一年で一番寒いこの時期に、しかも土曜日にディズニー・シーに行ってきました。
息子は帰国して以来ディズニー・シーが大好きで、もっと小さい頃は連れていくと
「なんだか今、夢の中にいるみたいなんだよー」と、
ディズニー関係者が聴いたら泣いて喜びそうなことを呟いていたくらいのリピーターです。
なぜか本家のディズニーランドには、学校の遠足で行って楽しかったくらいの感慨しかなく、
相変わらず「ムードがあって食べ物がおいしい」シ―のファン。
冒頭画像ですが、一年前、TOが知り合いの株主の方から優待チケットを貰って来ました。
喜んでいつ行こうかしら、などと言っていたら、東日本大震災発生。
はっきりいってディズニーどころではない期間がずっと続いていたし、そもそもご承知のように
ディズニーリゾート自体が営業をしていない時期がしばらくあったわけで、
デスクの片隅にあるこのチケットを眺めては
「これを使う日は、いつか来るのだろうか・・・・・・」
と思わずため息をつくような毎日でした。
シーにいくとき、うちはわたしと息子の二人、学校が休みの平日の比較的悪天候の日を選んで、
少しでも混雑を避けます。
秋頃、ようやくディズニーに楽しみにいけるような日々が帰って来たように思われても、
その機会をいろいろな事情で逸してしまい、いよいよ年が明けてあせり出しました。
使用期限は1月31日。
もしかしたら、震災で閉鎖していた間の期間を考慮した延長がないか、とHPを調べると、
そういう問い合わせは非常に多いものらしく
「震災もありましたが、それに関してはチケットの期間延長は行いません」
としっかりお断りがされているではありませんか。
息子の学校に平日休みの日はもうありません。
「土日に行くしかないのか・・・・・・」
あまりの寒さに先々週は行くのをあきらめ、これが最後の週末という先週土曜日、
死んだ気になって出かけました。
どれくらい死んだ気かというと、ロングのダウンコートにダウンブーツ、
上下薄物三枚ずつの重ね着。
表裏、脚の裏、いたるところ、まるで魔よけのお札のように貼られた使い捨てカイロ。
念のために追加のカイロを数枚持参し、さらにマスク、サングラス着用。
こんなとんでもない恰好で、いざ出陣。
ところが、身支度に時間がかかりすぎて、到着したのが11時。
うちからディズニーリゾートまでは渋滞しなければ3~40分くらいなんですが・・・。
そのせいで、近い駐車場はもう満車。
第二駐車場に停めたので、こんな遠くに火山が・・・orz
まるで千葉とは思えない駐車場からの眺め。
リゾート感を出すために、いたるところこのソテツ?が椰子の木のふりをして植わっています。
震災後、訪れる人が減って、おまけにこんなに寒いんだから、
きっと土曜日でも空いているだろう、そう考えたのですが、甘かった。
駐車場に置かれたお報せによると、当日チケットを買うのに、60分待ち。
すでに入場券を持っていなければ、ここで挫折するに違いないと確信するとともに、
長い一日になるであろうと覚悟を決めました。
今年はディズニー・シーが開園して10年。
もし何ごともなければ、さぞかし派手にイベントが行われていたのでしょう。
しかし、この日土曜日、やはり大勢の客が訪れ、「Be magical!」というテーマに合わせた
このようなモニュメントの前で長蛇の列を作っていました。
そう、日本にしか見られないこの行列。何かというと、ただ
前に立って写真を撮るために順番を待っている人々。
日本的な、実に日本的な現象であるとどれくらいの人が意識しているかはわかりません。
が、これ、少なくとも外国のテーマパークでは一度も見たことがない光景なんですよ。
こういうのとか、ミッキーやミニーと一緒に写真を撮るために何十分も並ぶとか、
そういうディズニーファンではないわたしと息子にとって、全く信じられないのですが、
震災で人出が落ちたと言われるこの日のディズニーシーでも、こういう人は一杯いました。
そして、どこに行ってももの凄い行列。
例えば、インディアナ・ジョーンズ「クリスタルスカルの魔宮」は、最大で2時間10分待ち。
ファストパス・チケットを取るのに数十分待ちという地獄のような状態で、
もう数十回は訪れているのに、祝日、ディズニーに行ったことのない我々は、驚くばかり。
うろうろしながら買い物したり、おやつを食べたり、ミスティック・リズムなどを観たり、
何もアトラクションに乗らずにお昼になってしまいました。
「中華でも食べますか」
いつもガラガラなはずのこのレストランも、表まで人がはみ出し、このような状態に。
いつも前を通るたびに、ディズニーのセールスマンの口先に乗せられ
この超不人気アトラクションのスポンサーになってしまったがゆえに、
その後それが原因で左遷されたに違いない日本通運の担当者の運命を心配していた、
「シンバッドの冒険」。
どんな激込みの日にも待たずに乗れるアトラクションとしての地位を確立していましたが、
改装後の評判も全く回復せず、ここ一年、閉鎖されています。
震災で、さらに一層今後再開の可能性は遠のいた・・・・のかもしれません。
ロスト・リバー・デルタには、ユカタン・ベースキャンプというレストランがあるのですが、
ここはインディアナ・ジョーンズ博士が発掘調査をしている、という設定のため、
このような発掘された骸骨さんが何体か転がっています。
皆、宝のツボを大事そうに抱えているのが泣けます。
写真を撮るのに列を作るのが日本人なら、こういうものにお金を投げるのも日本人。
最もお布施?の集まっていた人気骸骨。
二つのツボの中にたくさんのお金が入っています。
みんなここを狙って投げたわけですね。
どなたか、口の中にコイン投入することに成功した人がいました。
寒さにもかかわらず外で一時間もアトラクションを待つ人がたくさんいたこの日のシ―。
放射能の心配をして客が減っているかも、などという心配が馬鹿馬鹿しくなるほど、
いつも通りで、本当に嬉しくなったのですが、少し気になることもいくつかありました。
ミスティック・リズムの出演者、外国人の顔ぶれがガラッと変わっていたこと。
そして、昼、水上ステージで行われたショーです。
ミッキーがこの船で現れ、その他のメンバーも各ポイントに集合して、
みんなの前でダンスをする、というものなのですが、
他のメンバーが載ってくるのが、この、普段クルーズ用の船。
ポイントでは一生懸命キャラクターの皆さんがパフォーマンスをして、
盛り上がっているようでしたが、それを対岸から見ると、これ。
ただでさえ寒いのに、この寒々とした光景・・・・。
「ミシカの伝説」その前の「ポルト・パラディーソ」で、これでもかと水上スク―ターや凧、
花火を駆使し、あるいはデコラティブな船をいくつも繰り出して目を引いた昼間のショ―が、
いくら「バレンタイン用のテンポラリーなショウ」だからといって、
こんな寂しい演出になってしまって・・・・・・。
音楽はいわばディズニー色あふれる、やたら感動的なイモーショナルなもので、
さらに
これもディズニー特有のハイテンションで頑張る出演キャラクターたち。
この、遠くから見て分かる
「ディズニーと言えども苦しい台所事情と、それにも負けないスタッフ」
という図が、妙な感興を呼び起こし、しばらく眺めていたら
鼻の奥がつーんとなってきてしまいました。
ところで、ここのところディズニーに新しいウェーブが起こっているのをご存知でしょうか。
新キャラクターのダッフィーの台頭です。
ダッフィーってなんですか?という方、これですよこれ。
まあ要するにテディベアみたいなもんなんですが、これが何故か女子供に超人気。
キャラクターとしてではなくぬいぐるみとして人気に火が付き、これをパークで買い、
まるで赤ちゃんを抱くように愛おしげに抱いて歩く女子、それを目を細くして眺める彼氏、
という、ぬいぐるみが昔から大っきらいであったエリス中尉が、
「こんなことを男性に期待されても、困る」
と若い時ならキレそうな光景がパークのそちこちに展開しているわけですが、
これを売っているショップというのがどこも大変なことになっていて、
何とこの列、ダッフィーを売っているショップに入る順番を待っている人たち。
一組出ていけば、出口にいる係員が合図してもうひと組が入れるという仕組み。
この売店、その昔は自由に出入りできて、息子がアメリカから帰ってすぐ、
「たった一人で買い物をする、という経験をした」記念すべきお店だったのです。
お金を持たせ、値段を見ることを教え、
「ママは外で待っているから、お買い物してごらん」
と注意事項を言い聞かせ、店に送り込んだあの日。
息子は目をキラキラさせて「初めてのお買いもの」を楽しみ、
わたしは外でドキドキしながら待ったものです。
それが、こんな「ダッフィー専門店」になり下がってしまっていたとは・・・・・。
いや、別にいいんですが、少なくとも子供一人で入れるような状態ではなく、
みんな何となく殺気立ってすらいる様子なのが、何とも言えません。
そして、ダッフィーを購入するのも、数に制限があるようで(一人二匹までとか)、
買ったばかりのダッフィーをとなりのレストランに祀ってある上写真のダッフィーと並べて
写真を撮るのが、スタンダードでした。
決められたわけでもないのに、みんなやっているんですよ。
こんなところでも並んで写真を撮るのも皆一緒。
ダッフィー人気にあやかってこのキャラをフューチャーしたショウもできたようですが、
わたしと息子はこんなことを言い合っておりました。
「ダッフィーってさ・・・・悪いけどなんか胡散臭いよね」
「なんか、可愛いふりして実はすごい悪いこと企んでそうな」
「腹に一物持ってそうな」
「そうそう、みんな可愛いから騙されてるけど、実は悪の組織のボスだった、とか」
「あれ?こんな話、どこかで聴いたような・・・・・」
(二人同時に)
「トイ・ストーリー!」
ダッフィーとその関係者とファンの方、お気を悪くしたらすみませんでした<(_ _)>
夜のショウ、大好きだった「ブラヴィッシーモ」が終わったと聞いて愕然としたわたしたちでしたが、
震災の後から始まった新しいショウは、音楽、映像ともになかなかのものでした。
映像の使い方とストーリーが、アメリカ・アナハイムのディズニーのショウとほとんど一緒で、
ある意味ブラヴィッシーモの方がオリジナリティという点で優れているという気がしましたが、
それを抜きにしても、「腐ってもディズニー」の底力を感じる充実の出来栄えでありました。
元来、わたしはぬいぐるみや着ぐるみに全く感情移入できないたちの人間です。
これを「実在する」というのが前提の「ディズニー的なもの」に対し、
うっすらとした鬱陶しさすら感じて今日まで来ました。
全てが造り物の夢の国。そこに生きる「非実在のキャラクター」が理想の世界を構成する。
偽善的ですらあるこの「子供だまし」に、子供どころか大の大人たちすら夢中になり、
遠くから現れた着ぐるみのミッキーに向かって本気で手を振り、並んで写真を撮り、抱きつく。
こういう人間が実に多くいることを、信仰にのめり込む人たちを対岸から見るような、
一種理解しがたいものとして、ディズニーに行くたびに醒めた目で見てきたのです。
ところが。
国難とも言える震災を経て、まだ一年も経たないここ関東地方において、この日、
ディズニーシーには、それらを愛する人々と、夢を提供しようとする人々がいました。
以前と変わりなく、喜びに満ち、熱狂すらして。
変わりなく以前と同じことを続けられる力、ファンタジーという名の虚構に喝采できる心の余裕。
それは「頑張ろう」とか「絆」とかいう言葉以上に、日本人一人一人が、
どんな困難もそれを凌駕する「萌えという平常心」で乗り越えて行けそうな頼もしささえ感じさせ、
「ミッキーマウスに本気で手を振る人がこれだけいる限り、この国はまだまだ大丈夫」
と、妙に安心してしまったから、不思議です。
がんばれ、ディズニー・シー。