
今年、劇場で一本もホラー映画を観ていないことに気付き、本作をチョイス。シャマラン映画ファンではないため、ホラー映画として観ることに。。。。「恐怖」というよりは「ビビらせ」型ホラー。いきなり驚かせて悲鳴を上げさせるお化け屋敷に近いかも。その演出手法は小手先に見え、ホラー映画としては凡作の域。ドラマ不足を補う要素が、ユーモアだけでは不十分。観客の想像力に頼りきった構成と、煽りに煽ったあげくの結末に、強いフラストレーションを感じる。
シングルマザーに育てられた2人の子ども(姉弟)が、母親の両親(祖父母)の家に訪れ、その家で体験する恐怖を描く。
子どもたちの母親は祖父母と絶縁関係 にあったため、彼らは祖父母に初めて会うことになる。祖父母の家は携帯電話の電波も届かない辺境にあり、広い農場地に囲まれ、近隣住居も見当たらない孤島みたいな場所にある。祖父は農業をして、祖母は精神カウンセラーをしているらしい。子どもたちを温かく迎えた祖父母だったが、さまざまな奇行が始まる。目撃した子どもたちの好奇心が疼くが、それが次第に恐怖心に変わっていく。
子どもたちにとって祖父母は見知らぬ相手である。普通に考えれば、血縁関係にある親族といえど大切な子どもを預けるわけだから、事前にどんな相手か、外見などを双方に共有して然るべきだろう。姉の趣味は動画撮影で、弟の趣味はラップだ。姉が撮影しようとする動画はドキュメンタリーレベルで撮影するには早熟過ぎるし、ツルっとした幼い白人少年が黒人ばりのラップを刻むことに違和感がある。なくはない設定なのだが、リアルよりも描きたい物語のための設定だろう。POV撮影に代表されるように「わざわざどうして」というツッコミが前提にあるが、本作はホラー映画なので怖がらせてくれれば、それで良い。伏線の話は別だが。
ホラーの源泉は祖父母の異様さだ。子どもたちは自分たちの祖父母ということで安心していたが、気味が悪い奇行を目の当たりにする。祖父母のイメージが崩れ底知れぬ恐怖心を抱く。しかも、その奇行はときに突発的で予断を許さない。「穏やかで優しい」おばあちゃんとおじいちゃんのイメージが「気持ち悪さ」に転じるのは容易なことで、ホラーの絶好のネタになる。そして、笑いのネタにもなりやすく二度美味しい。老人とホラーの相性の良さは、過去のホラー映画でもこすられてきたことなので特に新鮮味はない。本作の絵は確かに怖いが、瞬間、瞬間での単発攻撃に終わるので芯に利いてこない。不穏な空気でいっぱいになる中盤以降は抗体もできてしまう。祖父母とシングルマザーの関係は勿論のこと、子どもとシングルマザーの関係も軽薄に見える。それよりも気になるのは「祖父母はいったい何者?」という疑問だ。
「シャマラン映画」という看板を無視しても、その疑問の解消に執着させる作りになっている。「オチ」が知りたくなるのだ。そのオチは二段あると思っていて、一段目は中盤くらいで予想がつく。なので、それが明かされる瞬間は「やっぱそうだったのね」と怖がりもしない。気になるのは二段目だったが、二段目はなかったらしく、そのまま終幕となり肩透かしを食らう。近年のシャマラン映画を思えば、一段目のオチでも上出来といった具合だろうが、平凡過ぎてまったく面白くない。そして、とにもかくにも煽り過ぎ(苦笑)。オチではなく、伏線のためのネタが多く出てくるが、全てを回収していないようだ。「オーブン」のクダリがわかりやすい例だが、何かがありそうで何もない。答えはなく、不可解なシーンに観客をザワつかせるのが狙いか。「引っかかったな」と、シャマランの得意顔が浮かんで腹が立つ。そんなに巧くないですから。
狙って差し出されるコメディも笑えない。出てくるのは苦笑だ。老人の恐怖と笑いの表裏は想像の範囲だし(オシリは別)、弟が張り切って刻むラップは笑うよりもダサくて寒い。いったい少年に何をやらせているんだと気の毒にすら思う。想定外に老人たちの非力ぶりが露呈されるが、もっと面白い魅せ方があったのに、あれではシリアスなシーンと捉えられてもおかしくない。やりすぎるくらいがちょうど良い。弟が芸能人の名前を言ってリアクションをとるのって、何ソレ?だ。つまらないし、わかりづらい。
ホラーの魅せ方は一見センスがあるように見せて、どれも既知感のあるものばかり。ホラー映画として一定の怖さは味わえるものの、それ以上に満たされぬ気持ち悪さと、振り回された不快感が強い。あと、POV撮影については飽きられてきているので、相当な付加価値がないと手を出しちゃダメだ。
【40点】
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