国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

欧州危機の行方

2010年07月26日 | 欧州
ブログ「貞子ちゃんの連れ連れ日記」は、「恐慌とは、『お金持ちの覇権国家(経常黒字国にしてリーダー国家)不在の時に起きる。』というセオリー」が、厳然と存在する、と主張している。現在の世界では経常黒字国は日本・ドイツ・中国・中東産油国などであるがいずれも覇権国ではない。従って、恐慌が発生するのは必然的である様に思われる。ただ、私は恐慌は「起きる」ものではなく、世界支配階層によって「起こされる」ものだと考えている。戦争・恐慌といった大事件は全て、綿密なシナリオのもとに実行されているはずである。そして、来るべき欧州恐慌も明確な目的があるはずだ。それは何だろうか? それは、統合体として未成熟なEUを、世界覇権国の一つに改造する事であると思われる。EUは通貨は統合されているものの、政治的統合は進んでいないという過渡的状況にある。この政治的統合を推進するのが第一の目標であろう。第二の目標は、域内各国の経済格差への対処である。経済格差はこれまではEU周辺国のバブルによって縮小してきたが、今やそのバブルは破裂しつつある。この格差は各国の国民性を反映したものであり、短期的解決は不可能である。対処法としては、経済水準の低い国では低賃金・長時間労働・福祉水準切り下げを受け入れて貰う他にないと思われる。この動きはギリシャを筆頭に地中海諸国で現在取り組みが始まっている。第三の目標は、EUにおけるドイツの優越を制度化することである。現在のEUでは、各国は対等の地位となっている。しかし、経済・技術などの点から見てドイツは突出した存在である。来るべき欧州恐慌を解決するには、ドイツに国債を大量に発行して貰い、内需を拡大する他にないと思われる。ヒトラーが第二次大戦前に採った政策と同じである。そして、ドイツはその資金を地中海諸国などにある程度供与していくことを求められるであろう。しかし、ドイツ国民にとってみると、地中海諸国の面倒を見させられるだけで、国債はドイツ国民が返済する義務を負うことになり、一方的に不利な政策である。ドイツ国民の同意を得るには、何らかの見返りが必要であろう。それは、EU域内でのドイツの指導的地位の制度化、あるいは誇張されたナチスの戦争犯罪の真実を明らかにすることでドイツの名誉を回復することなどが考えられる。 . . . 本文を読む
コメント (6)

ロシアとの科学技術協力の重要性

2010年07月02日 | ロシア・北方領土
現在、ロシアの優位性は二つある。一つは宇宙航空産業である。あれほど劣悪な自動車しか作れなかったソビエト時代のロシアは、同じ輸送機器である宇宙ロケットや人工衛星の分野では傑出した実績を残しているのだ。その技術は現在のロシアにも引き継がれている。これまでロシアはカザフスタン共和国のバイコヌール宇宙基地を利用してきたが、2020年には停止される予定である。代替となるボストチヌイ宇宙基地は2010年建設開始、2015年完成予定であるが、この基地は何故かロシア本土から遠く離れた極東のアムール州にある。中露国境からも近く、安全保障上はあまり好ましくない場所である。宇宙ロケットは緯度の低い場所から打ち上げるほど地球の自転力を利用できて有利であることを考えるならば、ロシア本土に近く緯度も低い北カフカス地域に基地を建設するのが最も有利な筈である。恐らく、ロシアが新宇宙基地を極東に建設することを決定したのは、東アジア諸国、中でも日本との技術協力を念頭に置いているのではないかと想像される。 日本は現在までは自動車産業を中核産業の一つとしてきたが、近未来に電気自動車が普及すればガソリンエンジン技術やハイブリッド技術での日本の優位性は失われ、新興国でも簡単に電気自動車を作れるようになると思われる。その時に備えて、日本は航空・宇宙産業を育成していく必要がある。ロシアが現在獲得している技術水準に日本の工業力が加われば素晴らしい成果が期待できるだろう。 もう一つのロシアの優位産業は核技術とそれに関連する材料科学技術である。常温核融合の電極として利用されるパラジウムには多数の同位体が存在するが、ロシアにはこの同位体を安価に分離・濃縮して単体を得る技術が存在するらしい。これは恐らくウラン235を濃縮する技術の応用であると思われる。日本も北海道大学の水野博士などを中心に常温核融合の高度な技術を有しており、日本とロシアがこの分野で協力することは非常に有益であると思われる。日本・ロシアは自国内に常温核融合の巨大発電所を設置し、長大な送電線で中国に電力を供給する様にするのが良いと思う。これによって日露両国は中国をエネルギー面で完全にコントロールできる様になるからである。 . . . 本文を読む
コメント (7)