新作DVD短評。
アクト・オブ・キリング 【60点】
劇場公開を逃した1本。う~ん、スルーして正解だったかも。賞レースを総なめにした期待はやや肩透かし。1960年代、インドネシアで起こった100万人の一般人が虐殺された事件。その加害者に実際に擬似再現をしてもらって、その様子をカメラに収めたドキュメンタリー。演出のないドキュメンタリーはつまらないと思うが、本作の演出は加害者たちを操作しているようにも見えて、彼らの証言の迫力が薄まった。明らかに笑いを取りにいったシュールなシーンはそこそこ面白いが、必要だったか。また、これは意図されたものだと思うが「どう殺したか」「それについて現在どう思うか」に焦点が絞られている。「共産主義者だから」という思想の違いだけで虐殺に踏み切った心理的背景が興味深いのに、それがすっ飛ばされているのが面白くない。知らなかった史実を知れたことは収穫だ。
メアリーと秘密の王国 【65点】
10月にイオンシネマ限定で公開されたばかりだが、すぐにレンタル開始。ほぼDVDスルーに近いタイトルだ。森を通りすがった女子が、森の小人たち(妖精?)と冒険するアニメ。まーとにかく、映像が眩しいほどに綺麗だ。新緑を中心に、パステルカラーに蛍光色を混ぜたような色彩に眼福感あり。昨今のアニメ技術の進化か、キャラクターの質感も異常に滑らかで凄い。バトルを中心に描かれるアクションも躍動感たっぷりで楽しい。それらの映像を観るだけでも十分な価値があるが、期待値ほどの高揚感は得られなかった。キャラの作りこみが弱く、展開の動機も弱い。明らかなドラマ不足は脚本の弱さか。人間界と森の世界が容易に繋がるラストも味気ない。そもそも、敵側の軍団の正体は何だったのだろう。。。説明と想像の境界がややちぐはぐ。アメリカでの興行、評価ともに伸び悩んだ理由が何となくわかるような。
エヴァの告白 【65点】
1920年代、戦火のポーランドを追われ、アメリカに逃れてきた姉妹を描く。主人公の姉の生き様にフォーカスした骨太な人間ドラマを勝手にイメージしていたが、中身は昼メロよろしくな愛憎劇だった。安く端的にいえば「美人は得する」で、主人公の美貌が男たちを魅了し、様々な恩恵を被るといった内容だった。しかしながら、映画の余韻が象徴するように陳腐なドラマにはならず。それは主要登場人物を演じた、マリオン・コティヤール、ホアキン・フェニックス、ジェレミー・レナーのキャスティングによるところが大きい。この3人は何を演じさせても間違いがないのか。特に主人公に惚れ、恋の盲目となった男を演じたホアキン・フェニックスの悲哀が味わい深い。