イスラーム勉強会ブログ

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預言者伝8

2010年09月16日 | 預言者伝関連

بسم الله الرحمن الرحيم
24.クライシュによるアブー・バクルに対する迫害:
  アブー・バクルがある日、人々をアッラーとその使徒へと誘っていると、多神教徒たちが突然彼に襲いかかり、ひどく殴りました。ウトゥバ・イブン・ラビーアはサンダルでアブー・バクルの顔を叩きに叩き、鼻がどこにあるのか分からないくらいに顔を腫れさせてしまいました。
  タミーム族は死んだと思われたアブー・バクルを担ぎ運ぼうとしましたが、アブー・バクルは生きており、「アッラーの使徒様(平安と祝福あれ)はどうされているのか」と呟いたのでした。彼の傍にいた、信者のウンム・ジャミールは、預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)の容態を尋ねるアブー・バクルに対し、「あなた様のお母様がいらっしゃいますよ」と言いましたが、「母上については気にしなくて良い」と答えました。ウンム・ジャミールはアブー・バクルを安心させるため、預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)は「健やかでお元気である」と伝えました。しかしアブー・バクルは「私はアッラーの使徒を目にしに行くまでは、何も食べず、飲まない」と宣言しました。興奮していたアブー・バクルを人々は落ち着かせ、ウンム・ジャミールと彼の母親はよろける彼を預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)のところへ連れて行きました。その様子を見た預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)は激しくアブー・バクルに同情したのでした。そして預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)は、彼の母親のために祈り、彼女をイスラームへと誘い、彼女はイスラームに入ったのです。

25.預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)をどのように描写するか…クライシュの当惑:
  クライシュの人々は、これから預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)のことをどのように表明すればよいのか、彼や遠方から彼を目指してやって来る人たち、彼に耳を傾ける人たちの間でどのように立ち回ればよいのか大いに悩みました。そこで人々は(高齢で巡礼時期にやって来ていた)アル=ワリード・イブン・アル=ムギーラのもとに集まったのです。アル=ワリードは人々に言います:「クライシュの衆!今年も巡礼シーズンがやって来た。そのうち各アラブの使節団がお前たちにムハンマドのことを尋ねに来るだろう。彼らの耳にはもうすでにムハンマドの噂が届いているのだ。だからこそ彼に関する意見を一つにまとめなければならない。決して意見を異にし、我々同士で互いに嘘つき呼ばわりし合っていてはいけない。」このようにして長い議論が繰り広げられました。
  しかしアル=ワリードは人々が提示した意見に満足できず、それを批判したので、人々は「アル=ワリード殿。あなた様のご意見は何でしょうか?」と尋ねました。すると、「わしがムハンマドに関して言ってやるとよいと思う言葉は、彼は「魔法を操る魔法使い」で、魔法を使って父と息子、兄弟の間、夫婦の間を分かち、人を部族から離れさせる、と。」
  この意見を採択し、人々は解散したのでした。彼らは人通りの多いところに座り込み、巡礼のために人が多くなると、全ての通行人に、「ムハンマドには気を付けるように」と警告したのでした。

26.預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)に対するクライシュによる冷酷な加害:
  クライシュは様々な方法を使って、預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)に危害を加えました。彼との血縁関係を考慮することはなく、人間性の一線を越えてしまうことにも躊躇(ちゅうちょ)することはありませんでした。
  預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)がマスジドで、クライシュの人々が周りにいる中でサジダの姿勢に入ったところ、家畜の胎盤を手にしたウクバ・イブン・アビー・ムイートが現われました。そして彼は預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)の背の上に胎盤を投げつけたのです。すぐにその場にやって来たファーティマ(平安あれ)は父親の背からそれを取り、預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)と共にこのような醜行を働いた者をアッラーに呪ったのでした。

27.ハムザ・イブン・アブドゥルムッタリブの改宗:
  かつてサファーの丘にいた預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)の傍を通ったアブー・ジャハルが、彼に危害を加え罵倒したにもかかわらず、預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)は何も言わずにその場を立ち去ったことがありました。
  奴隷からこのことを聞いた、ハムザ・イブン・アブドゥルムッタリブは、狩猟から戻って間もないにも関わらず、弓を身につけ、アブー・ジャハルの許に向かいました。ハムザは当時、クライシュの中で最も勇敢で、一筋縄ではいかない青年でした。ハムザは預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)の身に起こった災難を知り、怒っていたのでした。マスジドの中で、人々に囲まれたアブー・ジャハルを見つけた途端、弓を持ち上げると、彼の頭を強く叩き言いました:「俺があのお方の教えに従い、彼が言うことと同じ言葉を言っているというのに、お前は彼を罵倒したというのか?」アブー・ジャハルは驚きのあまり、黙り込んでしまいました。イスラームに入ったハムザは、このようにしてクライシュの大きな脅威となったのです。

28.ウトゥバと預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)のやり取り:
  預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)の仲間がどんどん増えていくのを見ていたクライシュに、ウトゥバ・イブン・ラビーア(アブー・バクルをサンダルで強打した男)が現われました。何と、自らが預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)のところへ行って、いくつかの事柄を提示してみるというわけです。もしそのいくつかを受け入れれば、クライシュの不安を消せるのではないかと。このようにしてウトゥバは正式なクライシュの同意を得て、行動に移りました。
  ウトゥバは預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)の許に赴き、その傍に座りました。「兄弟よ!私が知るところによると、そなたは重大な知らせをそなたの民にもたらしたらしいですな。それでそなたは人々の集団を解き、彼らの多神と宗教を恥とし、先祖が迷っていたとした。まぁちょっと私の話を聞いてほしい。いくつか案を出すから考えてくれ。どれかを気に入るかもしれないだろう」こう言うと、預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)に話しかけました。
  預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)は言いました:「さあ、アブー・アル=ワリード。お話しください。私は聞いていますので。」
  ウトゥバは続けました:「兄弟よ!金欲しさでこのようなことをしているのなら、そなたのために私たちは財産を集めて、そなたを一番の金持ちにしよう。もし名声が欲しいのなら、そなたを我々の指導者にするし、そなたなしでは何も決められないようにしよう。権力が欲しいなら、そなたを我々の王にしよう。もしそなたに起こっていることがジンのせいで、自分では追い払えないのであれば、そなたのために医者を連れて来て、そなたが完治するために我々の資産を使おう」
  ウトゥバが話し終えると、預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)は「アブー・アル=ワリードよ、さてもう終えられたでしょうか。」と言いました。ウトゥバは、はい、と答えました。「では今度は、私の話をお聞き願いたい」と預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)は言いました。ウトゥバ:「どうぞ」
  預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)はクルアーンのフッスィラ章の幾節からサジダが求められるところまで(http://bit.ly/cfZVNU)を読みあげました。ウトゥバはじっくりとその読誦に耳を傾け、背後に回した両腕に重心をかけていました。預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)はサジダの部分を読み終えると、サジダしてウトゥバに言いました:「アブー・アル=ワリードよ、そのたは読誦を聞かれた。あとは好きにされるが良い」
  ウトゥバは立ち上がり、仲間の許に向かいました。彼を見た人々は交互に言いました:アッラーに誓って、アブー・アル=ワリードは出かけた時とまったく違う形相でやって来たじゃないか、と。ウトゥバが座り込むと人々は言いました:「何が君に起こったのだ?!」ウトゥバは答えます:「アッラーにかけて、実は耳にしたことのない言葉を聞いて来たのだ。それは詩ではないし、魔法でもないし、占いでもない。クライシュの衆!私の話を聞いてください。あの男がしていることは放置することだ。彼から身を引くのだ。」人々は答えます:「ムハンマドに魔法をかけられたのか。」「これは私の彼に関する意見に過ぎない。そなたたちは好きにするが良い」とウトゥバは言いました。

(参考文献:①「預言者伝」、アブー・アルハサン・アリー・アルハサニー・アンナダウィー著、ダール・イブン・カスィール出版、P127~131)