イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

いい杏配

2013-10-21 02:14:28 | 朝ドラマ

 てなわけで多少辛口ウォッチングでスタートした『ごちそうさん』ですが第3週(1014日~)でめっきり良くなってきました。あんだけ背高ノッポでパリコレ体型で迫力ファニーフェイスの杏さんがどんどん可愛く見えてきているし、東出昌大さんの通天閣=悠太郎も、気がつけば味出し系の茫洋ノッポさんになっています。

 東出さんは12日(土)放送の土曜スタジオパークで杏さんと一緒に番宣トークしていましたが、素は一見の印象よりもっさりしていないというか、結構軽妙でトボけた、おもしろいキャラしている。なんとなく、役者として定着する前のARATAさんにも似た、捉えどころのないピュアさと、いい意味の不気味さが混じっていて意外に化けそうな気もしてきました。なんたって190センチ近いタッパにあの素朴な太眉童顔のギャップは大きな強みになるはずで、なぜ朝ドラより先に仮面ライダーかスーパー戦隊の“敵か味方か謎のキャラ”で来てくれなかったのかと惜しまれます(まだチャンスはあるね)。

 
迎え撃つ(?)杏さんはといえば「明治生まれの大正女学生設定に拘泥しないで自然体で」という演技指導がされているらしく、衣装こそ着物袴に長靴でも、挙措は現代の女子大生と変わらず、“作り込みました感”の無さがいまのところとてもいい方向に出ているように思います。高身長・大柄を“女子力の低さ”に重ねてコンプレックスに思う妙齢子女は昔も今も少なくないはずで、杏さんのざっくばらんな演技が女性視聴者の「あるある」「いるいる」「わかるわかる」につながっている。

 
しっかり画面を見ているとやはりパリコレ体型の痛し痒しというか、TVフレームの中で長い四肢を持て余すようなところも見受けられるのですが、アップになったときの顔芸が思いのほか闊達で、型にはまった美人さんタイプではないのですけれどとにかく見飽きない。

 
何より杏さんが朝ドラヒロインとして有利だと思うのは、忙しい時間に背中で音声のみ視聴でも、台詞の声がきちんと前に出て聞こえるということです。何を言ったか明瞭に聞き取れるし、聞いて思わず画面に向き直って見たい気持ちにさせる力もある。

 特に朝ドラの場合、放送時間フルに画面に正対していられない“ながら視聴”のウォッチャー比率が高いですから、声の聴きやすさ、注意喚起力はきわめて重要です。前作『あまちゃん』の能年玲奈さんも、演技力限定ではまだ発展途上でふにゃふにゃしていましたが、台詞を言い出すとちゃんと“ヒロイン”として前に出て聞こえました。存在感や“華”の有無で言えばヒロインと同格でも良かった橋本愛さんや足立梨花さんらはここがもうひとつで、台詞を発したとき他人物たちの声の地合いに混じってしまうのです。これ以前作を思い出してみても、ヒロインオーディション最終ラウンド惜敗組と思われる“ヒロイン親友”や“ライバル”役に充てられた女優さんたちは、やはり微妙に声がこもり気味だったり、ガスガスしゃがれ気味だったりしたものです。

 杏さんにとっては、演技キャリアの中で昨年の大河ドラマ『平清盛』での若き日の北条政子役が大きな財産になったかもしれない。あまり絶賛の評は聞かれませんでしたが、第1話の登場シーンからすでにして声に迫力があり、誰この人?とアップになるのを待つような気持ちにさせました。

 『ごちそうさん』でひとつだけ不満を言うとすれば、NHKの各種番宣・番組紹介でも、出演俳優さんの各所でのトークでも、“推しフレーズ”が判で捺したように「美味しそうなお料理がこれからも続々出てきます!」というところでしょうか。関係ないでしょうが、そんなことドラマに。ドラマがおもしろくなるかどうかに。

 「ロケ地の美しい風景」だの「有名デザイナー誰某による豪華衣装の数々」だの「愛くるしい子役さんの癒し笑顔」だのを売りにされるのと同じ。本末転倒でしょうが。

 「美味しそうな料理続々」がテレビドラマにおいてセールスポイントになり得るのは、“美味しい料理を美味しそうにプレゼンしたり、食べたりするシーンが数多く出てきて、それによっておもしろさがパワーアップする筋立てになっている”場合だけです。極端な話、“まずくてしょうがない料理をまずそうに食べる場面がアクセルになって、そのたびストーリーが快調に進展する”ドラマならば、「まずそう料理続々」だって立派にセールスポイントになり得る道理です。

 逆に、看板通りの「美味しそう料理」がこれでもかと連チャン披露されたとしても、“料理を見せるたびに話が止まる”ような構成になっていたら、まるっきりの“逆セールスポイント”です。

 「美味しそうな料理」の絵をひたすら、たくさん見たいなら料理番組やレシピサイトに行けばすむ話。料理・食がテーマでありメインモチーフなドラマなのはもう耳にタコができるほどわかりましたから、「美味しく食べるたびに、もっと!おかわり!ぐらいの勢いでおもしろくなっていくお話です!」ぐらいの修辞は使って推してほしいものです。

コメント
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