国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

石油ドル体制崩壊後の世界通貨システムはどうなるか?

2007年01月21日 | 経済
1月19日の「知識は使い方で差がつく」という記事は、常温核融合の普及と共に石油ドル体制が徐々に崩壊することを示していると思われる。重要なのは化石燃料よりもコストが安いことだ。日本は常温核融合の理論面だけでなく実用化でもトップを走っているとされており、日本企業が中心となって世界のエネルギー革命が進行することだろう。 「水素抽出のノウハウをもつ組織は、独自通貨の発行権を単独でもつだろう」という一文は意味深である。現在の国際基軸通貨であるドルを発行するFRBは、チェース・マンハッタン銀行やシティバンク等の国際金融資本系民間銀行に保有されている。例えば、三菱重工・トヨタなどの日本企業が出資した常温核融合企業が、その技術力を背景にして国際基軸通貨を発行するという計画があるのかもしれない。常温核融合企業が発行した社債がその高い信用度故に、スイスフランや金地金と並んで国際基軸通貨の一つ(貿易決済のための各国中央銀行の準備通貨)として使用されることは十分考えられる。更に、その社債が常温核融合によって取り出されたエネルギー一単位との交換を保証するものとなれば、石油ドル体制や金本位制に近い価値の裏付けを持つことになるだろう。核変換の技術は金や白金などの貴金属を安価な元素から作り出す可能性を秘めており、それ故に単純な金本位制の復活はあり得ないと思われる。また、円やユーロがそのままドルの次の国際基軸通貨になるということは「ドルの同じ轍を踏む」ことであり、避けるべきと考えられているのだろう。 問題となるのは、日本以外の国(例えば中国)が技術革新によって日本を上回る効率の常温核融合を実現する場合である。仮称「日本常温核融合」は価格競争に敗北して破綻し、仮称「中国常温核融合」の社債が新たな国際準備通貨の地位につくことになるだろう。更に、常温核融合の技術が全世界に広まり誰でもできるようになれば、「常温核融合技術」を信用の裏付けとするシステムは成立しなくなるだろう。このように、来るべきシステムは決してバラ色ではなく、日本が諸外国に対して常に技術面でのリードを保ち続けることなくしては成立しない不安定なものである。それは、石油ドル体制が中東油田という有限の資源と核不拡散条約による日独の核武装の阻止という不安定な基礎を元に成り立っていたことに似ているかもしれない。 . . . 本文を読む
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