イスラーム勉強会ブログ

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預言者伝10

2010年10月09日 | 預言者伝関連

بسم الله الرحمن الرحيم

33.ウマル・イブン・アル=ハッターブの入信:

アッラーは、ウマルの入信によってイスラームとムスリムたちを強化し給いました。ウマルは威厳と力の持ち主であったため、預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)は彼の改宗がプラスとなるだろうと予測し、アッラーにその成就を祈っていたのでした。

ウマルの妹であるファーティマ・ビント・アル=ハッターブとその夫であるサイード・イブン・ザイドが、彼の改宗に関わりました。二人は、イスラームとムスリムたちに対するウマルの荒々しい態度を恐れていたため、自分たちの信仰を隠していました。そんな中、ハッバーブ・イブン・アル=アルトがファーティマの家へクルアーンを教えるために度々訪れていました。

その日ウマルは、剣を振り回しながら、預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)とその仲間たちのところへ向って出かけました。彼らがサファーのとある邸宅に集まっていると耳にしたためです。その途中ウマルは、同族アディーに属する、改宗していたナイーム・イブン・アブドゥッラーに出くわします。ナイームはウマルに、「どこに行くのだ?ウマル。」と尋ねると、ウマルは、「クライシュ族をバラバラにし、おれたちの教えを馬鹿にし、その上、神々を罵倒したムハンマドのところへ行き、彼を殺すのだ。」と答えました。

ナイームは続けます:「残念だな、ウマル!自分の家族を心配した方がいいのではないか?」ウマルは、「え!?おれの家族がどうかしたのか?」こう尋ねると、ナイームは、「婿であり君のいとこでもあるサイードと、君の妹のファーティマはイスラームに帰依している。彼らはムハンマドの教えに従っているのさ。まず彼らをどうにかしたらどうだ?」ナイームは言いました。

ウマルは怒りに震え、行き先を妹の家に変更しました。しかし彼女の家には、アッラーの言葉を記した一片を手にしたハッバーブが滞在しており、ちょうどターハー章をファーティマに読み聞かせているところでした。ウマルがやって来たのを聞き知った彼ら。ハッバーブはすかさず他の部屋に移動しました。しかしウマルはしっかりとハッバーブが何をかを読む声を聞いていたのでした。ウマルは家に入ったとたん、「あのよく分からん声は何だ?」と尋ねると、妹夫婦は、「私たちには何も聞こえません。」と答えました。ウマルは、「いや、そんなことないだろう。おまえ達がムハンマドの教えに入ったとおれは聞いて来たんだぞ」と怒鳴ります。

ウマルに叩かれるサイードをかばうために立ったファーティマにも、ウマルは暴力をふるい、流血させてしまいます。

打ちのめされたファーティマは、ウマルに言いました。:「そのとおり。私たちは帰依し、アッラーとその使徒を信仰しています。さあ、好きにしてください!」

ウマルは血を流している妹を見て、自分がしてしまったことを後悔しました。暴力の手を止めて彼は言います:「お前たちがさっき読んでいた言葉が記されている一片を見せてくれないか。ムハンマドがもたらしたというものを見てみたいんだ。」ウマルは読み書きが出来る人だったのです。兄に頼まれてもファーティマは、「渡したら、何かされるのではと心配です。」と拒否します。ウマルは、「いやいや、怖がらなくてもいい。」と言い、彼が信仰していた多神の名において誓いました。兄ウマルがこのように振舞ったのを見てファーティマは、兄の入信を望みました。「兄さん。あなたは多神信仰のために穢(けが)れています。この一片には清浄な者しか触れられないのです。」

ウマルは立ち上がり、沐浴を済ませました。その様子を確認したファーティマは、ウマルに、かの一片を手渡しました。その中にあるターハー章を読み始めたウマルは感激して言います。:「なんと美しい言葉だろうか!!そして何と尊いこと!!」

このやり取りに耳を澄ませていたハッバーブは、ウマルの面前に現れると、「ウマル!アッラーにかけて、私はアッラーがあなたを預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)の祈りの返答として特別な存在とし給うたと願いたい。実は昨日、預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)が、”アッラーよ、アブー・ジャハルかウマル・イブン・アル=ハッターブのどちらかでイスラームを強化し給え”と言っておられるのを聞いたばかりなのだ。ウマルよ、あなたが該当したのだぞ!」

そう聞いたウマルは言いました。:「ハッブーブ、ムハンマドのところへおれを連れて行ってくれ。彼の元でムスリムになろう。」ハッブーブは答えて、「彼は今、サファーのある邸宅に、教友たちとおられる。」

 

ウマルは剣を携えて、預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)と教友たちのもとへと向かいました。到着するなり戸を叩くウマル。彼の声を聞いた人たちの中の一人が恐る恐る戸の隙間から確認すると、剣を振りかざすウマルが目に入りました。すぐさま預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)のところに戻り、その恐ろしい様子を次の様に伝えました。:「アッラーの使徒様!ウマルが戸におります!なんと剣をかざしておりました。」共にいたハムザ・イブン・アブドゥルムッタリブが言います。:「中に通せばよかろう。もし善を求めた訪問なら、こちらも手を尽くそう。しかし悪を求めているなら、彼の剣で殺してやろう。」預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)は言われました。:「中に入れてやりなさい。」この言葉でウマルに中に通されました。

預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)は、自らウマルの元に向かいました。部屋で彼と顔を合わせると、預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)は、ウマルの締め帯の結び目をつかみ、ぐいと引っ張りました。「何をしにやって来たのかな?ウマルよ。アッラーにかけて、アッラーがあなたに雷でも落とし給わぬ限り、あなたは静かになりそうもない。」ウマルは答えました。:「アッラーの使徒様!私はアッラーとその使徒を信仰するためにやって来ました。そして使徒がアッラーの許からもたらされたものを信じるためにです。」

これを聞いた預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)は、歓喜のあまり、大きな声で「アッラーフ・アクバル!」と言われたため、家族や教友たちにウマルの入信の知らせが響き渡りました。

そしてウマルは、自身の改宗を公けに公表し、間もなくマッカの住民達に知れ渡りました。当然、彼も迫害の対象になりますが、果敢にも抵抗し続け、最終的に不信仰者たちは彼のことを諦めてしまいました。

 

(参考文献:①「預言者伝」、アブー・アルハサン・アリー・アルハサニー・アンナダウィー著、ダール・イブン・カスィール出版、P135~138)