懐かしい文庫本ミステリの再読、再々読に燃え出すと、なんだか脳内のどっかの近隣中枢に延焼してきたようで、3年ぶりくらいに“紙に手書き熱”が盛り上がってきました。
手で字を紙に書く熱、つまりは筆記用具熱です。
3年前にコレが来たときにはペン、ボールペン、油性ペン、ゲルインクペンと、手に持ち馴染んでしっくり来て筆の進みやすいアイテム、なおかつ軸色やデザインも好みで人の持ち物とまぎれない品番を求めて何か月も検索と試し書きの旅が続いたものですが、当時の“遺産”がまだごっそり手元にある現在、今度は嵌まるに事欠いて“キャラクター文具”の沼にずぶずぶ。
まぁ、おなじみサンリオ・はぴだんぶいの、カラビナ付きフリーケースをキイケースとして使い始めた頃からすでに、レターセットやプチメモパッドなど目につけば集めて恥じるところがなく(恥じるって)、家族も見ててもう「あぁ、例の、はぴぶんだいね」と固定的に間違え続けたまま、せせら笑うでも呆れるでもなく、いまや月河も「だからはぴ“だん”“ぶい”だってば!」と訂正もしないまま、着々じわじわデスク周りも“推しメンの誰かが必ず居る”状態になりつつはありましたが、『Yの悲劇』に再登頂チャレンジしていた9月下旬、「ところで、田村隆一さんのこの版、いままだ角川文庫で売ってるかな?」とふと気になって、とある日に久々大型書店に遠征したのがある意味、運命のターニングポイント(大袈裟だ)。
その日に限って書籍と音楽映像ソフト売場側の入り口でなく、文具事務用品雑貨側の入り口から入ったため、サンリオ→すみッコぐらし→ミッフィームーミンその他、と順番に、障害物競走の様に引っかかって行って、最終的にドン!と行きどまったのが“プチキャラコーナー”の“オバケ―ヌ”。
オバケ―ヌ。フレンチのメニューみたいだけど、つまり、おばけです。白い布かぶって目だけ出して、ふわんふわん空中を移動するアレ。おもに夜行性ですが、昼間も存在してるらしい。ちょうど、10月31日のハロウインを目標に売場が組まれていた時期でもあってフロントに出ていたのかもしれません。
白布白装束で、ポチッと両目だけ。手だけニュッと突き出したり、胸の前でギュッとしてたりはしますが指は省略。
バケる前、人間だったのか、何の生き物だったのかは不明。ただし、ネコのフォルムでおヒゲのある子と、ウサギのフォルムで立ち耳ちゃんの子は居て、“ニャンコーヌ”“ウサギーヌ”と名づけられ・・って、解説してるうちに自分でもふわんふわんと脱力してきました。
すみっコぐらしでもメンバーの中で“おばけ”が特推しメンだった月河、基本的にはコレ系の、動植物っぽくない、生命あるでもない無いでもないヴィジュアルが好きなんでしょうね。
すみっコ仲間のおばけさんは目とクチがあって人間っぽいところもありますが、この子たちは目だけで、クチ無しだからもちろんイラストの中でも「ぬっ」とかしかセリフ言わないし、なんかトボケているというか、空想感にあふれるというか、アンチリアルな感じ、月河の、大っ嫌いじゃないけどどうしても好きになれない言葉のひとつ「癒される」が、まずいぞまずいぞと思うんだけど当てはまってしまいそうなんだな。
「生活感がない」?“生”きてないですからね。オバケだから。
はぴだんの、たとえばバッドばつ丸なら友達のグッドはな丸がいてペットのポチ(←ワニだけど)がいて、ハンギョドンなら幼なじみのさゆりちゃん(←蛸だけど)がいて友達の優等生のイタロー(←烏賊だけど)がいて、タキシードサムなら弟のパムとタムがいて・・と、家族や人間関係もといキャラ関係のコンテクストが設定されているけど、オバケだから、何も無くて、存在だけがそれこそ宙に浮いてるんです。このしがらみのなさ、掴んでないと消えてなくなりそうな儚さが、個人的に、なんかいいんですよ。
商品としては、トータルステーショナリーメーカー・クラックス(CRUX)のオリジナルなので、紙文具はほぼ網羅してアイテムがあるんです。別に手紙書く宛先もないのに例によってレターセット、メモる事項もないのにメモパッド、筆圧強くてすぐ減るのに2Bの鉛筆、決まって失くすから持って歩かないのに鉛筆キャップ・・とじりじり深入りして行き、ふだん持ちのバッグに付けるアクリルのバッグチャームに至って、はぴだんぶいの子たちからタッチ交代。
一緒に付けといてもいいんですけど、色気のないトートバッグに男子6人+オバケって。チャームだけやたら豪華メンバー過ぎて目立ちそう。
そして先日ついに、「こんなんあったら買っちゃうだろうけど、まさか売り出さないだろう、文具のキャラなんだし」と思っていた、サンリオキャラばりのぬいぐるみまで本当に売場に出てて、本当に買ってしまいました(爆倒)。
シリーズ内のスリム定規とほぼ同じ、身長約15㌢。コレまずいよなぁ。絶対まずい。文具デスク周り用品と違って、引き出しにしまうわけにいかないから、確実に家族が見つけるわ。高齢組は視力がアレだから、「なんか白い、もわっとしたクッションみたいのある」とスルーするかもしれないけど、部分的に蓄光素材でできてて、昼間明るい所や、デスクライトのそばに置いとくと、消灯すると光るんですよ。
ヤッコさんたち朝早いからなぁ。いま、一年中で一番日の出が遅いから、早朝、カーテン未開の室内でこの子が光ってると、超常現象だ!って騒ぐかもしれない。
ヤッコさんたちの視界に入らない所に隠しとこう・・ってそしたら蓄光できないから光れないしなア、オバケ―ヌさん。
リモートワーク&ステイホーム2年目で、足の遠のいていた実店舗に久々行ったら、てきめんこんな調子。メンドくさカワイイ沼に足踏み入れてしまいました。
・・ところで、大型書店に出かけた当初の目的、角川文庫版『Yの悲劇』田村隆一さん訳の存否。確かめるの忘れてオバケ―ヌに取り憑かれただけで帰ってきたわけじゃないですよ。
やはり現行の角川文庫では、月河の手元にある田村さん訳ではない、新訳だけが販売されていました。翻訳者は20年ほど前ジェレミー・ドロンフィールドという新顔(当時)作家の『飛蝗の農場』(創元推理文庫)の訳で知ったベテランさんですが、月河はパス、やっぱり田村訳版で昭和40年代に読めて良かった(電子書籍kindleでならいまでも読めるようです)。