冬の夕刻、田舎道は寒くて寂しい。
伊吹山は黒い雲の向こうに身を隠し、カラスすら飛んではいない。
背を丸めて歩いているとどこへも帰れないのではという気がする。
ぽつねんとひとりいることが深々と心細い。
いつも見慣れた風景がどこか突き放すように空々しい。
車のライトが、襲いかかるように身をよぎって曲がっていった。
遠くでうつけたように犬が鳴いたが、すぐに鳴き止む。
あと何歩歩いたらいいのだろうか。
数え始める。
三〇ほど数えただけで馬鹿々々しくなって止めてしまう。
ブルブルっと身震いすると、あたりの灯がすべて揺れた。
冬の夕刻、田舎道はひたすら寒くて寂しい。