国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

解決に向かい始めた北方領土問題

2011年02月28日 | ロシア・北方領土
2月20日と24日に、東京新聞と産経新聞で北方領土問題に関する画期的な報道が行われた。従来の日本国内の報道は日本の主張の正当性を主張するものだったのに対して、今回の記事は日本の主張が国際法的に根拠がないことを指摘し、ロシア側の主張に正当性があることを示している。東京新聞・産経新聞は共に小規模紙であり、日本支配階層は両紙に北方領土問題に関する真実を報道させて国民の反応を見ることを狙っているのだと思われる。一種のアドバルーンである。北方領土問題は、日露が1956年に二島返還で合意した際に米国のダレス国務長官が日露の関係改善を阻止するために「二島返還で合意するならば沖縄を返還しないぞ」と日本を恫喝したことに由来する。日本は歯舞・色丹を諦めて沖縄を選択したのだ。冷戦という米国の大戦略を実行するには、日露間の領土問題解決は許されなかったのだろう。逆に言うと、米露対立という米国の世界戦略が終焉し始めたために、日本で北方領土問題に関する真実を報道することが可能になったのだと思われる。私は、二島+α返還論者である。北方領土はまずは二島返還が最も良いと考えている(ただ、ロシアが返還を拒否するならば、ゼロ島返還で手を打つのもありだと考えている)。重要なことは、サンフランシスコ条約などの国際条約に基づいて日本の国境が確定されることであり、これは竹島や尖閣の領土問題で日本の立場を有利にすることに役立つ。また、南シナ海の南沙諸島の領土紛争を解決するための道標としても役立つことだろう。日本とロシアが国境紛争を解決し、中国と米国という二つの巨大な仮想敵国に共同で立ち向かうことの利益は計り知れないほど大きい。ロシア側の最近の北方領土問題に関する強硬姿勢は恐らく日本との合意の元に行われており、ロシアの領有権の正当性を日本国民に知らせることがその目的ではないかと私は妄想している。 ただ、実際に北方領土が二島返還、あるいはゼロ島返還になるとは限らないと思われる。ロシアにとって、領土問題で譲歩することで日本の国民感情を味方に付けることの利益は大きいと思われるからだ。具体的には、日本が建設費用を全額負担して宗谷海峡トンネルを建設してシベリア鉄道を日本に直結させて樺太を含めたロシア極東を繁栄させることと引き替えに北方領土の全部又は一部を日本に譲渡するという様な取引が考えられる。 . . . 本文を読む
コメント (66)

植民地化する中近東・北アフリカ産油地帯

2011年02月27日 | 中近東地域
NATO、EU、国連安保理などがリビア情勢を人道的見地から取り上げ、制裁や軍事介入を検討し始めた。これは、非人道的独裁政権として米国が非難し軍事介入を行ったイラクと同じ状況である。今後、サウジアラビア東部の少数派シーア派が住む油田地帯でも同様の紛争が発生し、西側諸国による制裁や軍事介入が起きることが予想される。イランの大油田地帯であるフゼスタン州も少数民族であるシーア派アラブ人が主要民族であり、将来イラクからサウジ東部にかけてシーア派アラブ人国家が誕生した場合にはフゼスタン州もそれに参加する可能性がありうる。その結果は、中近東や北アフリカでの広範囲な国境線の引き直しである。恐らく欧米支配階層は、人道的見地という建前のもとに中近東や北アフリカの産油地帯を軍事的に支配し勢力下に収めることを狙っているのだと思われる。これは、事実上の半植民地化であり、19世紀に欧米各国が途上国を植民地化した状態への逆戻りを意味するのではないかと思われる。欧州の植民地を独立させた20世紀の米国の世界覇権が終焉し始めて、世界は19世紀へと回帰するのではないかと私は想像している。 . . . 本文を読む
コメント (5)

ジャスミン革命は中国に波及するか?

2011年02月24日 | 中国
エドワード・ルトワック氏のフォーリンアフェアーズ誌に掲載予定の論文が注目される。中国はドイツと同じ誤りを繰り返そうとしているという。これは、第二次大戦でドイツが米国に宣戦布告して自滅的な二正面作戦をとって敗北したことを指しているのではないかと思われる。「現在の共産党指導層は、戦前の日本軍のようなものであり、全体のコースは変えられないと思う。米海軍校毎年留学生を送っていた日本軍の一部には、当然、米国との戦争が無謀であることはわかっていた。しかし、そうした見解は軍の方針とはならなかった。それと同じことである。」とのコメントも、ドイツと同様の日本の無謀な戦略を指摘したものである。しかし、ヒトラーが第二次大戦で対米宣戦布告したのは、戦争でわざと負けて旧プロイセン王国のプロテスタント地域をソビエトの支配下に追いやり衰退させ、カトリックのバイエルンやオーストリアをアメリカ等の支配下で繁栄させるという戦略があったのではないかとおもわれる。欧州の第二次大戦は1618-1648年の三十年戦争と同様のカトリックドイツとプロテスタントドイツの内戦だったのだろう。そして、ヒトラーの戦略は見事に成功した。ヒトラーがバイエルンとオーストリアの国境地域で生まれ育ったことを考えれば、彼はカトリックドイツの手先であったと思われる。日本が対米宣戦布告したのも、戦争でわざと負けて朝鮮半島や満州、台湾といった貧しい植民地を切り捨て、日本本土だけの国となって米国の衛星国となり繁栄するのが目的であったと考えられる。その戦略は見事に成功した。成功しすぎたために、1990年代に米国が日本を仮想敵国と認識して激しく攻撃したことは記憶に新しい。この様な背景を考慮に入れると、エドワード・ルトワック氏の主張は、中国も米国にわざと負ける戦略をとろうとしていることを示しているように思われる。中国では沿海部大都市の富裕層が支配階層であり、広大な内陸農村部の農村戸籍者が被支配階層であって、その間の格差は巨大である。中国支配階層はジャスミン革命でわざと共産党政権を崩壊させ、貧しい内陸部を切り捨てて、沿海部の親米・親日都市国家として生き残ることを計画しているのではないかと私は想像している。この戦略は、中国人の大部分が貧困状態を継続することで、世界の資源需要が小さくなる点で日米欧などの先進国にとって有益である。 . . . 本文を読む
コメント (10)

フロリダ高速鉄道計画 白紙に

2011年02月19日 | 米国
米国のフロリダ州の高速鉄道計画が白紙となった。恐らく、他の州の高速鉄道計画も多くが白紙撤回されることだろう。 米国は多極分散型国家であり、中枢機能が全国の大都市に分散している。国土が広いこともあり、鉄道が得意とする200-800km程度の都市間輸送の需要が小さく、飛行機が得意とする800km以上の都市間輸送の需要が大きいのだ。更に、米国では公共交通機関が発達しておらず、自動車利用を前提として広い地域に都市が拡がっている。200km-400km程度の移動なら、ドアtoドアで移動できる自動車の方が便利であろう。従って、高速鉄道を建設しても採算がとれる地域は非常に少ないと思われる。候補としては、東海岸のボストン-ニューヨーク-ワシントンDC間、西海岸のサンフランシスコ-ロサンゼルス-サンディエゴ間、バンクーバー-シアトル間程度ではないかと思われる。東海岸のボストン-ニューヨーク-ワシントンDC間には既に鉄道が存在し、これを高速化するだけでよいことを考えると、新路線建設の可能性があるのは西海岸の二カ所だけになるだろう。これも、採算がとれるかどうかは微妙である。例えば西海岸の二大都市であるサンフランシスコ-ロサンゼルス間だが、日本の東京大阪間と比較すると需要ははるかに小さいようである。上越新幹線か九州新幹線程度の需要しかなく、補助金を投入しないと建設は無理ではないかと思われる。そして、現在の米国経済が双子の赤字で火の車であることを考えると、鉄道建設に補助金を出す余裕はないと思われる。 航空機と自動車に依存した米国の国土構造・都市構造は安価な石油を前提にしていた。世界の石油生産がピークを越え原油価格の上昇が止まらないであろう21世紀、米国は輸送コストの高さ故に衰退していく可能性が高いと思われる。衰退を免れる唯一の方法は、軽量で大容量の超高性能の蓄電池開発による電気自動車への切り替えと、石油を使用しない航空機の導入であるが、この二つの技術は少なくとも現状では全く目処が立っていない。米国に代わって、鉄道輸送に適した国土構造・都市構造を持つ日本と欧州が世界の先進地域の双璧になると思われる。米国の西海岸は高速鉄道が整備されれば何とか先進地域として生き残れるだろう。 . . . 本文を読む
コメント (2)

迫り来るドル・ポンド・国際金融資本の崩壊

2011年02月17日 | イスラエル・ユダヤ・国際金融資本
「モルガンS不動産ファンド、大型物件のローン返済困難との見方も」とのロイター通信の報道が注目される。2008年のリーマンショック以降の東京の商業不動産の価格下落により、不動産ファンドが返済不能となり、ローンの貸し手に物件を売却する権利が移るという。ただ、売却しても大幅な損失が出ることは確実であり、結局は貸し手がその損失を償却することを余儀なくされるだろう。同様の膨大な損失を欧米の金融機関や機関投資家は抱え込んでいると思われ、彼らは事実上破産状態にある。現在の株高は米国が量的緩和と連銀による国債買い支えと国際金融資本による米国株買い支えで維持されているものと思われるが、これが永遠に継続することは考えられず、近い内に破綻する可能性が高いだろう。その時には、破綻した欧米の大手金融機関を欧米諸国が国有化することになり、金融業の割合が大きく国際金融資本の本拠地である米英両国は致命的打撃を受け、両国の通貨は暴落することになると思われる。国債の債務不履行か、あるいは猛インフレによる米英の事実上の債務踏み倒しも避けられないと思われる。 問題は、この国際金融資本の破綻時に世界戦争が起きるかどうかである。東アジアと中近東で何らかの戦争が起きるのではないかと思われる。私が予想しているのは北朝鮮の南進による韓国滅亡と、イスラエルの滅亡である。ただ、日本・中国やペルシャ湾岸地域にも戦争が拡大する危険もあると思われる。現在、バーレーンなどのシーア派地域で起きている混乱はその前兆である可能性があり注意を要する。また、日本としては、国家滅亡を回避するために日中戦争だけは回避せねばならない。 . . . 本文を読む
コメント (8)

TPPの本質

2011年02月07日 | 米国
ブログ「地政学を英国で学ぶ」のコメント欄が興味深い。米国の推進するTPPを、太平洋ブロック国家と指摘している。EUというブロックの登場に続き、米国も自国の主導するブロックの結成を目指し始めたということなのだろう。私は日本は東アジアブロックを主催し主導すべきだと考えているが、アメリカを敵に回すべきではないので、一時的にTPPに加盟するのは悪くない選択枝だと考えている。2008年のリーマンショックをきっかけに全世界は事実上大恐慌時代に突入しており、ブロック経済化は避けられないのかもしれない。日本経済新聞が日本の医療の生産性の低さを指摘している。日本の医療の生産性が低いのは、医療費が安いことが原因であり、それは国民福祉から見て好ましいことである。医療費の大部分は老人が消費していること、老人は貧富の格差が大きいことを考えれば、安価で高レベルの医療が供給される日本の現在のシステムをある程度維持していくことが必要不可欠だろう。それにもかかわらず日経が日本の医療の生産性の低さを批判するのは、恐らくTPPで米国から日本に対し医療分野での要求があったためと考えられる。同様に米国が強みを持つ金融や法曹などの分野でも要求があるのだろう。医療・金融・法曹や農業を含め、日本にとって重要な産業やシステムを米国からの理不尽な要求から守りつつ、日本の国益を実現していくことが求められている。野党である自民党がTPPへの意見決定を先延ばしにしているのも注目される。「国論を2分するような課題で方向性を示すのは得策ではない」とあるが、国論を二分するような重要な課題で方向性を示せない政党に存在価値があるとは思えないのだ。恐らく、TPPについて真剣に議論すれば反対派が勝利してしまうので、議論を避けるべきだという判断を日本支配階層が行ったためだと思われる。現在の世界は、米国一極体制から多極体制への移行期という不安定な時期にある。米国のどの様な勢力がどの様な意図でTPPを推進しているのかを見極めることが必要だ。そして、その勢力の今後の推移を予測した上で日本は戦略を組んでいくべきだろう。もちろんその最終目標は、米国からの独立と東アジアブロックの支配権確立である。 . . . 本文を読む
コメント (8)

国際金融資本・イスラエル連合と米国の戦い

2011年02月03日 | イスラエル・ユダヤ・国際金融資本
全世界はムバラク政権支持派と反対派に分かれた。支持派はイギリス・オランダ・イスラエル。いずれも国際金融資本やユダヤ人の影響力の非常に強い国である。サウジアラビアがムバラク支持を打ち出しているのは、ムバラク同様に政権を打倒されることを恐れているからだろう。一方、米国はオバマ大統領、外交問題評議会会長のリチャード・ハース、民主党の外交政策の重鎮であるブレジンスキーなどが揃ってムバラク退陣を打ち出している。アラブ社会を1989年の東欧に喩えれば、オバマはゴルバチョフに喩えられるのだろう。米国政府のこの政策の最大の目的はイスラエルを滅亡させることであると私は想像している。イスラエルは米国に強大な影響力を行使し続けてきた。米国主要都市・港湾に核兵器を仕掛けて脅迫しているという噂があることは過去にこのブログの記事で触れたが、私は国際金融資本とイスラエルのモサドが共謀して米国を脅迫し操っていたのだと考えている。現在、米国政府はイスラエル・国際金融資本連合と戦っているのだと私は妄想している。 ブレジンスキーがカーター大統領の外交顧問だった1979年はイラン革命とソ連のアフガン侵攻があった年である。イラン革命はシーア派の世界で、アフガン侵攻はスンニ派の世界でイスラム原理主義を引き起こすきっかけになった。このイスラム原理主義がいまやエジプトを襲い、親イスラエルのムバラク政権は事実上崩壊している。イスラエルの滅亡は避けられないだろう。米国は国際金融資本・イスラエル連合との長い戦いにやっと勝利しつつあるのだ。 今後、米国では現在ゼロ税率である相続税が大幅に引き上げられ、デイビッド・ロックフェラーが近い将来に死亡した時にはその財産のほとんどが国庫に没収されることだろう。また、米国は富裕層に増税し、中国などからの安価な輸入品に関税をかけて自国の製造業を復興させることで中産階級を復活させようとすることだろう。それによって、米国の衰退は緩やかなものになると考えられる。また、国際金融資本に支配され、金融業と枯渇寸前の北海油田以外に産業のないイギリスは国家そのものが破綻していくことだろう。 . . . 本文を読む
コメント (2)

日本の国債発行残高が多い理由

2011年02月01日 | 日本国内
もし日本が国債を今ほど発行していなかったら、日本はもっと酷い大不況に苦しんでいた筈である。日本の国債発行は明らかに景気下支えの効果があったと考えられる。それ以前に、企業分野と家計分野の状況変化によって国債発行増加は避けられない状態になっているのだ。かつての高度成長時代には、工業製品は作れば売れる状態であり、企業は借金して工場を建設し製品を製造した。しかし、バブル以降のゼロ成長時代では市場が飽和状態になっており、売れる商品と売れない商品の二極化が進んでいる。このような時代では、借金して製品を製造するのは製品が売れなかった時のリスクが大きすぎる。そのため、借金ではなく自己資金、つまり内部留保で工場を建設し製品を製造する方向に進んでいる。つまり、製造業の借金が減って貯蓄が増えているのだ。 家計分野でも変化が起きている。日本の金融資産の大部分は高齢者に保有されている。金融資産以外の不動産などでも事情は同じだろう。つまり、日本人は一部の富裕な高齢者とその他大勢に二極化し始めているのだ。そして、高齢者は青壮年と異なりあまり消費を行わない。高齢化社会の到来に伴って、この二極化は進む一方である。従って、高齢者が増加するに従い今後も家計分野の貯蓄は増えていくことだろう。長生きして貯蓄が尽きる危険を考えると、高齢者はあまり貯蓄を取り崩せないことも重要である。長寿は素晴らしいことだが、何事も負の側面がある。 企業部門と家計部門が貯蓄を増やすならば、当然ながら経常黒字が増加することになる。しかし、経常黒字の増加は貿易不均衡として諸外国からの批判を招くために回避する必要がある。そうすると、政府・地方自治体などの公的部門が借金を増やしていくしかなくなるのだ。日本の国債発行残高増加はこのような必然性に基づいているのである。 . . . 本文を読む
コメント (7)