国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

学歴も所得も子供の学力も低いB層が支持する劇場型政治家橋下大阪府知事

2011年10月31日 | 日本国内
大阪府の市町村別の小中学生の学力調査の結果が公表された。その結果わかることは、自治体間で小中学生の学力に巨大な格差が存在することである。豊能町・箕面市・吹田市などの北摂の高級住宅地が上位を占めている。もう一つおもしろいデータがある。3年前に行われた同様の学力調査の結果と橋下知事の得票率に強い相関関係があるというものだ。さらに、統計的評価は行っていないが、学力の高い自治体は住民に占める大学・短大・高専・大学院などの高等教育機関卒業者率が高く、所得も高い傾向にある。 橋下知事は学力調査の結果を公表すべきと主張して論争となった。吹田市の教育委員会は自分の自治体の好成績を自慢できる立場にありながら公表すべきでないと主張したのだ。子供の学力の格差は父兄の教育・所得・知的水準の格差を反映しており、それが地域格差となって現れている。橋下知事は学力格差は教員の怠慢であると教員を攻撃することで有権者の人気を勝ち取ったが、実際には格差は教員ではなく父兄に原因があるのだ。従って、学力不振地域の教員や教育委員会を攻撃しても、教員がどれほど努力しても、生徒の学力が伸びることは期待できない。このような深刻な格差が存在する現状でそれを公表することは、低学力地域からの高所得者の流出という形で格差の固定化と更なる拡大を生むだけであり逆効果であるというのが吹田市の教育委員会が示した良識であると考える。対照的に、子供の低学力に悩む人々は、その原因が自分たちではなく教職員の怠慢にあるという橋下知事の言葉に飛びついて、自己の知的水準の低さや家庭環境の悪さという真の理由を直視するという辛い作業から逃げてしまった。 橋下知事は典型的な劇場型政治家である。行動パターンは小泉元首相のそれと類似している。敵を決め、激しくそれを批判して大衆を扇動して高い人気を勝ち取る。大衆に受け入れられるために、大衆が反感を持つような組織が敵として望ましい。小泉首相の場合は郵政省とそれを支持する守旧派の自民党議員であり、橋下知事の場合は各市町村の教育委員会や教職員であった。そして、愚かな大衆の支持を得るためには、良識を持つ人ほど敵としてふさわしいのだ。実に嘆かわしいことだが、民主主義とはこの程度のものなのだ。 . . . 本文を読む
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日本とASEANの上海協力機構加盟でアメリカの世界覇権は完全に崩壊

2011年10月25日 | 米国
米軍はイラクから年内に全面撤退する。中近東では米軍の主要基地はイラクに集中しており、従来サウジアラビアにあった大規模基地の多くは閉鎖されている。従って、米国のイラク撤退は米軍の中近東からの撤退を意味する。これによって、サウジアラビアをはじめとする中東産油国は米軍の占領下から自立することになる。これにより、中東産油国がドル建てで石油を売る石油ドル体制も崩壊する。 現在、米軍は西太平洋では従来の軍事力を維持すると主張している。しかし、石油ドル体制が崩壊すればもはや米国は軍事費を維持できなくなる。その結果は明らかで、日本や韓国から軍隊を引き揚げることになる。場合によっては日本が傭兵としてアメリカ海軍空軍に金を出して維持するという可能性があるのが唯一の例外である。 では、米軍がアジア大陸から撤退した後はどうなるのか?私は、上海協力機構がアジアのEU的システムに移行すると考えている。そして、恐らく上海協力機構の影の盟主は日本であり、日本やアセアン諸国が米国の支配下から脱して上海協力機構に加盟することで世界システム転換は終了すると考えている。米国が友好国と考えているインドやトルコ、アセアン諸国が既に上海協力機構にオブザーバー参加や客員参加、加盟申請などの形で参加し始めている。現在の日本は米軍の占領下にあり、亡命政権は北朝鮮政府を乗っ取った帝国陸軍残党である。北朝鮮と中国・ロシアの親密な関係を考えるならば、現在の日露・日中の対立は米軍と中露の対立に他ならず、米軍の撤退後は基本的に東アジアは安定した政治システムに移行すると私は予想している。それは、日本・中国・インド・ロシアの4大国の協調から成るウィーン体制に似た国際システムである。唯一戦争が起きるのが、米軍の撤退で滅亡する韓国であろう。 . . . 本文を読む
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東南アジアで深まる日中両国の勢力争い

2011年10月17日 | 東南アジア・南アジア・オセアニア
10月5日にタイのメコン川で中国人船員の乗った船が武装勢力に襲撃され、中国人船員13名全員が死亡又は行方不明になるという事件が起きた。中国の国内世論は沸騰し、中国軍の派遣を主張する声が強くなっているという。この事件は表向きはミャンマーの麻薬密売組織が実行したとされるが、ミャンマーの麻薬密売組織は中国国民党系で中国人と仲が良いこと、タイ軍に押収された麻薬はモーターボートでも運べる量で、2隻の大きな船を奪う必要はなかったこと、さらに、麻薬グループの目的は金銭であり、残虐なやり方で船員を殺害して中国を怒らせる必要はないという分析もあり、謎が深い。しかし、この事件以後メコン川の中国船舶は激減しているという。私は、中国のシーパワーがメコン川流域に及ぶのを恐れたタイがミャンマーと組んで中国船舶を追い出すためにこの事件を実行したのではないかと考えている。 日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)が11月中旬にインドネシアで開く首脳会議で、8年ぶりに「日ASEAN共同宣言」を採択することも決定された。海洋活動の拡大を続ける中国を念頭に、日本とASEANの間で海の安全保障分野での協力を推進する内容を盛り込む方向だという。明らかにASEANは中国ではなく日本の勢力圏に入ることを選択している。台日米安全保障シンポジウムも、台湾が米国のアジアからの撤退後に日本陣営に入ることを反映していると思われる。 米国のアジア撤退後の東アジア国際システムは固まりつつある。ASEANと台湾は日本の勢力圏になり、韓国は済州島に脱出して日本の衛星国になり、半島を統一する北朝鮮は帝国陸軍人脈で日本と結びつく。中国は衛星国を保有することが出来ず、モンゴルと朝鮮を緩衝国として保有するに留まる。そして、将来的には上海や大連などの沿海部大都市が独立状態に移行して日本の衛星国になっていくことだろう。 . . . 本文を読む
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日本の文系エリートと理系エリート

2011年10月15日 | 日本国内
 私がこの統計で言いたいことは、日本のエリートは旧制中学・新制高校で見ると文系が東京一極集中、理系は首都圏は弱く関西を中心に中部地方にかけての地域にやや集中する傾向があることである。日本では旧制高校や新制大学受験の時に文系・理系を分けるので、旧制中学卒業の17才又は新制高校卒業の18才の時点での地域の環境が進路決定に大きな影響を与えていると思われる。  冷戦崩壊後にオフィスにIT機器が導入され、インターネットが普及するようになってビジネスの環境は激変した。IT技術とインターネットを利用して高い人件費を節約して価格競争力で勝負するビジネスモデルが圧倒的に強くなり、既存のビジネスモデルの多くが危機を迎えている。個人投資家はネット証券に大挙して移動した。新聞やテレビ・雑誌は利用者が減って売り上げが激減している。出版業界はペーパーレスへの移行に抵抗しているが無駄な努力であり、iBookなどの電子端末に急速に移行することは確実だ。生命保険や損害保険も多数の営業マンを雇うビジネスモデルは破綻しており、恐らくネットの安い保険に完敗していくだろう。銀行や商社も過当競争の中で利幅は削られていくだろう。株式などの自己売買部門も、愚かな個人投資家が材料に素直に反応するのでその逆に価格を動かすことで無理矢理儲けを出している様な印象を持っており、決して価値を作り出している訳ではない。今後は利潤目的の機関投資家の短期売買は規制されていく可能性がある。 まとめると、結局起きているのは、自ら価値を作り出さず、理系技術者や芸術家が生みだした価値を搾取して高給を得ていた文系事務職・営業職が大量に失業していくという事態であり、これは現在進行形であって今後も進行し続ける。その結果、文系大卒者の高給の職場はどんどん減っていく事になる。そして、理系研究者や芸術家などの価値を生み出せる職が相対的に優位になる。 首都圏は中央官庁や大企業の本社が集中し、高度成長時代の膨大な事務職の需要で繁栄してきた。この強みが今や弱点に変わりつつある。文系重視で理系の研究を軽視する首都圏の文化が、21世紀の首都圏の衰退を生み出すことになるだろう。そして、理系研究職を重視する関西や中部地方が日本の繁栄の中心になっていくだろう。囁かれる大阪空港跡地や大阪駅北側貨物駅跡地への首都機能部分移転はそれを更に強めることだろう。 . . . 本文を読む
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TPPは米国の日本乗っ取り計画

2011年10月14日 | 米国
オバマ大統領は9月21日の日米首脳会談で環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への加盟を野田首相に要求した。このTPPは事実上、日本の政策決定権を米国が握る計画である。米国は日本の農業(特に米作)を壊滅させて米国からの輸入農産物に依存させて日本をコントロールし、国民皆保険を崩壊させて米国系保険会社にぼろ儲けさせ、弁護士や会計士も米国の資格に統一させて米国人弁護士・会計士が儲かるようにするのが目的だろう。恐らく菅直人前首相は「TPPに加盟しないならば米国は台湾と日本から撤退して日本は中国の属国になるがそれでも良いのか?」と脅迫されており、それ故に辞任して野田首相にバトンタッチしたのだと私は想像している。また、最近の弁護士・会計士の供給過剰と就職難は、米国が日本の弁護士・会計士市場に参入することを諦めさせるために日本支配階層が計画して実行したのだと考えている。 現在起きていることを理解するには、一世紀前に何が起きたかを理解することが必要だ。19世紀に世界を支配していたロンドンに本拠を置く国際金融資本は、鉄道の発達でランドパワーのドイツとロシアが急激に発展することに脅威を感じていた。マッキンダーが東欧を世界支配で最も重要なハートランドと定義したのは、東欧がドイツとロシアの発展の場であった事に由来する。このドイツとロシアの隆盛に対抗して欧州の国際金融資本は1913年に米国の国際金融資本と共同でFRBを設置して米国政府を乗っ取った。その次に、ロシアに居住するハザール系ユダヤ人と共同で1917年にロシア革命を起こしロシアを乗っ取った。そして、米露の二極を握った後に第二次世界大戦で日本とドイツを押しつぶして世界支配を完成させた。 現在、国際金融資本は崩壊の危機に喘いでいる。この状況で、国際金融資本、あるいは国際金融資本から解放された後の米国も、生き残りの策を練っている。この策の一つが、TPPによる日本乗っ取りであろう。日本は米軍の占領下にあるので表立ってこれに反対を唱えることは出来ないので、国民新党の亀井代表の様な弱小政党の政治家に真実を発言させ、米国に対しては表向きはyesと言いつつ、首相の首を次々とすげ替えて時間を稼いでいるのだ。担当者を次々に交代させて時間を稼ぐというのはペリー来航時以来の日本の伝統的対米対処法である。面従腹背こそ日本が取るべき道であり、それを日本は実行している。 . . . 本文を読む
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4大国に分割されるアジア大陸と朝鮮半島の行方

2011年10月11日 | 韓国・北朝鮮
モンゴル帝国が崩壊して元・イル汗国・チャガタイ汗国・オゴタイ汗国に分裂したように、アメリカ帝国のアジア大陸支配は崩壊しつつある。そして、4つの地域大国による支配体制が始まろうとしている。それは、日本・中国・ロシア・インドである。4大国によるアジア分割争いが進行している。 日本はアメリカ海軍の撤退後に欧米の国益の代理人として西太平洋の海を支配する役割を果たすことになりそうである。この観点から、日本はフィリピンとベトナムを支配圏に組み入れた。大東亜共栄圏の復活である。ロシアはベラルーシとカザフスタンを勢力圏に組み入れている。ロシア帝国又はソ連の復活である。インドもバングラデシュとの関係を改善し、南シナ海に勢力を伸ばしつつある。中国は欧米から最大の脅威と見なされており、それ故に勢力圏構築で欧米から強い圧力を受けている。恐らく、北朝鮮だけしか勢力圏に組み込めないだろう。日本はこの勢力圏獲得争いの時期に繁栄していることは欧米に敵視されて危険であるとの認識の元に故意に不況を悪化させ継続させてきたのだと考えられる。実に賢明な政策である。 重要なのは、日本と中国の間に位置する朝鮮半島と台湾がどちらの勢力圏に入るかである。台湾はさておき、これまで米国・日本側であった韓国はどうなるのだろうか?その答えは、最近に日本や米国の要人の発言に現れている。 シカゴ大学のミアシャイマー教授は、韓国にとって中国は最大の脅威であると説く。そして、韓国の生き延びる道は米国との同盟緊密化以外にないと主張する。しかし、その一方でミアシャイマーらは米国のオフショアバランシング政策を提唱している。これは、米国は中国の脅威を韓国にバックパッシングする方針であることを示している。 一方、日本は韓国が求める日本との経済統合計画に理解を示しつつも、従軍慰安婦問題で韓国に譲歩することや竹島問題で強硬姿勢を取ること、戦時中の厚生年金記録問題で強制連行問題を煽ることで韓国国内の反日感情を煽り、結果的に韓国と日本の軍事的統合(それは日本軍による韓国支配を意味する)を不可能なものにしている。結果的に、米軍が撤退し日本と軍事的に対立する中で、韓国は単独で北朝鮮・中国連合と対決することを迫られている。その結果起きるのは、韓国の滅亡と北朝鮮による半島統一以外にはあり得ない。 . . . 本文を読む
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1929年以降の世界大恐慌が繰り返されようとしている

2011年10月02日 | 経済
9月1ヶ月で銅価格は23%下落しているという。世界の銅の消費の40%を占める中国で、今年の銅の輸入量が26%減少していることが背景であるという。住宅や工場、鉄道などのインフラ建設が進む中国では銅や鉄の消費が激増しており、既に世界の資源消費の中心は欧米から中国に移転している。その中国で銅の輸入が26%減少しているという事実は、中国経済が大不況に突入していることを示している。 その一方で、欧州ではギリシャ危機が解決に至らず、スペインなどの南欧の大国に伝染する趨勢を崩していない。もはやユーロの維持は不可能であり、近未来に欧州は経済水準に合わせた幾つかの通貨圏に分裂していくことだろう。その過程で劇的な経済収縮が送ることは避けられない。 もう一つの極である米国でも、不動産バブル崩壊による大不況の中で歳出削減努力が始まっている。これは軍備の縮小を意味するが、それによって事実上米国の軍事占領下にあって米国の圧力で米国製品を購入してきたアジア諸国が米国製品購入を縮小する可能性が高い。同時に米国はドル切り下げなどの保護主義政策を採り、アジアからの対米輸出は激減すると思われる。 1929年以降の世界大恐慌が繰り返されようとしている。全ての日本人はこの現実を認識した上で対策を練る必要がある。この大恐慌は前回と同様に、世界覇権の移動(米国一極から多極化へ)と工業製品の過剰生産という二つの構造的問題を抱えている。それを解決するのは戦争しかないと考えている。日本にとってベストの解決策は、韓国の滅亡と中国内陸部の内戦化で東アジアの工場設備が破壊される一方で日本は戦争に巻き込まれないシナリオである。最悪の解決策は、日中戦争で日本が滅亡するシナリオである。戦争後の世界は、日本とドイツとカリフォルニアの三極によるブロック経済になると予想する。 . . . 本文を読む
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