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ボディガード -守るべきもの- 【感想】

2018-11-22 08:00:00 | 海外ドラマ



ハウス・オブ・カードの落胆から一転、2018年今年の海外ドラマ、暫定ベスト。

久々にテレビ画面に釘付けになった。

極上のスリルとドラマ。隙のない脚本と演出。魅力的なキャラクターたちと、主人公のカリスマ性。主演のリチャード・マッデンの迫力のパフォーマンス。
Netflixは、もっとこのドラマを宣伝したほうが良い。

計6話ながら、毎話にクライマックスあり。
通常ドラマの10話~13話くらいに相当するほどの濃密度。
「イエス、マム」は、しばらく自分のなかで流行りそうだ。

イギリスで要人警護の任務につく警察官が、イギリス国内で起きる未曾有のテロ事件に立ち向かうという話。

製作はイギリスのBBCで、昨年にイギリス国内で放送された本作をNetflixが配信権を取得し、今秋、日本を含めた世界各国にリリースしているらしい。後で知ったことだが、このドラマ、イギリス国内ではかなりの高視聴率を獲得したとのこと。

ゲーム・オブ・スローンズ(GOT)など、一部の海外ドラマファンにしかフラグが立たないであろう英国俳優のリチャード・マッデン。GOTであまりにも悲劇的な死を遂げた役として印象に残るが、そんな彼がボディーガード役を演じているという情報だけでは興味はそそられず、お試し程度に1話目を見ることにした。ところがどっこい、抜け出せなくなった。1話目の冒頭20分間だけで「傑作」が確定される。

幼い子ども2人と列車に乗る父親らしき男性。停車したホームで、ある異変に気付く。リラックスする乗客と違い、彼の視点は常に違うところにあるようだ。一部の乗務員が車内で慌しく動く。その状況に男は反応、乗客に見つからない場所で、乗務員に自身が非番の警察官であることを告げる。男が察知した爆破テロの可能性が、現実化しようとする。二重のトラップが仕掛けられ、走る列車内で生死を分かつギリギリの攻防が繰り広げられる。極限状態に置かれたキャラクターたちの鼓動が伝染する。あまりの緊迫感に体が硬直する。



主人公の男は勇敢だが、スーパーマンにあらず。死の危険を目の前にして、恐怖することを隠さない。その表情の裏側に家族への強い愛情や、弱き者に対する良心が透けて見える。生身の人間を描く誠実さと、的確な心理描写を感じ取る。緊張感が漲る駆け引きのなかで、主人公が持つ知識とスキルが発揮される。冒頭20分間のシーンで、主人公の個性が雄弁に語られ、作品の完成度が約束される。

その後、主人公はこの事件の功績が認められ、女性内務大臣の警護任務に昇格する。しかし、それは後に続く巨大な陰謀との戦いに身を投じるきっかけになってしまう。

1話目のスタートダッシュから、以降、6話目の最終話まで、スピードを緩めることなく加速したままフィニッシュ。冒頭で感じた本作への信頼は最期まで裏切られることはなかった。

回を追うごとに展開はスケールアップ。冒頭に回帰するようなクライマックスが秀逸で、緊迫感も最大化する。「要人警護」という役割から見た景色や、警護のプロたち仕事ぶりが細かく描かれており、冷静沈着に職務を全うする姿がシンプルにカッコいい。それぞれのキャラクターの個性が丁寧に描かれるため、物語にすっかり感情移入する。視聴者の余白を読み取る力を信じた演出が鋭く、無駄な描写の省略がドラマにスピードを与える。



脚本は予想を凌駕する展開を用意する。なかでも印象に残ったのは2点。1つは、映画やドラマで「正義」として描かれることの多いイギリスの諜報機関「MI-5」だが、その独立性に着目した仮説が面白い。もう1つは、イスラム教に持つ社会的先入観を突いた展開だ。後者については、現実世界におけるテロの背景として別の恐怖を感じたりした。

そして、欠かすことのできないキャラクターの魅力だ。

まずは何といっても、主演のリチャード・マッデンだ。主人公はアフガンの戦場で地獄を体験。アフガンでの経験が彼の心身の屈強さを育んだが、PTSDという大きな傷跡を残した。危険な職務をクールに忠実に遂行する反面、プライベートでは妻と子供と別居中という危機的状況にあり孤独を抱える。凄腕の警護職人であり、闇を抱える主人公の複雑な個性をマッデンが見事に体現する。感情のダイナミズムをこれほどナチュラルに演じられる俳優はそういないはず。凄まじい引力であり、GOTでのパフォーマンスから想像するより彼はずっと演技派の俳優だった。



主人公の上司がもれなく女性という点も面白い。女性の社会進出が進んでいる欧州ならでは。彼が警護する内務大臣が、非常にカッコよくて素敵。頭がキレ、剛腕な政治運営は周りに多くの敵を作る。主人公と内務大臣の変化する関係性が本作の大きな鍵となる。また、彼が所属する警察組織で対テロの指揮権を持つ女性ボスも魅力的。細身で猫背で、どこか虚ろな目線。内務大臣と対立する場面も多く、感情的な内務大臣に対して、彼女は一見クールだがかなりの強気。語尾を伸ばすイギリスなまりが耳心地が良く堪らない。2人とも高身長であり、リチャード・マッデンの迫力に負けない存在感だ。



目上の上司に対する言葉遣い。相手が男性の場合はお馴染みの「イエスサー」だが、本作の場合、相手が女性なので「イエスマム」になる。なので主人公は「イエスマム」を劇中何度も連発する。「マム」は、空手でいう「押忍」に近く、何でも「マム」で通じるようだ。「わかりました」も「マム」だし、「失礼します」も「マム」だ。リチャード・マッデンが発する「マム」の発音にハマり、いつか自分も使ってみたいと思った。

リチャード・マッデン演じる主人公のデイビッド・バッドの活躍を再び見たいと続編を望む反面、綺麗な結末で幕を閉じたので、限定シリーズとして終わったとしても納得だ。

【90点】
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