国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

1929年以降の世界大恐慌が繰り返されようとしている

2011年10月02日 | 経済
9月1ヶ月で銅価格は23%下落しているという。世界の銅の消費の40%を占める中国で、今年の銅の輸入量が26%減少していることが背景であるという。住宅や工場、鉄道などのインフラ建設が進む中国では銅や鉄の消費が激増しており、既に世界の資源消費の中心は欧米から中国に移転している。その中国で銅の輸入が26%減少しているという事実は、中国経済が大不況に突入していることを示している。 その一方で、欧州ではギリシャ危機が解決に至らず、スペインなどの南欧の大国に伝染する趨勢を崩していない。もはやユーロの維持は不可能であり、近未来に欧州は経済水準に合わせた幾つかの通貨圏に分裂していくことだろう。その過程で劇的な経済収縮が送ることは避けられない。 もう一つの極である米国でも、不動産バブル崩壊による大不況の中で歳出削減努力が始まっている。これは軍備の縮小を意味するが、それによって事実上米国の軍事占領下にあって米国の圧力で米国製品を購入してきたアジア諸国が米国製品購入を縮小する可能性が高い。同時に米国はドル切り下げなどの保護主義政策を採り、アジアからの対米輸出は激減すると思われる。 1929年以降の世界大恐慌が繰り返されようとしている。全ての日本人はこの現実を認識した上で対策を練る必要がある。この大恐慌は前回と同様に、世界覇権の移動(米国一極から多極化へ)と工業製品の過剰生産という二つの構造的問題を抱えている。それを解決するのは戦争しかないと考えている。日本にとってベストの解決策は、韓国の滅亡と中国内陸部の内戦化で東アジアの工場設備が破壊される一方で日本は戦争に巻き込まれないシナリオである。最悪の解決策は、日中戦争で日本が滅亡するシナリオである。戦争後の世界は、日本とドイツとカリフォルニアの三極によるブロック経済になると予想する。 . . . 本文を読む
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世界の工業生産を支配するモンスーンアジア稲作文化圏

2010年12月06日 | 経済
日本企業は安価で熟練した労働力を求めて中国に多数進出している。しかし、これらの進出先を見ると偏りが目立つ。黄河流域以北の畑作地帯への進出例は少ない。その一方で、上海近辺・広州近辺には多数の進出企業が見られる。上海は揚子江、広州は珠川の河口デルタに存在し、いずれも稲作に非常に適した場所である。これに対して、北京周辺には多数の高等教育機関を背景としたIT産業の立地は見られるが、加工貿易型の製造業の立地は少ないように思われる。中国以外の工場立地地域を見ても、韓国・台湾・ベトナム・タイ・マレーシア・最近ではバングラデシュなど、稲作地帯ばかりである。インドは多雨地帯では稲作、少雨地帯では畑作と分かれているが、IT産業で有名なバンガロールは乾燥地帯ではないものの、デカン高原西方の西ガーツ山脈で雨が降ってしまいデカン高原はやや少雨な気候であり、どちらかというと畑作地帯ではないかと思われる。先進工業国としての長い歴史をもつ日本を含めて、加工貿易型の工場は稲作地帯に集中的に立地している傾向があるのだ。世界の農業地域は、耕作に適さない乾燥気候の放牧・遊牧地域、やや湿潤な畑作地域、湿潤な稲作地域に三分される。加工貿易型の産業の労働者としての適性は、稲作地帯>畑作地帯>放牧・遊牧地帯であると考えられる。稲作には、工場労働者としての適性を磨く何らかの要因があると思われる。稲作(水稲)と畑作の最大の違いは、灌漑用水の有無である。水田では多量の水が必要となり、天水のみで不足する場合は河川から灌漑用水が取水され、各水田に供給される。この灌漑用水の工事や灌漑用水の管理が工場労働者としての適性を磨いている可能性があると思われる。また、田植え等の集団作業の経験が関与している可能性もあるだろう。 ただ、東南アジアや南アジアのモンスーン地帯では、乾期と雨期の差を利用した天水に頼る稲作も行われている。これは、エジプトのナイル川流域での農業(ナイル川は増水期と減水期がある)と類似している点で注目される。私は農業の専門家ではないので、これ以上の分析は差し控えたい。しかし、モンスーンアジアの稲作地帯には工場労働者としての適性を磨く何らかの重要な要因が存在するように思われる。この考えが正しいならば、中近東・北アフリカのイスラム圏やサハラ以南のアフリカは永遠に低開発地域としてとどまるのではないかと考えられる。 . . . 本文を読む
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21世紀は電気自動車の時代

2010年09月02日 | 経済
化石燃料、特に石油は既に生産のピークを越えたと考えられており、21世紀はこの石油を如何に節約するかが重大な問題になってくると思われる。現在の日本ではトヨタのプリウスなどのハイブリッドカーが主流であるが、これは過渡的現象に過ぎない。やはり、21世紀の自動車の主流は電気自動車になるだろう。電気自動車ならば、常温核融合、核変換で廃棄物処理コストを減らした原子力発電、豊富に存在する石炭を利用した火力発電などで石油を使用せずに済むからだ。恐らく2050年の日本では、自動車はほぼ全て電気自動車になり、暖房や化学工業原材料はロシアからのパイプラインで供給される天然ガスに置き換えられ、石油が利用されるのは航空運輸・船舶運輸・農業機械用・離島での発電用などの分野に限られるのではないかと想像する。現時点では、電気自動車は非常に高価であり、一般の乗用車に普及するのは先になるだろう。最初に普及するのは、タクシーやバス、宅急便・郵便の集配車などの業務用車両になると思われる。一日に走る時間が長いので高価な初期投資を回収しやすいこと、営業所が既に存在するので充電場所の確保が容易であるなど、有利な条件が揃っている。タクシーはプロパンガス車が多く石油消費削減にはならないが、それ以外の業務用車両の電気自動車化は石油消費削減効果が大きいと思われる。ベタープレイス社のバッテリー交換式電気自動車は非常に良いアイデアである。どんどん普及しても良さそうだが、実験に参加している日本交通は電気自動車の大量導入には踏み切っていない。まだバッテリーのコストが高く採算が合わないのか、あるいは国際金融資本の意向でまだ電気自動車を普及させることができないのか、いずれかであろう。最近、中国がレアメタルの輸出量を削減しておりハイブリッドカーの生産に支障がでる可能性があるとの報道があったが、このレアメタルが必要なのはハイブリッドカー用の小型モーターであり、一般の電気自動車ならば中国産のレアメタルは不要らしい。従って、コストの多くはバッテリーということになる。バッテリーの何が高価かというと、リチウムイオン電池の正極に使用されるコバルトらしい。ただ、このコバルトの使用量を減らす、あるいは使用しない正極が開発されはじめており、近い将来にはバッテリーの価格は急速に下落することになると思われる。電気自動車大普及時代はもうすぐである。 . . . 本文を読む
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長い十九世紀、短い二十世紀、そしてゼロ成長と環境保護・資源節約の二十一世紀

2010年08月17日 | 経済
イギリスの歴史学者エリック・ホブズボームは、19世紀をフランス革命の始まった1789年から第一次世界大戦開戦の1914年まで、20世紀を1914年からベルリンの壁崩壊の1989年までと定義している。この定義に従うならば、21世紀は既に21年経過していることになる。さて、21世紀はどのような一世紀になるのだろうか?19世紀の最初の26年間は世界文明の中心であった欧州で大戦争が続いた。20世紀の最初の31年間も、戦間期を挟んで二度の世界大戦があった。26と31は共に四捨五入すると30になる。従って、21世紀も最初の30年間、つまり1989年から2019年までは大戦争が起きているはずである。現実には、核兵器が存在するために大国間の大戦争はもはや不可能になっている。しかし、外交戦争・経済戦争という形態で現在、世界的大戦争が進行中なのだと思われる。20世紀はパックスアメリカーナの時代であり、アメリカの国際金融資本に操られたソビエト連邦という国とアメリカという二つの大帝国だけが生き残り、その他の帝国は皆滅んでしまった。1911年の辛亥革命で滅亡した清もその滅亡した帝国の中に含めて良いと思われる。21世紀最初の30年間とは、生き残った帝国であるソビエト連邦、その兄弟国である中華人民共和国、そしてアメリカの三大帝国が滅亡する時代になるであろう。ソ連は既に滅んだので、今後は中国と米国の番である。歴史が繰り返すならば、米国と中国はともに、2019年までに崩壊し分裂していくことになると思われる。冒頭のガーディアン紙の記事が述べる通り、21世紀は環境問題や資源枯渇問題が重要になってくると思われる。貴重な資源を節約しつつ、高度な文明を維持し継続させてゆくことが必要とされるのだ。経済成長は必要条件ではないのだ。この21世紀型システムに世界で最初に突入した国は日本である。日本は1989年のバブルの後、経済的停滞に陥りつつも文明を維持している。また、東海道ベルト地帯に人口の三分の二が集中するというシステムは、過密・過疎という深刻な副作用を伴いつつも、輸送コストの縮小、石油需要の削減という点で非常に大きなメリットを有している。日本と並んでドイツも21世紀型の国家である。今後、アングロサクソン国家も日独を真似て、人口抑制・ゼロ成長下での文明維持・貴重な天然資源の節約を目指す様になると私は想像する。 . . . 本文を読む
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来るべき世界経済の二番底、三番底、四番底・・・・

2009年11月12日 | 経済
昨年秋に始まった世界不況は、主要国の財政支出増によって底打ちしており、一番底となっている。しかし、財政支出増が中止される来年には世界不況が再び悪化し、二番底を形成することだろう。世界不況が一挙に起こるのではなく、階段を下りるように起こっているのが現状であるが、この御陰で不況が企業や被雇用者に与えるダメージがより小さくなっていると思われる。これも世界支配階層が決定したことなのだろう。だとすれば、今後世界不況の三番底、四番底・・・・・が起きると予想される。中国元のドルペッグ離脱、欧米の商業用不動産の価格下落、米軍のユーラシア大陸からの撤退に伴うドル安などが階段を下りるように起こる世界不況の原因になりうるだろう。その中でも、最も段差が大きいのが、田中宇氏の言うように、中国元のドルペッグ離脱であろう。 現在の世界では中国が疑似ドル圏になっており、これがドルの下落を緩やかなものにしている。これが米中G2体制の本質である。しかし、この体制が永遠に継続することはない。紙切れに過ぎないドルを積み上げる現在の体制が維持されているのは単に中国が経済を維持するのに役立っているためである。ドル安が進むと中国国内でもインフレが起こるデメリットもあり、ある時点で中国はドルペッグからの離脱を決定するだろう。その際には、田中宇氏の言うように、国際機関での中国の地位の上昇も伴っていることだろう。 不況が階段を下りるように深刻化するにつれ、先進国では途上国からの輸出を阻止する傾向が強まると予想される。安価な途上国産品の輸入を止めて自国産品に置き換えれば失業問題を改善できるからだ。環境問題、安全問題など、理由はいくらでも見つかる。この保護主義のため、輸出依存型経済の中国は大打撃を受ける。本来ならば内需中心型経済に移行すべきなのだがそれが出来ない以上、現在の中国の体制は崩壊せざるを得ない。その後には、国内の巨大な貧富の差が国を分裂させることになり、沿海部富裕地域が独立してゆくことだろう。日本は沿海部に集中的に投資することで中国国内の貧富の格差を拡大させることを続けてきており、将来の中国分裂を促進することがその目的であったのだと思われる。 . . . 本文を読む
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世界恐慌突入で日本は、世界は、どう変わるか?

2008年10月27日 | 経済
来年度の米国の財政赤字は軽く一兆ドルを超える膨大な金額になると言う。日本政府はどうやら円建ての米国国債発行を要求する方針を固めた様である。同時にユーロ建ての米国国債も発行されるかもしれない。このことは、米国が唯一の基軸通貨国であった時代の終焉と、複数の基軸通貨が並立する多極時代の始まりを意味すると思われる。日本は中国・ASEAN・オーストラリア・インドなどの近隣地域を対象に、マーシャルプランの様な大規模な支援(円借款)を行い、これらの地域の内需拡大を促すべきだろう。また、域内貿易も円建てで行うことで円経済圏を確立していくべきであろう。 さて、世界恐慌の始まりが今年として、これは一体いつまで続くのだろうか。これは地域によって、国によってかなり異なると思われる。日本の資産バブル崩壊が処理されるまで十数年かかったことを考えると、米国や欧州の資産バブル崩壊も、少なくとも同じぐらいの期間は継続するのではないかと想像される。中国も資産バブル崩壊に加え外需激減の打撃を受け、少なくとも数年間は経済成長はあまり期待できないだろう。ただ、日本だけは世界恐慌を早期に離脱できるのではないかと私は想像している。その根拠として、第一に、化石燃料の次のエネルギー源である常温核融合の研究で日本はトップレベルにあり、来るべき常温核融合の実用化が巨額の投資や内需を生み出す事が挙げられる。第二に、日本では今回の世界恐慌で資産バブル崩壊、特に不動産バブル崩壊のダメージが欧米に比べて圧倒的に小さいことが挙げられる。第三に、ベビーブーム世代が1950~1960年代にわたる米国や欧州と異なり日本では1946-50年に集中しており、彼らが現在続々と定年退職しつつあることである。このため、日本では大恐慌に伴う失業増加が少なくて済む。第四に、大規模な円借款によって中国や東南アジアなどの途上国がいずれ成長を取り戻すことが期待できる。それは、米国経済や欧州経済の立ち直りよりも早期に起こるだろう。まとめると、日本は世界恐慌の打撃から比較的早期に立ち直り、常温核融合の技術を中心に成長を取り戻すのではないか、というのが私の想像である。 . . . 本文を読む
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米国の金融バブル崩壊で必要となる救済額は1500~2500兆円

2008年10月20日 | 経済
ブログ「貞子ちゃんの連れ連れ日記」では、今回の金融危機で1500兆円規模の救済額が必要になると推定している。根拠は、全世界にばらまかれた金融派生債券の総額が六京円、1998年に破綻したLTCMの場合「運用金額の2.5%相当の救済額」が必要だったことである。三井住友銀行の宇野大介氏は、米証券化商品をはじめとする不良資産からの損失額は米国国内総生産の2倍弱に相当する25兆ドル=2500兆円規模になると推定している。日本のバブル崩壊に伴う損失が国内総生産の2-3割だったのと比較すると、米国のバブル崩壊はスケールがかなり大きいと言うことができるだろう。金融派生債券は米国だけではなく、欧州の金融機関も大量に購入している。その割合は不明だが、仮に米国と欧州で半々とすると、米国政府が支出すべき救済額は750兆円~1250兆円程度ということになるだろう。現在の米国国債の発行残高は約500兆円であるが、米国政府はそれを2.5~3.5倍に増加させる必要が出てくることになる。その他に、経済恐慌突入を回避するためのニューディール的政策の資金としての国債発行も必要になるだろう。近未来の欧米諸国はこの天文学的な国債発行を支えるという困難な事態に立ち向かうことになると思われる。中でも最も困難なのは、双子の赤字を伴っており借金を返済する能力が乏しい米国である。米国国民は消費を縮小して貯蓄を大幅に増やさねばならないが、それは米国の内需を大幅に縮小させ、恐慌を更に深刻なものにしてしまうはずだ。それにしても、1500兆円~2500兆円の金はどこに消えてしまったのだろうか?私は、これは2001年から2008年まで(丁度ブッシュ政権の時期に相当する)の期間、資本主義経済システムを維持する為のコストだったのではないかと想像する。1997~2000年のITバブルが破裂した後、何も手を打たなければ米国経済はドル安・株安・債券安のトリプル安となって大恐慌に突入し、資本主義経済システムは崩壊する筈であった。1930年代の大恐慌と同様に米国の国内総生産は40~50%程度縮小していたかもしれない。その恐慌突入を先延ばしにするために、一年あたり200~300兆円程度の金が金融派生債券を通してウォール街で生み出され、資本主義システムに投入され続けてきたのではないか、と言うのが私の想像である。 . . . 本文を読む
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世界金融恐慌の始まり

2008年09月16日 | 経済
米国のポールソン財務長官がなぜリーマンブラザーズを破綻させたのかは謎である。ブログ「株式日記」では、「もともとリーマンブラザースは、ホリエモンに資金を提供したように、いかがわしい部分があり、ポールソンはリーマンのあくどい営業実態をよく知っていたのだろう。だから一気に潰したほうがいいと判断したのではないか?」と分析している。田中宇氏も「14日夜、ニューヨークのリーマン本社ビルからは、社員たちが次々と大きなカバンに書類を詰めて持ち出した。本社前に集まった報道陣から、立ち去る社員たちに対し、カバンの中の大量の書類は何かと質問が浴びせられたが、箝口令が引かれており、誰も答えなかった。会社側の指示で、重要書類(倒産後、法的な問題となりそうな取引の書類?)を家に持ち帰って焼却処分するのかもしれない。リーマンのような投資銀行は、当局の監督をほとんど受けていないので、証拠となる取引書類がなくなれば、不正行為があっても暴露されないまま倒産できる。」とフィナンシャルタイムズ紙の記事を参考にして述べている。ただ、私のような素人の目から見ると、投資銀行はどこもいかがわしい業務を行っており五十歩百歩ではないかと感じる。このままでは大手金融機関の連鎖破綻と大恐慌は避けられないだろう。これは私の想像だが、米国民に衝撃を与えるような大手金融機関の破綻(AIGやシティバンクなど)を起こした上で公的資金を大々的に投入するシナリオができているのではないか。そして、破綻させるべき金融機関と生き残らせるべき金融機関の線引きも既に行われているはずである。 田中宇氏の言う様にポールソン財務長官が自滅主義者であるかどうかはわからない。しかし、結果的に欧米の金融覇権体制が弱体化し、米国が普通の大国に転落し、世界が多極化していくことは確かだ。そして、それと同時に米国の没落がもたらす対米輸出減少や資源価格下落が中・印・露などの新たな極となるべき国々の経済にも大きな打撃を与え、少数民族問題なども加わってこれらの国々の政治をも混乱させる可能性が高いだろう。特に、常温核融合が将来エネルギー源として用いられるようになれば、高コストの化石燃料の輸出に依存したロシア経済は致命的打撃を受けることも考えられる。世界の多極化はスムーズには進行せず、全世界的な政治・経済の混乱の中で徐々に現れてくるのではないかと想像する。 . . . 本文を読む
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米国発世界恐慌の後に起きることは何か?

2007年08月22日 | 経済
ブログ「晴耕雨読」が、米国が対外債務を返済不能であることに触れている。近未来に起きるであろう米国発世界恐慌に際して、米国の膨大な経常赤字を穴埋めする日中両国や中東産油国からの対米債券投資が停止することは避けられないだろう。そして、米国は経常赤字分だけ内需を縮小させるという荒療治を経験することになる。その際には、米国が何らかの形で外国の保有する国債の債務不履行を実行する筈である。具体的に何が起きるかを想像してみよう。 1.まず、米国国内で多くのヘッジファンドや銀行・投資銀行・機関投資家が経営危機に陥り、米国政府がそれらを一斉に国有化することが想像される。民間企業の多くも破産状態に陥り、国有化される可能性がある。同様の事態は英国やスペインでも起きるだろう。場合によってはドイツ・フランスや日本でも金融機関の国有化が起きるかもしれない。 2.米国の機関投資家の国有化によって、米国の民間セクターが保有する膨大な対外債権が米国の国有資産に変化する。また、金融派生商品や住宅ローン債券の発行者も米国政府に統一されることになる。そして、日本・中国・中東産油国などが保有する膨大な米国債券が米国政府の保有する対外債権と相殺される。この過程で、米国企業や米国の機関投資家が保有する日本の大手企業の株式の大部分が日本政府の保有財産に変化すると思われる。 3.それでも残る米国の対外債務については、事実上棒引きにせざるを得ない。ただ、日本・中国や中東産油国は何らかの見返りを要求すると思われる。例えば、イランについてはクルディスタン・アフガニスタン・パキスタン北西部などを含む大ペルシャ国家建設の容認が見返りであり、アラブ諸国に対してはイスラエルの滅亡が見返りではないかと想像される。日本については核武装の容認・西太平洋での覇権の容認・第七艦隊の全部又は一部の日本への譲渡などが考えられる。 では、日米間で見た場合のこの問題の争点は何だろうか?それは、米国の民間企業や機関投資家、巨大財団(ロックフェラー財団など)が保有する対外債権の国有化と米国の対外債務との相殺に国際金融資本が抵抗することである。国際金融資本は何とかして日本株や日本国内の不動産を保有し続けて日本で生き残ることを狙っているはずである。 . . . 本文を読む
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円相場の行方:三分の二の法則より、今回の円高でドルは五十円まで暴落する!!

2007年08月18日 | 経済
2005年のソニーバンクの外貨預金セミナー がニクソンショック後のドル円相場の変動を簡潔にまとめている。今後の円高の目標数値としては38円と67円という二つの数字が挙げられている。ただ、金融関係者が真実を一般大衆に伝えることはあり得ないと思われるので、この二つの数字はあてにすべきではないだろう。 私は為替相場取引に手を出したことはない素人だが、ニクソンショック以後の円相場の動きには明確な規則性があると考えている。以下にその規則と、それから予想される円高のピーク値を述べる。 第一次円高:1971年360.00円→1978年175.10円 第一次円安:1978年175.10円→1982年278.50円 第二次円高:1982年278.50円→1988年120.45円 第二次円安:1988年120.45円→1990年160.35円 第三次円高:1990年160.35円→1995年079.75円 第三次円安:1995年079.75円→1998年147.64円 第四次円高:1998年147.64円→200?年???.??円 上記の数字の羅列を見ると、円高のピーク値は約180円→約120円→約80円と、常に前回ピークの三分の二の数値になっている。私はこれを『三分の二の法則』と名付けている。この法則に従えば、第四次円高のピークは80円の三分の二である53.3円が目標となる。実際にはきりのよい数字で50円がピークになり、そこで円高が円安に反転するだろう。 一方、円安のピーク値は円高のピーク値と比較して規則性に乏しい。ただ、前回の円高ピークの三分の四倍の水準までは必ず値を戻しており、第一次及び第三次円高ではその後大きくオーバーシュートしている。従って、第四次円安のピークは70円以上となるだろう。 上記の1998年の急激な円高の際には、金融派生商品の取引を行っている企業は少なかったが、それでも30円程度という急激な円高が発生している。911事件でこの時の損失のデータが失われたことは偶然ではないだろう。現在では数多くの企業が金融派生商品に手を染めており、円キャリートレードが巻き戻される際の円高は前回の比ではない様に思われる。一ドル50円は一見突拍子もない水準だが、そこまで行かないと米国の過剰消費体質は治せないだろう。 . . . 本文を読む
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不思議の国のムーディーズ:金融危機の迫る米国で大手銀行の債務格付けを逆に引き上げ!

2007年03月09日 | 経済
ミッシュ氏は「ムーディーズは不思議の国の鏡の後から信用リスクを評価しているようだ。驚くべきねじ曲げられた論理によって、ムーディーズは信用リスクの上昇を祝福している。格付け引き上げによりこれらの大銀行の借り入れ費用は低下するが、その結果もし救済が必要になった場合の費用は増加するだろう。ムーディーズ社のゲーリー・バウアーはこれを「現実の反映」と主張するが、ジョナサン・ハッチャーは日本をモデルとして取り上げた上で、too big to fail(大きすぎて破綻させられない状態)なのだ、と言っている。」と皮肉っている。 ミッシュ氏とジョナサン・ハッチャー氏のコメントが全てを示している様に思われる。1990年代に日本の多くの金融機関や途上国の債務格付けを意図的に暴落させて金融危機を作りだしたムーディーズは、金融危機が自国に迫ると逆に格付けを引き上げ始めたのだ。国際金融資本のダブルスタンダードをこれほど明確に示すニュースはない。また、この格付け基準変更はFRBを含めた米国政府・国際金融資本の合意であるとも考えられる。格付け引き上げの対象にならなかったシティグループやウェルズファーゴが破綻の危機に直面した場合に支援しないことを意味している可能性もあるだろう。ジェフェリーズ社の件では、投資銀行の投資判断が如何に詐欺的かということもわかる。ブッシュ大統領の3月8日から14日までの中南米訪問の間は暴落阻止チームが踏ん張るとすれば、Robert Pretcherの「3月15日に気を付けろ!」という予想どおりに米国の金融市場の破綻が起きるかもしれない。 . . . 本文を読む
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米国が昨年3月からM3公表を中止したのはNY連銀からの株式先物買い支え資金の大量貸し出しを隠すため?

2007年03月06日 | 経済
記事「市場の潤滑化:暴落防止チームによる秘密の価格操縦」では、昨年3月に米国がマネーサプライ指標の一つであるM3の公表を中止した理由は、ニューヨーク連銀からの株価平均先物の買い支え資金貸し出しを隠すためではないかとの指摘がある。株価平均と比べてその先物を買い支えるのに必要な資金はずっと少ない筈だが、それですらマネーサプライ指標を大きく動かしてしまうほど莫大な資金が投入されているのかもしれない。 CALM BEFORE THE STORM(嵐の前の静けさ)と題されたグラフを見ると、ボラティリティ指数(株価の変動性)、途上国市場の金利のスプレッド(途上国の国家債務返済能力の低さに対応する金利上乗せ分)などのリスクプレミアムが昨年夏以降急激に縮小している。また、同時期から株価は一本調子に上昇し始めている。これは恐らく、「暴落防止チーム」による株価指数先物の買い支えの効果なのだろう。2月28日の不自然な反騰や3月5日の値下がり幅の不自然な小ささも恐らく「暴落防止チーム」の買い支えなのだろう。 しかしながら、この株価買い支えを永遠に継続するのは不可能だ。低所得層向け住宅ローンの焦げ付きが激増しており、米国の金融機関はリスク全般に対して敏感になっている。低所得者層向け住宅ローン以外の高リスクの貸し出しに対するリスクプレミアムも近い将来に急激に増大するのは避けられない。それは、負債返済能力の低下した多くの米国大企業の経営を直撃して破綻に追い込むことになる筈だ。近い将来の米国の恐慌突入はもはや避けられないだろう。  あとは、何が恐慌突入の引き金になるか、である。恐慌発生後の事態を自国に有利にするためにも、米国政府は主要国の政府や中央銀行と綿密に打ち合わせた上で恐慌突入のシナリオを準備している筈である。ケネディ暗殺や911自作自演テロが綿密な計画を立てた上で実行されたと想像されるのと同様のことである。その引き金は中東・東アジアなどでの軍事紛争、米国国内での暴動や大企業破綻なども考え得るが、2月27日の米国株価の急落がシステム障害によるものであるとの一部報道もあったことを考えると、米国国内のパソコンの夏時間未修整による金融市場の混乱(3月12日に起きることになるはず)が一番可能性が高いのではないかと想像する。 . . . 本文を読む
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3/5-8のポールソン財務長官日中韓訪問、3/5-16の全人代での物権法案、ブレア首相の巨額融資疑惑

2007年03月04日 | 経済
ブログ「Mish\'s Global Economic Trend Analysis」では、「Critical Spot for the Yen」と題する記事で、ごく近い将来に円キャリートレード取引が解消されてドルから円への資金の大量流出と急速な円高ドル安が起きると予想している。対ユーロの円相場も最安値圏に達しており、これ以上の円安は考え難い。 2月27日の上海市場発世界同時株安によるヘッジファンドの損失に加え、米国の高金利型住宅ローン市場の焦げ付きで米国の金融機関が大きな損失を被っており、米国の金融機関は急速に貸し出し余力を失いつつあると思われる。この現状でドルから円への資金の大量流出が起きることは、円キャリートレード解消に伴う巨大なヘッジファンドの損失を意味すると考えられ、米国の大手金融機関の多くが一斉に破綻する様な事態も考え得るだろう。 ポールソン米財務長官はゴールドマンサックス証券出身であり、国際金融資本の利益を代表する人物であると想像される。国際金融資本の利益とは、国際金融資本の所有する私有銀行であるFRBが国際基軸通貨ドルを発行する体制を可能な限り維持することであり、それが不可能ならば可能な限り小さな損失で事態を収束させることであると想像される。ゴールドマンサックス証券の経営が揺らぎかけているという危機的状態で予定されている3月5日からの日中韓三カ国訪問は、非常に重要な意味合いがあると想像される。恐らくは、膨大な米国国債を保有するこの三カ国と交渉してドルの価値を維持することであろう。しかし、日本では今後も短期金利を引き上げるという方針が日銀関係者から主張されており、日米間の金利差によりドルへの資金流入を確保する政策はもはや継続不可能かと思われる。米国にはもはや、巨大な軍事力以外の売り物はなくなってしまった。例えば、ポールソン米財務長官と日本政府との間で「日本に在日米軍や太平洋艦隊を貸し出す事の引き替えに日本の保有する米国国債の一部を棒引きにする」といった秘密交渉が行われる可能性も考えられる。来るべきドル安の程度はこの東アジア三カ国との秘密交渉の結果で決まるのではないだろうか。 . . . 本文を読む
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非合理的な「利息」に支えられた近代経済システムは中国バブルの破裂により終焉しはじめた?

2007年02月06日 | 経済
◆「利息」は経済社会にとって非合理なもの - 利息取得の禁止で「近代」は終焉を迎える - 投稿者 あっしら 日時 2002 年 10 月 12 日 通貨を貸して、貸した通貨額+利息(通貨額)を得るということがどういうことかを考えてみます。 ● 利息の源泉 通貨自体が新たな通貨を生み出すことはありません。 借りた通貨を元手に生産活動か商業活動を行って、他者から元手以上の通貨を稼 . . . 本文を読む
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石油ドル体制崩壊後の世界通貨システムはどうなるか?

2007年01月21日 | 経済
1月19日の「知識は使い方で差がつく」という記事は、常温核融合の普及と共に石油ドル体制が徐々に崩壊することを示していると思われる。重要なのは化石燃料よりもコストが安いことだ。日本は常温核融合の理論面だけでなく実用化でもトップを走っているとされており、日本企業が中心となって世界のエネルギー革命が進行することだろう。 「水素抽出のノウハウをもつ組織は、独自通貨の発行権を単独でもつだろう」という一文は意味深である。現在の国際基軸通貨であるドルを発行するFRBは、チェース・マンハッタン銀行やシティバンク等の国際金融資本系民間銀行に保有されている。例えば、三菱重工・トヨタなどの日本企業が出資した常温核融合企業が、その技術力を背景にして国際基軸通貨を発行するという計画があるのかもしれない。常温核融合企業が発行した社債がその高い信用度故に、スイスフランや金地金と並んで国際基軸通貨の一つ(貿易決済のための各国中央銀行の準備通貨)として使用されることは十分考えられる。更に、その社債が常温核融合によって取り出されたエネルギー一単位との交換を保証するものとなれば、石油ドル体制や金本位制に近い価値の裏付けを持つことになるだろう。核変換の技術は金や白金などの貴金属を安価な元素から作り出す可能性を秘めており、それ故に単純な金本位制の復活はあり得ないと思われる。また、円やユーロがそのままドルの次の国際基軸通貨になるということは「ドルの同じ轍を踏む」ことであり、避けるべきと考えられているのだろう。 問題となるのは、日本以外の国(例えば中国)が技術革新によって日本を上回る効率の常温核融合を実現する場合である。仮称「日本常温核融合」は価格競争に敗北して破綻し、仮称「中国常温核融合」の社債が新たな国際準備通貨の地位につくことになるだろう。更に、常温核融合の技術が全世界に広まり誰でもできるようになれば、「常温核融合技術」を信用の裏付けとするシステムは成立しなくなるだろう。このように、来るべきシステムは決してバラ色ではなく、日本が諸外国に対して常に技術面でのリードを保ち続けることなくしては成立しない不安定なものである。それは、石油ドル体制が中東油田という有限の資源と核不拡散条約による日独の核武装の阻止という不安定な基礎を元に成り立っていたことに似ているかもしれない。 . . . 本文を読む
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