
当時、サブカル男子の好物として象徴的な映画だった「トレイン・スポッティング」。自分はリアルタイムから少しズレているが、映画と音楽の密着性に初めて触れ、映画の新たな楽しみ方に目覚めた、とても思い出深い映画だ。その20年ぶりの続編というだけで感涙モノ。製作陣、キャストも変わらなければ、映画の内容もほとんど変わらなかった(笑)。だけど、それで十分。前作ファンに的を絞り、いちげんさん御断りな脚本が潔い。あれから20年、自分も年をとったな。
前作で仲間たちを裏切り、国外逃亡したレントンが、20年ぶりに故郷スコットランドで戻ってきたこときっかけに起きる騒動を描く。
本作を見る前に、学生時代に購入した前作のDVDを見返した。ヤク漬の退廃的なキャラクターたちをコメディタッチでイジり、スタイリッシュな映像と音楽で紡いた映画だ。久しぶりに見たが、当時、あれほど強烈なインパクトを受けていたのに、物語自体は何てことのない内容だった。いろんな映画を見るようになった今の自分と、知らないことが多かった昔の自分とは明らかに違うのだ。当時、本作を監督したダニー・ボイルがオスカー監督になるとは思わなかったし、主演のユアン・マクレガーがこれほどハリウッドで活躍するとも思わなかった。20年という時間経過に想いを巡らす。
高校時代、地元から都内の高校に通学するようになった。そして、地元の友人とは全く異なる人種の同級生と知り合った。音楽を好み、映画を好むサブカルな人だ。その友人とジーンズショップに立ち寄った際に、彼が店内のポスターを見て「ユアン・マクレガーって、やっぱカッコイイな~」と話してきた。「誰それ?」と聞いてみると、「トレイン・スポッティングって映画、知らないの?」と聞き返してきた。
実際に映画を見たのは大学生に入ってからで、本作で登場するキャラクターと同様に、自身の青春の只中にあった映画だった。彼らのほうが自分よりも年上であるが、本作での彼らとの再会は同窓会に近い興奮があり、続編製作のニュースを聞いてから、日本での公開を待ち望んでいた。
レントン演じるユアン・マクレガーは、リアルタイムで映画業界での活躍を見ているが、久しぶりの坊主頭が懐かしい。今では優等生キャラのイメージも強いが、あの追いかけっこシーンにおける不敵な笑みが、今回も見られてテンションが上がった。お人良しだが重度の薬物中毒者であったスパッドは、頭頂部がちゃんと禿げていて4人のなかで最も加齢を感じさせる。20年経った今でも薬物から抜け出せない。ちなみに今回も汚物まみれだ(笑)。「4000ポンドも俺に渡したらダメじゃないか!」が可笑しくも切ない。色男のシックボーイは、相変わらずアコギな男で金を稼ぐために違法な仕事に手を染める。若いガールフレンドを持つあたりも彼らしい年のとり方だ。喧嘩中毒者でサイコなベグビーは、昔あんなに細かったのに今はしっかり中年体型だ。あり余る暴力欲は変わらず、それが原因で刑務所からいまだに抜け出せない。旺盛な性欲も変わらないが、体の機能は衰えているため、やむなくバイアグラに飛び付く。レントンと不純異性交遊に走ったダイアンは立派な弁護士となり、彼女だけまともな大人になっている。「あのコ、若すぎるんじゃない?」にニヤリ。あの頃のあなたもそうでした。
4人のなかで故郷を離れたレントンだけがまともな仕事についていたが、映画では、それでも変わらないキャラクターとして描く。40を超えた良いオッサンたちは、何も変わらないダメ人間だったという話だ。描かれる騒動も、4人のなかで完結するというのも前作のままだ。フラッシュバックのように時折差し込まれる、前作シーンとのシンクロが絶妙で泣けてくる。前作に依存している映画ともいえるが、20年後の後日譚としては非常に説得力のある話だし、前作ファンには堪らない作りになっている。ただ、本作の予告編があまりにも良くできていたため、その期待値は超えなかった。ダニー・ボイルも丸くなったかも。もう少しエッジを効かせた映像で楽しませてほしかった。本作でも様々な音楽が効果的に使われるが、やはり前作の「Born Slippy」の破壊力には遠く及ばず。
物足りないことも多かったが、この続編企画を実現させてくれたことに感謝。
20年も経った。もっと自分もちゃんとした大人にならねば。
【70点】

※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます