国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

敗北を覚悟で戦うことの意義:フィンランドとバルト三国の歴史の比較

2010年09月28日 | 欧州
 独ソ不可侵条約によってバルト三国とフィンランドはソ連の勢力圏と定められ、これらの国々はソ連の軍事基地建設と軍隊駐留を要求された。このソ連側の要求に対するバルト三国とフィンランドの対応は対照的であった。バルト三国はソ連の要求を受け入れ、その後ソ連軍に全土を占領される際にも積極的な抵抗は行わなかった。バルト三国はソ連との戦いを避ける事により、人命を失うことはなかったのである。しかし、その代償は大きかった。ソ連支配下では多くのバルト三国人がシベリアへ強制連行され命を失った。また、最終的にバルト三国はソ連に併合されて独立を失い、ソ連崩壊まで再独立できなかった。  一方、フィンランドはソ連の要求をはねつけ、ソ連との戦争に突入した。戦争での勝利は絶望的であったがフィンランド軍はよく健闘しソ連軍を苦しめた。最終的にはフィンランドはソ連が当初要求した以上の領土を失うことになったが、独立を維持し、フィンランド人のシベリアへの強制連行を回避し、冷戦期間中も東側諸国としては例外的に西側レベルの生活水準を享受することができた。このバルト三国とフィンランドの歴史は、敗北を覚悟した戦争で戦うことが国益に繋がることを教えてくれる。  私がなぜ今このような記事を書くかというと、日本は新たな超大国である中国から、属国になるように脅迫される可能性があるからである。中国側は恐らく、沖縄の割譲と日本本土への人民解放軍駐留を要求してくるだろう。もしバルト三国のようにその要求に屈すれば、更なる中国からの圧力により日本の独立は失われて中国に併合され、現在のチベットのような悲惨な運命が待っているはずである。日本が敗北を覚悟で中国の脅迫をはねつけて人民解放軍と戦争になった場合は、恐らく日本は沖縄だけでなく、種子島・屋久島以南の南西諸島全て、五島列島、対馬+壱岐、小笠原諸島などの多数の島嶼を中国に奪われる可能性が高いと思われる。日本本土への人民解放軍の駐留も避けられないだろう。しかし、日本人が決死の覚悟で中国軍と戦ったならば中国人も日本占領の困難さを理解し、日本は中国の衛星国ではあるが何とか独立を維持できるのではないかと思われる。  今後数百年間の展望として、日本人は中国側の理不尽な要求には屈せず、敗北確実であっても戦争を行う覚悟を持つべきである、というのが私の結論である。 . . . 本文を読む
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新たなる対中外交での日本の敗北の予感

2010年09月26日 | 中国
中国人は相手が弱いと見ると急に強い態度に出る、相手が一歩引っ込むとすかさず一歩進む性格がある。案の定、中国政府は衝突事件で日本に対して謝罪と賠償を要求してきた。中国はレアメタルの輸出制限、ドル売り円買いによる円高誘導、フジタ社員拘束(死刑の可能性あり、新たに他の駐在日本人を拘束することも可能)など多くの切り札を有している。中国政府は、日本の多くの弱みと失策につけ込んで、日本から漁船事件に対する謝罪と賠償を勝ち取るのではないかと私は考えている。日本外交の更なる敗北である。しかし、私は日本の未来を全く悲観していない。現在の中国の外交的勝利は近未来の外交的大敗北の芽を孕んでいるからだ。その大敗北とは、国民が勝利に酔いしいれて大国意識に染まることにより、外国への譲歩が困難になることにある。そもそも、外交で最も困難なのは対外交渉ではなく、国内の反対派の説得なのだ。中国は米国や欧州から膨大な貿易黒字と元安を批判されている。米国は20%以上の大幅切り上げを要求している。現在の中国にとって最も必要なことは、米国や欧州を納得させるような10%以上の通貨切り上げを行うことである。中国外交部の心ある人はそう主張していることだろう。しかし、現在の中国首脳は元切り上げを拒否し続けている。太田述正氏がブログで「軍部、主要官庁、国有企業がてんでんばらばらに勝手な言動を対外的に行うようになってる。」と指摘している様に、もはや中国外交部は国内反対派を説得することがほとんど不可能になっているのだろう。そして、対日勝利で気が大きくなった中国国民や圧力団体に、元切り上げとそれに伴う失業・不況・経営難という苦難に耐える様に説得することはまず不可能と思われる。恐らく元切り上げ問題はこのまま平行線を辿り、11月2日の中間選挙直前に制裁関税が米国によって施行され、他のG8諸国がそれに続くことになると思われる。制裁関税導入に対して、中国人は面子を傷付けられたと感じ、激怒することだろう。日米欧の外資系企業は焼き討ちに合うかもしれない。1900年の義和団事件の再来である。不動産バブル崩壊も加わり、外資系企業に依存して発展してきた中国経済は崩壊する。大国意識で気が大きくなった中国国民は生活苦に耐えられず、経済成長で維持されてきた共産党政権の正統性も失われ、中国は軍閥割拠の内乱状態に移行していくことだろう。 . . . 本文を読む
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尖閣問題の経緯と米国の思惑

2010年09月24日 | 中国
『1969年および70年に行なわれた国連による海洋調査で、推定1095億バレルという、イラクの埋蔵量に匹敵する大量の石油埋蔵量の可能性が報告され、結果、周辺海域に石油があることがほぼ確実であると判明すると、ただちに台湾がアメリカ合衆国のガルフ社に周辺海域の石油採掘権を与えるとともに、尖閣諸島に上陸し「青天白日旗」を掲揚した写真を撮らせ世界中の通信社に配信したため、日本政府が抗議した。』『1971年6月に台湾、12月に中国が相次いで領有権を主張した。』とのwikipediaの記述は重要である。ガルフ社の石油開発権取得は当然ながら米国政府の意向を受けていると思われる。また、台湾が米国の意志なしに尖閣諸島の領有権を主張するとは考えにくい。尖閣諸島の領有権問題は、北方領土問題と同様に、米国が中心となって作り上げたものである、という認識を持つことが重要である。その目的は、日本・台湾・中国の間に領土問題を作り出すことによりこれらの国々の団結を阻止することにあると思われる。  現在も米国の意図は変わっていないと思われる。米国は「尖閣諸島は日米安保条約の対象である」とは明言しているが、沖縄返還前は尖閣諸島を米軍射撃場として利用していたにも関わらず、現在の帰属については関与しないという、同盟国としては背信的な行動をとり続けているのだ。米国は味方であるという安易な幻想は捨て去って、冷徹な国際政治の現実を見据える必要がある。  米国は元切り上げ問題で中国に圧力をかける目的でこの問題を利用していると思われ、11月2日の中間選挙までは問題解決は無理だろう。上海閥は北京閥を弱体化させる目的があると思われ、その節目は10月に開催される五中全会で胡錦濤国家主席の後継の最有力候補とされる習近平国家副主席が軍の要職である中央軍事委員会副主席に選出されるかどうか、ライバルの李克強がどうなるかが焦点だ。習近平は上海閥、李克強は団派(北京閥)の様である。日本としては、船長を日本の法律で適正に処分するという点は絶対に妥協してはならない。11月3日以降に執行猶予付きの有罪判決を裁判所に出して貰って国外追放、というのが現実的な落とし所ではないかと思われる。それまでは、レアメタルの輸出停止や日本人駐在員の拘束などの恫喝に決して屈してはならないだろう。 . . . 本文を読む
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尖閣諸島での漁船衝突事件の背景

2010年09月20日 | 中国
尖閣諸島は日米安保条約の対象となることを米国政府は明言している。このため、中国は日本に対して軍事的手段をとることができない。中国で活動する日本企業に制裁を行うこともできるが、それは中国経済にとってダメージが大きすぎて困難なのか、現時点では実行されていない。結局、交流中止やガス田の単独開発などの形式的な対抗処置しか行われていないのだ。このことは、中国人民に「政府は弱腰だ」という批判を惹起させる可能性が高く、中国の国益に合致しないと思われる。中国が海洋での権益拡大を追求するならば、尖閣諸島のように日本の領有権に関する国際条約や米国との軍事同盟条約が存在する場所ではなく、領有権に関する国際条約や軍事同盟条約が存在しない、そして日本と比較して海軍力が圧倒的に弱い南シナ海の南沙諸島をターゲットにする方がずっと賢明であり、実際に中国はその様な国益に合致する行動をとり続けてきた。今回の尖閣での事件はそれらとは対照的に中国の国益を損なっている。 では、なぜ中国政府は国益に反するような行動をとったのだろうか?私は、今回の事件の裏には上海閥と北京閥の権力闘争があるのではないかと考えている。上海は貧しい内陸部に搾取されることを嫌がっており独立したいと考えている。北京閥は中国の統一を維持することで権益を維持したいと考えている。今回の事件の漁船は福建省所属だが、福建省は上海と同じく貧しい内陸に搾取されることを嫌がっていると思われる。そこで、上海閥が福建省に働きかけて、北京政府の威信を低下させるためにわざと漁船を日本政府に拿捕させたのではないか、というのが私の想像である。そして、上海閥は日本政府や米国政府にも事前に計画を通知していたのではないかと思われる。 今年11月2日に控えた米国の中間選挙では民主党の苦戦が予想されており、オバマ大統領は人気取りのために、通貨の大幅切り上げを拒否し続ける中国に対して制裁関税をかけることが予想される。この制裁関税は欧州やカナダ、日本なども追随すると想像され、中国人の反外国感情を煽ると共に、制裁に対して何ら対抗できない北京政府への威信は更に低下することだろう。 上海閥が日本や米国と手を組んで今回の事件を起こした、というのが私の結論である。 . . . 本文を読む
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欧州の移民問題

2010年09月04日 | 欧州
私は、ザラツィン理事の発言や更迭劇はドイツ支配階層の意向を受けたものであり、ドイツ人に移民問題を提起することが目的であると考えている。今回の更迭劇で彼が8月30日に出版した「自壊していくドイツ」は大ベストセラーになることだろう。そして、ドイツ人の大多数が移民問題を直視しはじめることだろう。今後採られうる政策としては、モスクの新設禁止、女性のヘッドスカーフの禁止、コーランを大音量で流すことの禁止などが考えられる。しかし、その様な穏健な政策だけでイスラム教徒たちがドイツ社会に統合されたり、祖国に帰国したりするとは考え難い。結局は、かつてナチスが行ったように強制的にイスラム教徒を東方に向けて送還するしかないと私は想像する。イタリアのマローニ内相が主張するロマの強制送還構想はそのはしりではないだろうか。ドイツはナチスが行ったユダヤ人迫害の記憶が強烈であり、これまで移民問題に真正面から取り組んでこなかった。しかし、欧州の中核であるドイツにはもはやその様な姿勢は許されない、とドイツ支配階層は決意したのではないかと思われる。 イスラム教は、他教徒との婚姻を禁じており、婚姻の為にはイスラムに改宗せねばならない。また、改宗を禁止している。このような点で、イスラム教は他の宗教と共存しにくい様に思われる。今後の日本は東アジアの中核国家となり、インドネシア人・マレーシア人・パキスタン人・アラブ人・ウイグル人・カザフ人、中国の回族などのイスラム教徒が訪日することが考えられる。しかし、日本という国家を維持し繁栄させていく為にはイスラム教は有害であり、日本に在住するイスラム教徒を一定数以下に制限しておく必要があるだろう。 日本は他の先進国の優れたところは熱狂的に取り入れるが、良くないと思われるところは決して取り入れないという伝統を持っている。平安時代に中国から宦官や纏足を輸入することがなかったこと、安土桃山時代や明治時代に欧米からキリスト教という一神教を輸入しなかったこと、第二次大戦後に欧米のように低賃金労働者の移民を受け入れなかったこと、現在も欧州の死刑廃止運動を取り入れていないことなどが挙げられる。日本人は一神教は排他的であり好ましくないと考えているのだ。イスラムはキリスト教より更に排他的であり、ムスリムを日本に受け入れることは多大な害悪をもたらすと考える。 . . . 本文を読む
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21世紀は電気自動車の時代

2010年09月02日 | 経済
化石燃料、特に石油は既に生産のピークを越えたと考えられており、21世紀はこの石油を如何に節約するかが重大な問題になってくると思われる。現在の日本ではトヨタのプリウスなどのハイブリッドカーが主流であるが、これは過渡的現象に過ぎない。やはり、21世紀の自動車の主流は電気自動車になるだろう。電気自動車ならば、常温核融合、核変換で廃棄物処理コストを減らした原子力発電、豊富に存在する石炭を利用した火力発電などで石油を使用せずに済むからだ。恐らく2050年の日本では、自動車はほぼ全て電気自動車になり、暖房や化学工業原材料はロシアからのパイプラインで供給される天然ガスに置き換えられ、石油が利用されるのは航空運輸・船舶運輸・農業機械用・離島での発電用などの分野に限られるのではないかと想像する。現時点では、電気自動車は非常に高価であり、一般の乗用車に普及するのは先になるだろう。最初に普及するのは、タクシーやバス、宅急便・郵便の集配車などの業務用車両になると思われる。一日に走る時間が長いので高価な初期投資を回収しやすいこと、営業所が既に存在するので充電場所の確保が容易であるなど、有利な条件が揃っている。タクシーはプロパンガス車が多く石油消費削減にはならないが、それ以外の業務用車両の電気自動車化は石油消費削減効果が大きいと思われる。ベタープレイス社のバッテリー交換式電気自動車は非常に良いアイデアである。どんどん普及しても良さそうだが、実験に参加している日本交通は電気自動車の大量導入には踏み切っていない。まだバッテリーのコストが高く採算が合わないのか、あるいは国際金融資本の意向でまだ電気自動車を普及させることができないのか、いずれかであろう。最近、中国がレアメタルの輸出量を削減しておりハイブリッドカーの生産に支障がでる可能性があるとの報道があったが、このレアメタルが必要なのはハイブリッドカー用の小型モーターであり、一般の電気自動車ならば中国産のレアメタルは不要らしい。従って、コストの多くはバッテリーということになる。バッテリーの何が高価かというと、リチウムイオン電池の正極に使用されるコバルトらしい。ただ、このコバルトの使用量を減らす、あるいは使用しない正極が開発されはじめており、近い将来にはバッテリーの価格は急速に下落することになると思われる。電気自動車大普及時代はもうすぐである。 . . . 本文を読む
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ロバート・クレイギー駐日英国大使の主張した、1941年における日本中立化政策

2010年09月01日 | イスラエル・ユダヤ・国際金融資本
太田述正氏はコラムで、第二次世界大戦時に日本の参戦を回避しようと努力した駐日英国大使のロバート・クレイギーを取り上げている。ロバート・クレイギーが日本を中立化させることで極東での大英帝国の権益の温存を狙ったのに対して、チャーチル首相とイーデン外相は日本を対米英戦争に突入させることを狙っていた。チャーチルらはなぜ大英帝国を温存しようとしなかったのだろうか? 私の考える答えは、第一次大戦後の英国は既に米国に対抗する力を失っており、米国の戦略に従う他に選択枝はないと考えていたから、というものである。政府単位での力ではなく、国内に本拠を置く金融資本の総勢力で考えた方が良いだろう。第一次世界大戦を境として、世界の政治を運営していく力は英国から米国に既に移っていたと、英国の金融資本は理解しており、その意向がチャーチル等に反映されたのだと私は考えている。 では、米国の金融資本はどの様な世界戦略を立てていたのだろうか?ロシア革命をウォール街が大々的に支援していたこと、ハルノートで米国が日本に支那大陸からの撤退を要求していたこと、朝鮮戦争で中国軍に原爆を使用すべきと主張したマッカーサーが解任されて共産中国が維持されたこと(原爆が使用されれば共産中国は崩壊していただろう)などから考えて、彼らは中露を中心にユーラシア大陸を共産化し、それを米国が海洋から包囲する二極体勢を当初より目指していたのだと思われる。それは冷戦という形で第二次大戦後に実現した。冷戦を一時的に強化した上でソ連を崩壊させて冷戦を終結させた1981-1993年のレーガン・ブッシュ両政権の戦略は金融資本の戦略と対立するものであり、1981年のレーガン暗殺未遂はニューヨークの金融資本が実行者であった可能性が考えられるだろう。 従って、仮にロバート・クレイギーの日本中立化政策が成功していたとしても、あるいは1940-1941年に日本が英国のみに対して宣戦布告して米国を第二次大戦に巻き込まなかったとしても、日本は第二次大戦で敗北することはなかっただろうがその後に朝鮮戦争と類似した形で日米戦争が発生し、日本は米国に敗北することになっていただろうと予想する。 . . . 本文を読む
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