スプーク・カントリー (海外SFノヴェルズ)ウィリアム・ギブスン早川書房このアイテムの詳細を見る |
ウィリアム・ギブスンの名前も知らなかったくらい、SF小説には門外漢の自分ですが、たまには普段読まないジャンルでも…と思い手を出してみました。
舞台になっているのは現代の現実世界そのものだし、登場人物も多少変わったプロフィールの持ち主であってもごく普通の生身の人間だし、登場する技術も現実の技術水準からかけ離れたものは出てこない。
それでもやはり、これは「SF」なんだな、という印象は受ける。
その印象は、ディテール描写に由来しているのだろう。
モノにしてもセリフにしても、そのディテールに配慮された表現は、普通の小説とは違っている。
特に情景描写が印象的。
ホテルの部屋やバーにしても、車やヘリや飛行機などの乗り物にしても、或いは、ロスアンゼルス、ニューヨーク、そしてヴァンクーヴァーといった都市の風景にしても、訳文で読んでいることもあってその情景を思い浮かべ切れないところがあるにしても、その独特の表現が、どこか異世界感を漂わせる。
まったく関わり合いを持たない3人の主要登場人物が、それぞれに見えない力に巻き込まれていく様子を、短い章をスピーディーに切り返しながら展開しながら進めていく手法も、読む者を惹きつける力があるのだけれど、一方で魅力ある登場人物たちが最終的に絡んでいくあたりが案外あっさりしていて、やや肩透かしをくらった感も。
一言でいえば、そういう小説ではない、ということなんだろうけど。
何となく最後まで小説世界に入り込みきれなかった気もするけど、楽しんで読むことはできました。