日経新聞朝刊の「やさしい経済学」で、先般ピーター・ダイヤモンド氏ら3名がノーベル経済学賞を受賞した「サーチ理論」についての解説が、現在連載されています(筆者:今井亮一・九州大学准教授)。
なかなか興味深いトピックが多いので、以下メモ。
【サーチの外部性】
ある求職者が就職活動をすることは、他の求職者が就職できる確率を低下させる点で、他の求職者に対して負の外部性を発生させる。
一方で、ある求職者が就職活動することで、企業はより多くの候補の中から採用対象を選択できるようになるので、企業に対して正の外部性を発生させる。
いずれの外部性も、就職活動する個人の行動に影響は与えないが、経済全体としては正/負の外部性が発生し、お互いが釣り合って打ち消し合う状態が社会にとって最も効率的・最適と考えられる。
【最適な労働分配率】
労働分配率(企業と労働者の間の分配比率)が高すぎると、企業は新卒採用を抑え、正社員採用が減ってしまう。
一方で労働分配率が低いと、就職口は広がるが、採用されても低賃金で生活が成り立たないケースも出てくる。
労働分配率は高すぎても低すぎても最適にはならず、労働分配率と有効求人倍率とがある一定の数学的関係(ホシオス条件)を満たす関係になったときに社会的厚生は最大になる。
【失業率と生産性のトレードオフ】
ホシオス条件を考慮すると、失業率を下げる政策が一概に社会的に望ましいとは言えない。
即ち、失業率が(リーマンショック後の日本のように)相対的に高くないとしても、実は生産性の高い仕事の求人は低水準で、労働分配率が低く生産性が低い仕事ばかりが供給されているからかもしれないからである。
例えば小売業の場合、すべての店が営業時間を短くすれば、客はその時間内に購買するしかなくなるので、生産性は上がる。
日本の小売業は欧米に比べて営業時間が長いが、それは実は生産性を下げている面がある。
営業時間が長い要因として最低賃金が低い点が挙げられる(店を開けておくコストが低い)。
最低賃金を上げると失業率は上がるが、営業時間は短くなるので生産性は上がる。
つまり、失業率と生産性はトレードオフの関係にある。
賃金規制や雇用規制は失業率を上げることになるという批判がある一方、安定した雇用や生活するに十分な賃金が保障されないまま失業率が低く保たれても意味がないというのも分かる。
結局どっちも正解じゃなくて、社会全体で最適なのはどの水準なのかという問題なんでしょう。
ただ、仮にマクロ的に最適状態が実現されてとしても、ミクロ的には公平性や流動性が実現できているとは限らず、なかなか難しい話だな、と。
なかなか興味深いトピックが多いので、以下メモ。
【サーチの外部性】
ある求職者が就職活動をすることは、他の求職者が就職できる確率を低下させる点で、他の求職者に対して負の外部性を発生させる。
一方で、ある求職者が就職活動することで、企業はより多くの候補の中から採用対象を選択できるようになるので、企業に対して正の外部性を発生させる。
いずれの外部性も、就職活動する個人の行動に影響は与えないが、経済全体としては正/負の外部性が発生し、お互いが釣り合って打ち消し合う状態が社会にとって最も効率的・最適と考えられる。
【最適な労働分配率】
労働分配率(企業と労働者の間の分配比率)が高すぎると、企業は新卒採用を抑え、正社員採用が減ってしまう。
一方で労働分配率が低いと、就職口は広がるが、採用されても低賃金で生活が成り立たないケースも出てくる。
労働分配率は高すぎても低すぎても最適にはならず、労働分配率と有効求人倍率とがある一定の数学的関係(ホシオス条件)を満たす関係になったときに社会的厚生は最大になる。
【失業率と生産性のトレードオフ】
ホシオス条件を考慮すると、失業率を下げる政策が一概に社会的に望ましいとは言えない。
即ち、失業率が(リーマンショック後の日本のように)相対的に高くないとしても、実は生産性の高い仕事の求人は低水準で、労働分配率が低く生産性が低い仕事ばかりが供給されているからかもしれないからである。
例えば小売業の場合、すべての店が営業時間を短くすれば、客はその時間内に購買するしかなくなるので、生産性は上がる。
日本の小売業は欧米に比べて営業時間が長いが、それは実は生産性を下げている面がある。
営業時間が長い要因として最低賃金が低い点が挙げられる(店を開けておくコストが低い)。
最低賃金を上げると失業率は上がるが、営業時間は短くなるので生産性は上がる。
つまり、失業率と生産性はトレードオフの関係にある。
賃金規制や雇用規制は失業率を上げることになるという批判がある一方、安定した雇用や生活するに十分な賃金が保障されないまま失業率が低く保たれても意味がないというのも分かる。
結局どっちも正解じゃなくて、社会全体で最適なのはどの水準なのかという問題なんでしょう。
ただ、仮にマクロ的に最適状態が実現されてとしても、ミクロ的には公平性や流動性が実現できているとは限らず、なかなか難しい話だな、と。