京都は清水寺で毎年揮毫される“今年の漢字”を、2010年現時点でいきなり決めるなら“熊”でいいんじゃないかってぐらい、毎日、全国各地そこらかしこらで出まくってますな、クマ。
「クマならこのへんにもしょっちゅう出るぜ」「マジ?」「残業続いたときなんかホレ、ここに」と“目の下”を指さして職場の空気を寒くしている先輩社員が、アナタのそばにも1人はいませんか。
いや冗談はさておき、ここ2~3日はニュースのたびに「今日はどこで出るかな」ってぐらい。冬眠準備食いだめ期にあたる今頃のクマ出没と言えば北海道や東北の山地、山麓の郡部がほとんどだったのですが、北海道斜里町で先日いきなり3頭現われたときの新聞写真なんかだと、郡部と言えども舗装道路に、住宅や個人商店が建ち並んだ結構な市街地の、その舗装道路のど真ん中を、車の往来を怖れる様子もなくてんでにのそのそ歩いており、「クマの出る様な山の中に人間が踏み込むから出くわすんだ、クマだって迷惑してるわ」と、あながち言い切れない状況のようです。
昨日(19日)のニュースで報じられた、富山県富山市で浜釣りの釣り人を襲ったクマなんかは、地元の人の話によると「日頃生息し、目撃されている山間からは、最短でも20キロは離れている」そうで、クマくん山を下り、河川敷沿いに砂浜に出て、松林に守られ潮風の匂いを嗅ぎながら20キロのウォーキングを敢行したことになる。
全国に広がる、というより「はびこっている」「猛威をふるっている」、もしくはいっそ「猖獗(しょうけつ)をきわめている」に近い昨今のクマ騒動、一般的には「クマの生活圏である里山が、人間の自然破壊行為によって荒廃してきている」「加えて今年は異常な猛暑で、冬眠前のクマの主力栄養源である木草の実、種実類の実りが悪く、エサを求めて人里に迷い出て来ざるを得ない」「一部のマナーの悪い登山客、ハイカーが投棄した弁当や飲料の食い残しを拾いたどって人里に来るケースもある」等が原因として有力視され、それに基づいて当面の対策やCOP10レベルの長期的課題も論じられているわけですが、どうでしょう。
月河がにらんだところ、問題はもっと別のところにあるような気がするのです。
少子高齢化が進み、微増ないし横這いから完全に減少に転じた日本の人口の裏深くで、実はひそかにクマ人口…じゃなくて“熊口(くまこう)”は勇躍増加の一途をたどっているとは考えられないでしょうか。
クマは増えている。全国いたるところで着々と繁殖、増殖している。いままであまり目を向けられなかった山間郡部を手はじめに、本当はそこらじゅうクマだらけになっているのかもしれない。
いまのところ遭遇目撃されているのは、比較的山間からほど近い地域だけに限られていますが、すでに20キロ離れた海浜までその触手が伸びてきているわけです。都会でも油断はなりません。
何ヶ月も何年も、顔を合わせることも挨拶を交わすこともないようなマンション、アパートの隣人で、とんでもないときにゴトゴト、ユサユサ足音や物を叩くような音、ガリガリ、ジャリジャリ壁板を引っ掻くような音が聞こえるだけといった場合、実はその隣人はクマである可能性がある。隣人ではなく“隣熊”です。トン、トン、トンカラリとトナリグマ。回してちょうだい回覧板。教えられたり教えたり。歌っている場合ではない。今年全国で頻発した“消えた高齢者”問題なども、そのうち何割かは、人間の高齢者にこっそりなりかわってクマが年金受給しているケースが含まれていると考えるべきです。
「里山環境保全で人間とクマの良き共存を」なんてなまぬるいことではなく、人口減少、とりわけ20~40代の“働き盛り人口”減少が喫緊の課題である日本、ここはもっと戦略的かつシステマティックに、“クマの労働力化”を視野に入れて動いてはどうでしょうか。
増加するクマ、特に知識欲や向上心旺盛な若年層に日本語教育、次いで職業教育をほどこし、ワープロ、パソコンなどのデスクワーク、あるいは理美容、木工、板金、左官や塗装表具などの技術を仕込んで、生産現場で積極的に活用、ポストリーマンショック後の経済成長に貢献してもらうのです。釣り場や市街地や介護施設などをほっつき歩かれて、拾い食い盗み食いされ放題では人間として知性が疑われてしまいます。クマになめられっぱなしではいけません。日本国に定住して日本在来の動植物を食し、子供こさえて生きて行こうとする者を、日本の経済構造に正々堂々組み入れる事をためらってはならない。
もちろん人間とクマとでは身体構造に小さからぬ差異があり、たとえばあのラフ&ワイルドな掌指で人間用のキーボードを操作するのは難しいと思われますから、彼らに適したタッチパネル等を開発する企業努力が必要です。そしてここに新規需要の生成余地も生まれる。
そして労働力化の次は、クマの納税者化です。雇用と労働で所得が生じる。所得には所得税。里山や山林に居住するなら、住民税も発生してくる。もちろん、彼らが速攻貨幣経済になじむのはむずかしいでしょうから、シャケ等による現物納税も許可しましょう。秋シャケが肥えて脂がのってくる時期の徴税は、税務官の横領にもじゅうぶん注意が必要です。
彼らも賃金上昇とともにより豊かな生活環境を求め、「たまには地元の木の実や川魚だけじゃなく、津軽のリンゴとか、静岡のウナギとかも食べたい」というニーズも出てくるでしょう。物資の移送、流通が活性化し、労働人口とともに下り坂だった“食べ盛り人口”も再び上昇に転じ、食料自給率もアップする。彼らが自給自足経済を脱し、遠隔地の食材を消費する機会が増えれば、当然消費税収も増え、財政赤字も圧縮好転するに違いありません。
こうして名実ともに日本国民となったクマたちのため、出没初期に猟友会によって射殺の憂き目を見た仲間たちの霊を安からしめるために“靖熊(やすくま)神社”を建立、年に一度は内閣総理大臣と全閣僚が公人として参拝するよう義務づけましょう。
クマと人間が共存共栄し、ともに働いた実りをともに享受する社会。世界に先駆けて日本が実現すれば、国際社会における日本の地位も目覚ましく高まり、「クマと協働するほどの肝っ玉とリーダーシップのある国を敵にまわしてはなるまい」と、中国も尖閣諸島からいさぎよく手をひき、北朝鮮も拉致被害者を全員解放帰国させて核ミサイルも廃棄。核もない戦争もない平和な地球に向かって、人類は歴史的な一歩を踏み出すことになるのです。あぁ今日はいい事を書いたなあ。
面白く拝読、GJ!!