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昨年は「三四郎」「それから」「門」の三部作を読んだが、今年は漱石後期の名作「こころ」を読んでみた。
おそらく部分的には読んだことがあった(教科書?)ような気がするが、全体を読了するのは初めて。
いわゆる「修善寺大患」を経た後の作品であり、かなり内省的な印象は受ける。
が、トーンが暗いというふうにも感じない。
それは、前半部における「先生」と「私」の会話の噛み合わなさあたりから醸し出される、漱石独特なそこはかとないユーモラスな雰囲気が影響しているからかもしれない。
それとは別に、この小説を魅力的にしている大きな要因は、後半部の「先生」の長い長い独白(手紙)での回想に登場する「お嬢さん」の魅力にあるのではないか、という気がする。
「お嬢さん」が魅力的に描かれる(もちろんそれは「先生」の主観を通して、という形なのだが)ことにより、「先生」と「K」との三角関係に説得力が生まれる。
彼女の魅力は「三四郎」の美禰子にも通じるものがあり、女性を魅力的に描くことにかけて、漱石は本当に天才的だと思われる。
そう言えば「坊ちゃん」のマドンナはどんなだっけ、と思ったが全く憶えていないので今度読み返してみよう。