国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

ロシア側が並行協議方式での交渉の用意があると表明。北方領土問題は急進展するか?

2008年01月26日 | ロシア・北方領土
北方領土問題で歯舞、色丹両島の引き渡しと国後、択捉両島の帰属問題を並行して交渉する並行協議方式での交渉の用意があると元ロシア駐日大使が表明した。並行協議方式はかつて鈴木宗男氏が主張した方式であるが、1956年の日ソ共同宣言が歯舞色丹の返還のみを定めており日本側に国後択捉の領有権の根拠が薄いことを考えると全く正当な交渉方針である。折しも2月7日の北方領土の日が近づきつつあるが、日本政府は直ちにロシアと交渉に入り、四島との方針にはこだわらずに二島+αの線での合意を結ぶべきであろう。 今北方領土問題が解決されるならば、それは日韓関係に大きな影響を与えることになる。日本が抱える三つの領土問題のうち、尖閣諸島は日本の実効支配下にあり、北方領土問題が解決されれば、残る領土問題は竹島問題のみとなる。竹島の日本への帰属はサンフランシスコ平和条約によって確定しており、日本は韓国に対して竹島の全面返還を求めていくことになるだろう。そして、竹島問題を国家団結の象徴にしてしまった韓国では国民の間に強硬な反日感情が広まり、李明博新大統領が目指す日韓の友好関係樹立は完全に失敗することだろう。韓国では反日暴動が発生し、それを理由に在留日本人が全員韓国を脱出した後で北朝鮮が南進するというような、日本にとって非常に好ましいシナリオもあり得るかもしれない。 日本の政治家は表向きは李明博新大統領の友好的姿勢を大歓迎している。しかし、日本が第二次大戦での敗北という犠牲を払って韓国を切り離したことを考えるならば、新たな日本への事大ともいえるこの政策は日本にとって大きな脅威であり、何としても失敗させねばならないのだ。竹島問題は歴史認識問題と並んで日韓関係を対立させるための切り札であり、今こそそれを使うべき時であるように思われる。 ソ連のゴルバチョフ政権はドイツ統一と同時期に北方領土返還を考えていたが、日本側が断ったという噂がある。それが本当かどうかは分からないが、もし1990年代はじめに北方領土問題が解決されていたら、韓国でも竹島を日本に返還して良好な日韓関係を築き日本の衛星国の地位を獲得しようという外交戦略が採られていた危険性がある。竹島問題の解決を阻止するために北方領土返還が先送りされた、という可能性は考えておくべきかもしれない。 . . . 本文を読む
コメント (16)

調査捕鯨問題での日豪間の深刻な対立が意味するものは何か?

2008年01月21日 | 東南アジア・南アジア・オセアニア
オーストラリアにとっては自国の十倍の人口を持つインドネシアは大きな脅威であり、自国に近いインドネシア東部の分離独立を支援することは国防の立場から譲れない政策であっただろう。1997年のアジア金融危機、1998年のスハルト政権崩壊、1999年の東チモール独立はいずれもハワード政権時代に起きており、ハワード政権が国際金融資本に依頼してそれらを実行したのではないかと私は想像している。その後もインドネシアを分裂させたいオーストラリアと、対抗するインドネシア・日本連合の間で対立が継続し、2007年3月にやっと和解に達したのではないかと想像する。そして、その和解によりハワード政権は役目を終えたのだろう。 米英のシーパワーが七つの海を支配していた時代が終わり世界が多極化し始めたことで、韓国やイスラエルと同様にオーストラリアも1990年代に安全保障上の危機に追い込まれた。米国は一万㎞以上、欧州は二万㎞近く離れており、いざというとき助けにならないからだ。その為、オーストラリアは最大の仮想敵国インドネシアを攻撃していたのだと想像する。宣戦布告は行われていないものの、実際に起きたこと(東チモールへのオーストラリア軍展開)は戦争に近いのだ。 では、実際には深刻な対立があったと想像されるハワード首相時代の日豪関係はなぜ表面上良好だったのだろう?それは、日豪間の対立を隠蔽する目的ではないかと私は想像する。対立の存在が公になることは戦略上不味いからだ。そして、日豪間の対立終焉と共に成立したラッド政権では日豪両国は非常に良好な関係にあるが、それを隠蔽するために調査捕鯨問題での対立が演出されているのではないかと私は想像する。 馬鹿げた妄想だと笑う人もいるかもしれない。しかし、現代の世界では派手に報道される対立の多くは友好国間の演出による合作劇(米国とイラン、日本と北朝鮮、冷戦時代の米国とソ連など)であり、真の対立は一見友好にみえる二国間(米国と英国、米国とイスラエル、英国とドイツ、日本と韓国など)に存在することが非常に多い様に思われる。対立の存在、友好関係の存在を隠蔽することは、敵の目をくらませる為に外交戦略上非常に重要になっているのではないかと想像する。 . . . 本文を読む
コメント (14)

李明博新大統領の空想的外交政策の行方

2008年01月18日 | 韓国・北朝鮮
1月11日の中央日報で韓国の李明博新大統領の外交政策が紹介されている。これを一言で言うと、日中二大国にサンドイッチされた苦境から脱出するために米国とロシアを最大限に利用するというものだ。しかし、この外交政策は韓国には非常に有益だが、米国とロシアにとっては損害はあっても利益はないものであり、実現する可能性はまずないだろう。この空想的外交政策は早期に破綻し、韓国は米国の次に日本への事大を始めることだろう。しかし、日本政府は歴史教科書問題や竹島問題を煽り立てて韓国の反日世論を刺激して日本への事大を阻止することだろう。日本への事大が失敗した韓国は結局、現実的外交への方針転換を余儀なくされると予想する。 韓国の現実的外交とは、日中二大国に挟まれた小国という立場をよくわきまえ、日中両国に損害を与えないこと、日中両国と対立しないことを最優先に韓国の経済政策や文化政策、外交政策などを組み立てることである。これらの政策転換はいずれもコペルニクス的なものであり、通常の手段では国民の反対意見のため実行困難であろう。敗戦(対日戦争を実行してわざと負けるシナリオを含む)の衝撃か、あるいは主要企業が軒並み破産するような大恐慌、といった国民に大きな衝撃を与える事件が起きないと実行は難しいと想像する。そして、その様な危機が訪れた際に韓国国民は団結することができず、国内が騒乱状態になって結局北朝鮮に併合される可能性が高いだろう。 日本人拉致問題と核開発問題で日本と北朝鮮は一見対立している様に見える。しかし、実はこれらは日朝両国の合作劇であり、裏では日本と北朝鮮は親密な関係にあるのではないかと私は想像している。中国にとっても、威張り散らし文化を盗む韓国人よりも北朝鮮人の方が望ましい隣人であることは間違いない。北朝鮮は「日中二大国に挟まれた小国という立場をよくわきまえ、日中両国に損害を与えないこと、日中両国と対立しないことを最優先に」して作られた、日中両国にとって理想的な緩衝国家なのだ。日本と中国は韓国を滅亡させて北朝鮮に吸収させることで合意しているのではないか。そして、その滅亡という運命から逃れようと必死になっているのが李明博新大統領を含む韓国の支配階層であるように思われる。 . . . 本文を読む
コメント (15)

日韓シャトル外交の復活を日本が拒否したのは何故か?

2008年01月11日 | 韓国・北朝鮮
1月9日の朝日新聞で、日韓シャトル外交の復活を日本側が否定したという興味深い記事があった。韓国の外交通商省当局者は9日、「今後、可能な限り首脳外交を活発に行うことを大まかな方向性として意見交換した」と述べたという。韓国側がシャトル外交の復活を強く求めたのに対して、日本側はそれに同意せず、結果的に意見交換のみにとどまったということだろう。では、日本側がシャトル外交の復活を拒んだ理由は何だろうか? 最も可能性が高いのは、日本政府が今年中に日朝国交回復を実行する予定であり、今後の朝鮮半島政策は韓国ではなく北朝鮮を中心に行うという方針が固まっているからではないだろうか。日韓シャトル外交の復活拒否は日本から北朝鮮への友好のメッセージであったと想像する。 第二次大戦後、共産主義のランドパワーを資本主義のシーパワーが包囲するという冷戦体制の元で日本政府は韓国支援を余儀なくされ、大東亜共栄圏の正統な後継国家の一つである北朝鮮と日本の関係は朝鮮総連や日本社会党といった隠れ蓑を通じて細々と維持されてきたのだと思われる。しかし、米国の世界覇権崩壊とそれに続く世界の多極化は朝鮮半島の冷戦状態を打ち破り、日朝の友好関係が表面に出てくることが可能になると想像される。それと同時に日本は米国に強いられてきた韓国支援を打ち切り、竹島問題や知的財産権問題などでより強硬な姿勢に出て韓国を政治的・経済的に追い込むことも可能になると想像される。それは李明博新大統領の対日宣戦布告とそれに続く敗北によって日本が韓国を衛星国として背負い込みかねない危険性を秘めている。 . . . 本文を読む
コメント (19)

「コソボ独立後の支援はするが、国家承認については加盟各国の判断に任せる」というEUの無責任さ

2008年01月09日 | 欧州
コソボの独立を巡るEU内部の調整が大詰めを迎えているようだ。しかし、自国内に分離独立運動の芽を抱えるスペイン・ルーマニア・スロバキア・ギリシャ・キプロスはコソボ独立に反対ないし慎重論の構えを崩していない。 1月8日の朝日新聞では、「EUとしてコソボ独立後の支援はするが、国家承認については加盟各国の判断に任せる」という線での合意を狙うという驚くべき妥協案が述べられている。つまり、独立したコソボをスペイン・ルーマニアなどが国家として承認しないことを容認するというのだ。これはあまりに無責任な妥協案であり、そのような提案が存在すること自体、EUが本気でコソボ問題に取り組んでいないことを示している様に思われる。では、EU諸国の真意は何だろうか? ボスニア紛争が多くの死傷者を出した上で解決に向かいつつあることからも分かるように、民族問題は一度戦争を起こして多くの犠牲者を出さない限り解決できない傾向がある様に思われる。戦争の痛みが当事国を平和的解決に向かわせる原動力になるのである。EU諸国はそのような観点からわざとコソボの独立の意志を煽り、セルビアと激突させることを狙っている様に感じられる。 仮に戦争になったとしても、コソボの住民の大部分がアルバニア系であることから、コソボの独立を撤回させることはセルビアには困難だと思われる。セルビアにできるのは、コソボの一部をセルビア領にすること程度であり、戦争の落とし所はその様な条件闘争になるのではないだろうか。 1月20日にはセルビアで大統領選挙が予定されており、民主派と民族派が争っている。選挙戦によりセルビア国民の民族意識が鼓舞されることで、2月にも予想されるコソボの独立宣言の後にはセルビアとコソボの間で戦争が勃発するのではないかと私は想像している。セルビアがルーマニアと国境を接している事を考えると、ロシア軍がルーマニアを経由してコソボに介入するという可能性もあるかもしれない。 . . . 本文を読む
コメント (4)

北朝鮮との国交正常化の意志を鮮明にした日本:李明博新政権への痛烈な一撃

2008年01月01日 | 韓国・北朝鮮
米国の世界覇権崩壊後は日本が東アジアでその地位を受け継ぐと想像されることを考えるとき、不法占拠した竹島の領有と反日を国家団結の象徴にしてしまった韓国国民の民意は韓国が日本の衛星国の地位を獲得するのに大きな障害となっている。一方、北朝鮮は日本との間に領土問題を抱えておらず、その政府は旧帝国陸軍以来の日本大陸派と強い繋がりを持ち、更に金正日という国家団結の象徴を既に保有するために反日政策をとる必要もない。政治的に見たとき、北朝鮮は韓国より日本に近い上、韓国の民度を考えるなら民主主義の存在は重荷でしかないのだ。では、経済的に見てみよう。日朝貿易とは異なり日韓両国間の貿易は盛んで、日本は多額の貿易黒字を稼ぎ出している。しかし、韓国の主要輸出産業は鉄鋼・造船・自動車・液晶パネル・半導体など、日本と激しく競合する分野に集中している。同じ東アジア工業国でも日本との競合の少ない台湾とは対照的であり、日本にとって韓国の製造業の存在は決して有益ではないのだ。このように考えると、日朝国交正常化は韓国にとって悪夢に他ならないだろう。そして、12月19日の李明博大統領候補当選と時期を同じくして日本が急速に日朝国交正常化に進み始めたことは、対日関係改善を狙う李明博氏に対する「韓国切り捨て」通告であると想像される。韓国が今後、地域覇権国日本の衛星国の立場を獲得し先進工業国であり続けるためには、もはや「対日戦争を実行しわざと負けることで竹島問題や歴史認識を巡る韓国国民の日本観をコペルニクス的に転換する」という「面白い発想だが」さんの指摘する方法以外には残されていないように思われる。李明博新政権は竹島問題などできっかけを見つければ対日戦争に踏み込むかもしれない(しかし、韓国が対日戦争で敗北しても日本には韓国を衛星国化する意志が無く、結果的に韓国の滅亡と北朝鮮による統一は避けられないように思われるが)。また、日韓戦争の有無に関わらず韓国国内には北朝鮮政策を巡って深刻な政党間対立と地域間対立が存在する。今後予想される金大中・盧武鉉両氏の逮捕・死刑宣告をきっかけに韓国は内乱状態から北朝鮮の武力介入、統一に至る可能性もある。その様な朝鮮半島有事に対応するために、日本は朝鮮半島専門家を外務省の主要ポストに配置したのではないかと想像する。 . . . 本文を読む
コメント (26)