イスラーム勉強会ブログ

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預言者伝7

2010年09月08日 | 預言者伝関連

بسم الله الرحمن الرحيم
22.ムスリムたちに対するクライシュのいじめ:
  預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)は懸命に人々をアッラーへと誘っていました。そんな彼や、援助を続けていたアブー・ターリブにクライシュは失望し、やがて彼らの怒りは部族の中の改宗した人たちに向けられることになります。彼らにはアブー・ターリブのような擁護者はいないので、迫害するにはうってつけだったのです。
  それぞれの部族は改宗した同部族の人達に襲い掛かりました。彼らを閉じ込め、暴力、空腹、のどの渇き、マッカの酷暑で苦しめました。
  奴隷の身でイスラームに改宗したイスラーム史上初のムアッズィン(礼拝の呼びかけ人)となるビラール・アル=ハバシーの苦しみを振り返ってみましょう。彼の主人であり多神教徒のウマイヤ・イブン・ハラフは真昼の灼けつく太陽の下、ビラールをマッカの平地に連れて行き、背を下にして寝かせると、巨大な岩を持って来るよう命じ、彼の胸の上に岩を置きました。ウマイヤはビラールに言います:お前が死ぬかムハンマドに対する信仰を捨ててアッラートとアルウッザー(当時の偶像神)を崇めるまでは、アッラーに誓って、ずっとこのままにしておくぞ!しかしビラールは苦しみの中で、ただひたすらに「おひとり、おひとり…」と言い続けるのでした。
  その傍を通りかかったアブー・バクル(御満悦あれ)はウマイヤに、ビラールよりもたくましく強い黒人奴隷を差し出し、代わりにビラールを引き取った後、彼を解放しました。
  マフズーム族は改宗していたアンマール・イブン・ヤースィルとその両親を真昼の酷暑の中苦しめました。彼らの傍を通りかかる預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)は次のように言うのでした:ヤースィル家の人々よ、忍耐しなさい!あなた達には天国が約束されています、と。ヤースィルの母親であるスマイヤは殺されましたが、彼女は決してイスラーム以外を受け入れることはありませんでした。
  またムスアブ・イブン・ウマイルというマッカの青年は若く美しく、両親にとても愛されていました。特に裕福だった母親は、彼に一番良い服を着せていました。また彼はマッカの住人の中で、一番良い香りのする若者でもありました。
  ムスアブは、預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)がアルカム・イブン・アル=アルカム家で、人々をイスラームに呼び掛けていることを耳にすると、早速預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)を訪れ、イスラームに入りました。ただ母親と部族を恐れたため、改宗したことは秘密にしていました。しかしある日、ウスマーン・イブン・タルハという男に礼拝しているところを目撃され、母親と部族に告げ口されてしまいます。事を知った部族の人たちは、ムスアブを捕え監禁すると、第一のヒジュラ先であるエチオピアの地へ彼が移動するまで、監禁を続けました。その後ムスリムたちと生還したムスアブの様子と言ったら、まるで昔と変わって惨めな姿になっていました。そんな彼を見た母親は非難叱責するのを止めました。
  第三正統カリフでもあるウスマーン・イブン・アッファーン(御満悦あれ)が改宗すると、おじのアル=ハカム・イブン・アビルアース・イブン・ウマイヤは彼を捕えて縄で縛り上げました。「先祖の教えを捨てて新興宗教に入るというのか。アッラーにかけて!お前がこの教えにしがみついている間は絶対にこれをほどかんぞ!」とおじはウスマーンに言うのでした。ウスマーンは答えて言います。アッラーにかけて。私はイスラームを捨てませんし、離れることもないです、と。おじのアル=ハカムはウスマーンがこれほどまでにイスラームに固執している姿を見て、最終的に彼を放っておくことにしました。
  このように、当時、苦しめられたムスリムたちは大勢いました。

23.預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)に対するクライシュの攻撃とその様々な方法:
  改宗した人たちを元に戻すことに成功出来ず、また預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)が決して妥協しないことにしびれを切らしたクライシュは、預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)に集中攻撃を仕掛けることにしました。彼を嘘つき呼ばわりし、迫害し、魔法使いや詩人と呼び、魔術やジンに憑かれたのだと噂し、様々な方法で預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)に害を加えたのでした。
  貴族たちが集まっているところに預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)が通りかかったことがありました。彼を見た人々は目配せしながら何かを言い、それを3回繰り返しました。預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)は立ち止まって:クライシュよ、聞こえていますか。私の魂をその御手に収め給う御方にかけて。私はそなたたちの許へ死をもってやって来たのです、とはっきりと言いました。それを聞いた人々は黙ってしまい、身動き一つ出来なくなってしまいました。それ以降、彼らは預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)に対し、控えめに話すようになりました。
  またある日、人々が集まっているところに預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)が現われ、ある男が彼に襲いかかり、次々に人が彼の周りを囲いました。そのうちの一人が預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)の衣服をつかみましたが、アブー・バクルは泣きながら次のように言いました。:私の主はアッラーである、と言うだけの人間をお前たちは殺そうというのか?!人々はその言葉で去って行きましたが、アブー・バクルはその日、頭を叩かれ、ひげを掴まれて引きづり回されました。
  またある日、預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)が出かけると、会う人すべてに嘘つき呼ばわりされるか危害を加えられました。預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)は自宅に戻り、自分が被った害の重さから布にくるまりました。そこでアッラーは彼に「(大衣に)包る者よ」(74章)で始まる章を啓示し給いました。

(参考文献:①「預言者伝」、アブー・アルハサン・アリー・アルハサニー・アンナダウィー著、ダール・イブン・カスィール出版、P123~127)