2017年初の私的ヒット。全く期待していなかったものの、非常に好きなタイプの映画。多くの伏線回収によりパズルのピースがもハマっていく気持ち良さあり。クレバーかつ厳ついアクションは、最近だと「ジョン・ウィック」とタイマンを張れそうだ。そして何といっても、主人公のキャラが立ちまくっていて面白い。主人公演じるベン・アフレックの久々のハマり役。ベンアフ、めちゃくちゃ可愛いじゃないか(笑)。続編ではなくシリーズ化を強く希望。
表の顔は田舎で小さな事務所を構える会計士、裏の顔は犯罪社会で名を轟かす闇の会計士という2つの顔を持つ男が、巨大組織の陰謀に巻き込まれるという話。監督は「ウォーリアー」のギャヴィン・オコナー。「ウォーリアー」に通じるテーマが潜んでおり、ツッコミどころはあるけれど、思わずグッときてしまった。こういうのにホント弱いな~。
物語は、主人公の少年期の記憶から始まる。高度な自閉症により、人とまともにコミュニケーションがとれなかった子ども時代だった。しかし、天才的な頭脳をもっていて、絵柄のないパズルを猛スピードで完成させてしまう。自閉症の人が飛び抜けた能力を持つという話は、ダスティン・ホフマンの「レインマン」を思い出させる。自閉症の人によく見られる能力なのだろうか。その後、主人公の少年時代から現在に場面が移り変わり、自閉症だった少年はオジさんになっていて会計士の仕事をしている。
彼の会計事務所に相談に来た老夫婦とのやりとりを見ていると、一見、過去の自閉症は完治したように見えるが、やや落ち着きのない手の動きからは、自制によって症状をコントロールしていることがわかる。自閉症である彼には他人を拒む様子はなく、むしろ他人との接触を望んでいるように思える。老夫婦に対するアドバイスも、不愛想ながらとても親身であり、彼らの農場にもプライベートで遊びに行っている。この捉えどころのない個性に次第に魅かれていく。
事件の発端となるのが、「表」の仕事として彼が請け負った大企業の不正会計の原因究明だ。電子化されていない15年分の複雑で膨大な資料を読み込む作業から始まるのだが、彼が超人的な能力を発揮する。少年時代からのルーティンである、両手に「フッフッ」と息を吹きかける仕草から始まり(これが可愛い)、一気に大量の数字を平らげ、部屋中に暗算した数字を書き詰めていく。この怒涛のシーンが編集の美技も手伝って痛快だ。
その仕事で知り合った女子とランチをするシーンが出てくる。のぼっとした熊さん体型に、たすき掛けのショルダーバック。マイ弁当と、大きめの水筒をもって食事する姿は、まるで大きな子どものようだ。女子との会話に慣れていないせいか、一生懸命、話を繋げようとする。その後の展開で、彼のトンデモない戦闘能力が明らかになるが、激しい肉弾戦を制したあとでさえ、救出された老夫婦にニコっと笑って手を振るシーンが堪らない。アナ・ケンドリックス演じる女子とのプラトニックなロマンスも微笑ましい。頭は異常にキレるが、見た目はドン臭く、人とのコミュニケーションに一生懸命。そしてめちゃくちゃ強い。眼差しはどこか憂いを含んでいて常にクール。まさかの「ベンアフ萌え」な映画だった。
主人公の個性にすっかり魅了されたが、本作のメインディッシュはおそらくアクションだろう。正体のわからないヒットマンが主人公とその周りの人たちに襲いかかる。非力なインテリ会計士と思いきや、あっという間に返り討ちにしてしまう。1人で何人もの悪党をなぎ倒すアクションは最近よく見るパターンだが、インドネシアの武術(シラット?)を取り入れた格戦アクションと、俊敏には見えない重量感のある体型とのギャップがアクションを際立たせる。
主人公の活躍と同時並行で描かれるのは、主人公の正体と、その個性が形成された背景を探るミステリーだ。なぜ自閉症を自制できるのか、そもそも自閉症になった背景に何があったのか、裏社会の顔をどのようにして隠しているのか、そこで得た利益の目的は何か、類まれなる戦闘能力はいかにして身につけたのか。。。等々。他にも、彼をサポートする正体不明の助手、大人になって一切登場しなくなった弟の存在、トレーラーに置かれた高級絵画の数々、大きく凹んだ水筒など、多くの伏線が張られているが、エンディングまでにすっきり回収されるのが快感だ。少し残念なのはそれらの説明(回想)シーンが長尺過ぎるため、物語のテンポを淀ませたことだ。もう少しパーツを削っても良かったかもしれない。
クライマックスの展開は予測できた。しかし、その意外性よりもキャラクターのドラマがしっかり感じられたことが大きい。主人公の敵役として登場する、 ジョン・バーンサルの巧さもあって、「そんなコトわかってたろ!?」というツッコミも鳴りを潜め、普通に感動してしまった。
結末は、続編が作れる切り上げ方で終わる。今後、いかようにでも面白い物語が作れそうだ。元相方(?)のマット・デイモンが「ジェイソン・ボーン」シリーズで活躍したように、ベン・アフレックも遅咲きながら、本作の「クリスチャン・ウルフ」によってその存在感を示して欲しい。体型を絞ってはダメで、今のままのぽってり体型を維持してほしい。
【75点】
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