ひとつ手前の駅でも もう・・・・
あまり人っ気のない電車のベンチシート
端っこに座ってたら 途中の駅から
淡い色のフード付きコートの女の子
ためらわず隣にやってきた
フードの中から見上げる
鳶色の瞳が瞬きもせずいう
オジサン センソウノ テマエノ
エキマデ ツレテッテ
自分の行く先の ひとつ向こうの駅だったが
すぐ引き返せるからと 連れていった
そんな きれいな こーとでは
すぐ よごれて しまうよ
イイノ モウ センソウノ サキブレガ ヤッテキテ
ミエナイケレド ヨゴレテシマッテ イルンデスモノ
いっしょに降りたら
白い手を ひいらひいらさせて
少女は行ってしまった
硝煙の匂いが残ったようだ
引き返さねばと ホームへと急ぐ
七つの階段 昇ったり降りたり
四つの地下道と三つの高架 行ったり来たり
ホームには行き着けない
着ていた衣服に 染みができた
どす黒い不定形な 模様が 浮き出る
胸にも 袖にも 背中にも 拡がる
汚れ よごれ ヨゴレ YOGORE
センソウが電車に乗ってここまで来たのか
センソウを乗せてきた電車の
運転席の運転手 指差し確認怠りなく
発車オ~ライッと 朗々と叫ぶ
ああその声ときたら こんなにしゃがれる前の
若かった頃のあの声 まぎれもない私のあの声
♪あああああのかおであのこえで
https:/
繭からは出たけれど
サア ワタシトスモウヲ トルノヨ
黒いシャツに白い短パンのきなこが言った
行司はかんざぶろ
スピルバークの描く未来人のようにスリム
昨日まで 薄い褐色の 繭のなかにいた
出してくれ といったら 二人が出してくれた
思い出した そのとき約束したのを
出たら きなこと相撲をとるのだった
四つに組んでも 掴みどころがないきなこ
少し引いたので ここだと右足を出したら
柔道の 内股のような技で
背中から ドスンと落とされた
コレデ アナタハジユウヨ サアユキナサイ
行きなさいって とくに宛もないし
いっしょに いさせては くれないか
きなことかんざぶろ 顔を見合わせる
デキナイワ ワタシタチニハ ニンムガアル
きなこは 周りを指し示した
そこは キウイの畑のように
多くの繭が ぶらり~っと垂れ下がっていた
コレヲ アケルノガ ワタシタチノニンム
デテキテ スモウニ マケタラ
ココカラ タビダツノガ アナタタチノサダメ
二人は 霧の立ち込めた 彼方を指差す
もし 相撲に 勝っていたら と私
ワカラナイワ ワタシマケタコトガ ナイカラ
かんざぶろも ぎょうぎょうしく うなずいた
旅立つしか なさそうではないか
歩を進めると 昨日まで入っていた繭が
修復されて また ぶら下がっていた
なかに 入っていたのは
胎児のように 背を丸めた かつての私
単純な セオリーで 編まれている繭
全部が わかってしまう 安心の繭
しかし それは 偽りの 安心
変わりゆく 現実に 嘲笑される安心
去ろうとする私に
かつての私は すねたように 微笑む
自由への恐怖って むかし きいたろ
1950年代の 後半だっかな・・・・
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