これは素晴らしかった。無伴奏フルートソナタのアレンジなんですが、オリジナルのギター曲といってもまったく差し支えないくらいの名編曲であり、名演奏でした。
彼の持ち味である生気溢れる音楽に、さらに深みが加わって、まさに熟成された味。
美しい音を生み出す右手のタッチの素晴らしさと、見事にコントロールされた左手(指)の技術にも支えられて、格調高いバッハを聴かせてくれました。
前半のメインは、グラナドスの詩的ワルツ集。
原曲に非常に忠実な編曲でしたが、正直ギターには荷が重いか・・・。
ラッセルの卓越した技術を持ってしても、そう感じました。
この曲を30年前からレパートリーに入れていた名手ジョン・ウィリアムスは、もっと割り切ったアレンジだったなあ。
しかし、ジョンの弾く詩的ワルツ集は、まるでグラナドスがたった今ギターのために書き下ろしたかのような鮮度の高さと、匂うばかりの美しさを感じさせてくれました。
このグラナドスで休憩のはずでしたが、JR遅延の影響で途中からしか聴けなかった聴衆のことを気遣ってくれたのか、優しいデイヴィッドはここで1曲追加してくれました。
追加されたのは、メルツのハンガリアン幻想曲。
さすがにラッセルの十八番だけのことはあります。それはもう、素晴らしい演奏でした。
私も一度コンサートで弾いたことがありますが、こんな演奏を聴いてしまうと、激しい自己嫌悪に陥りそう。
後半は、ダウランドの4つのガリアルドで始まりました。
カポタストをつけての演奏です。
単にリュートのイメージを模するというのではなく、ギターの機能性を上手く引き出した素敵な演奏でした。
ここまで書いてきて、ふと思い出したのですが、この日のデイヴィッドは、譜面を見て演奏するときだけ眼鏡を外していたなあ。
逆ならよく分かるのですが・・・(余計なお世話でした。すみません)
この日の白眉は、次のハウグの「プレリュード・ティエントとトッカータ」でした。
セゴヴィアのために書かれたにもかかわらず、セゴヴィアが録音をしなかったこともあって、決してメジャーな曲とは言えませんが、本当に素晴らしい音楽を聴かせてもらいました。
とくにティエントは、古きよき時代への憧れのようなものがストレートに感じられて大変感銘を受けました。
きっと、この日のラッセルの演奏に刺激されて、人気がでるだろうなあ。
コンサートの最後は、ソーホの人懐っこい曲。
文句なしの演奏でしたが、この曲をとりに持ってくるなら、ハウグの曲のほうが良かったような気もします。
そして、鳴り止まない拍手に応えて、アンコールは3曲。
最後に弾いてくれたのは、バリオスの「最後のトレモロ」。
素晴らしかった!ただただ、素晴らしかった!
言葉にならないくらいです。
これを聴けただけでも、この日は元が取れる、そんな音楽でした。
「よーし、気候も良いし、これから気を入れてギターを練習するぞ!」と、心に誓った夜でありました。
いつまでこのモチベーションが持つか、甚だ不安ではありますが・・・(笑)
<日時>2006年11月02日(木)19:00
<会場>東京文化会館 小ホール
<曲目>
■ジュリアーニ:大序曲
■J.S.バッハ :無伴奏パルティータ イ短調BWV.1013
(原曲は無伴奏フルートのためのパルティータ)
■グラナドス:詩的なワルツ集
■メルツ:ハンガリー幻想曲(追加)
■ダウランド:4つの小品
涙のパヴァーヌ~ダウランド氏のガリアルド~
「つねにダウランド、つねに悲しく」~エリザベス女王のガリアルド
■ハウグ:プレリュード・ティエントとトッカータ
■ソーホ:5つのベネスエラ小品
ほか