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『朝鮮半島の歴史: 政争と外患の六百年 (新潮選書)』 新城道彦

2024-06-15 23:28:00 | Books
14世紀終わりの李成桂による朝鮮王朝創始から、20世紀の朝鮮戦争までを扱った朝鮮通史。

日本の中等教育における「世界史」で「朝鮮」が採りあげられるのはそれこそ朝鮮戦争くらいで、「日本史」においても秀吉の朝鮮出兵、江戸時代の朝鮮通信使、明治期の征韓論や韓国併合などが部分的に登場するくらいだろう。それ故、このように朝鮮半島を主体にして体系的に歴史を外観するのは新鮮な知的体験ではあった。

本著から受ける印象は、「おわりに」において著者が自ら記している以下の引用部が的確に言い当てている。

(以下引用)
朝鮮半島は、まるで二匹の蛇が絡み付くケーリュケイオン(ギリシア神話の神ヘルメスが持つ杖)のように、政争と外患が互いに引き寄せ合って螺旋構造を作り出し、きつく締め付けながら歴史を紡いできたように見える。
(引用ここまで)

まさにサブタイトル通り「政争と外患の六百年」なのであり、それは21世紀の今にも通じていて、この先も永遠に続きそうに思えてくる。

まずは「政争」の側面。どの時代を切り取っても、権力闘争の繰り返し。政敵を徹底的に殲滅し、容赦のない残虐な粛清のオンパレードで、読んでいて嫌になってくる。これを読むと、今の北朝鮮・金正恩王朝の残虐性や、政権交代の度に前大統領が訴追され失脚させられる韓国の不毛な政治慣行が然もありなんと思えてくる。

そして、おそらくそんな「政争」の要因でもあり帰結でもあるのが「外患」。大陸の諸民族列強と日本列島に囲まれた地理条件ゆえに悲劇的なポジションから逃れられない地政学的運命には同情を禁じ得ない。
成立当初から明の属国としてのポジションを自ら引き受けて始まった朝鮮王朝。明が清に滅ぼされた後は宗主国を清に替え、日清戦争後の下関条約でようやく独立帝国となるが、10年余りで日本が保護国化した後に併合。第二次大戦終戦により日本の植民地統治は終わるが、米ソ対立と朝鮮国内の権力闘争から南北分裂する形で独立国家を樹立、朝鮮戦争を経て休戦状態のまま分断国家は固定化されるとともに南北対立は深刻の度を増している。

この通史の範囲において、日本は二度朝鮮半島に浸出している。一度目は豊臣秀吉の朝鮮出兵、二度目は明治期の保護国化からの併合。
秀吉の出兵は、全国統一の余勢を駆っての領土的野心をもってのものとされているが、明治政府の浸出は、海を隔てて接する半島を緩衝地帯とすべく近代化した友好国家を作ろうとした安全保障的意図が強かったものと認識している。21世紀の今となっては、韓国がそのポジションを引き受ける形となっていると言えるだろう。それはつまり韓国が東アジアのウクライナとなるリスクを孕んでいることなのかもしれない。

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