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から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

インサイド・ヘッド 【感想】

2015-07-24 09:00:00 | 映画


大好きなピクサー映画が帰ってきた。傑作。
観る者のイマジネーションを凌駕する脚本と演出はピクサー映画の真骨頂。誰が観てもわかりやすいのに、物語の真意はとても深い。そして予想だにしないエモーショナルな展開に思わず感涙。これがピクサーなのだ。

物語の主人公は「ヨロコビ」「イカリ」「ムカムカ」「ビビリ」「カナシミ」の5つの感情たちだ。彼らの宿主、少女ライリーの生誕から感情の芽生えと共に、ライリーの脳内にある「司令室」に登場する。彼らの存在はライリーにとって守護天使のようなもので、彼女を幸せにするために日々奔走する。幸せに一番近い感情「ヨロコビ」がリーダー的な存在であり、他4人の感情たちを統率する。「ここはどうすべきか」「ここは私の出番だ」と議論を交わしながら、ライリーが最善の選択をするように導いていく。

家族や友人との対人関係のなかで、ヨロコビだけでなく、他の感情たちが力を発揮するシーンも多く、その駆け引きがコミカルで楽しい。しかし、その中で唯一お荷物な感情がある。それは、カナシミだ。カナシミが何かしでかすと、事態は悪転するばかりだ。カナシミもライリーの幸せを想っているのだが、どうしようもない。ヨロコビがカナシミをライリーから遠ざけようとするのは必然だ。そんな中、ある日事件が起きる。司令室での事故により、ヨロコビとカナシミが司令室の外に放り出されてしまうのだ。ここから物語は、両極の個性を持つヨロコビとカナシミによる壮大な冒険活劇に変わる。ヨロコビとカナシミが指令室からいなくなったライリーの感情は崩れ始める。一刻も早く司令室に戻らなければならない。

彼らが放り出され、冒険の舞台となる記憶の世界の作り込みが見事だ。人が成長し、個性を育む糧となるのは「思い出」だ。その思い出は、そのときの感情と共にあり、記憶として大量にストックされている。その記憶を封じ込めた玉が感情の色とともに堆く積まれており、そのカラフルでポップな背景が目に鮮やかで楽しい。また、ライリーの個性を形成する「おふざけの島」や「友情の島」、ライリーの脳内にある「夢工場」「潜在意識の世界」「想像の世界」など、様々なゾーンがまるでテーマパークのように点在していて、彼らの行く手で様々なイベントを起こす。その1つ1つが抜群のユーモアをもって描かれていると共に、俯瞰して観ると、それらが実際の心理行動として科学的に計算されたものであることに気づき、驚かされる。「なるほど~そう描くのか~」と感心しきり。

5つの感情たち、そして、彼らのほかに記憶の世界で出会うキャラクターの設定が素晴らしい。とりわけ物語の中心となる、ヨロコビとカナシミが愛すべきキャラとして作られているのが大きい。常に前向きでハイテンションなヨロコビのマシンガントークに、画面を縦横無尽に走り回る活発さと、常に後ろ向きですぐに思い悩み、自責の念のあまりすぐに行動が停滞してしまうカナシミとの、コンビネーションが最高に可笑しい。個々の個性が魅力的であるばかりでなく、それらが有機的に繋がり合い、リアルなライリーの生き様に呼応しながら、物語の展開を動かす歯車になっているのが凄い。アニメーションの可能性を最大限に活かし、比類なき想像力をもって、クライマックスへのボルテージを一気上げるダイナミズムにも圧倒された。この映画の完成度を観る限り、全盛期のピクサー映画のレベルに戻ったと断言できる。

ブーイングすることが多い、ディズニー映画の声優のタレント起用には珍しく、本作でヨロコビとカナシミを演じた、竹内結子と大竹しのぶの好演が素晴らしい。ズングリとした体型のカナシミが可愛いので、フィギュアが発売されたら速攻購入したい。

物語のハイライトは、お荷物とされたカナシミの本当の役割が明らかになるプロセスだろう。このシークエンスも確かに素晴らしいのだが、それ以上に胸に刺さったのは、記憶の「忘却」である。多くの思い出と感情たちによって今の自分がいるわけのだが、知らぬうちに置き去りにし、消去している自分がいることに気づく。それは当時の自分にとっての大切な宝物だったはずだ。劇中、ヨロコビたちが絶体絶命に危機に瀕し、その脱出のためにとられた決断を目撃し、過去の多く思い出たちが一気に蘇ってきた。そして知らぬうちに頬が濡れていた。

監督は「モンスターズ・インク」と「カールじいさん~」のピート・ドクター。両作で感じた描き方の特徴が本作でも良く出ており、素晴らしい傑作に仕上がった。本作をもってすれば「カールじいさん~」以来の、アニメ映画としてオスカー作品賞候補も十分ありえるのではないかと思う。

【90点】

最後に、本編にはまったく関係ないのだが、本作の主題歌だという、ドリカムのPVを冒頭に流すのは全くセンスがない。本作の艶消しもいいところで、そこで流れる映像も本作のテーマに無関係であり、ただただ気恥ずかしく(気持ち悪く)、ずっと目を伏せていた。

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