国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

北京から西安への遷都計画について考える

2009年01月03日 | 中国
ブッシュ大統領が洞爺湖サミットでの日米首脳会談中の雑談で福田首相に「中国は北京から西安へ遷都を検討している」と語ったという。 しかし、私はこの情報の信憑性に疑問を持っている。というのも、中国では黄河流域で水不足が深刻化しているが、西安市はその黄河流域に位置しているからだ。都市住民が水洗トイレ等で膨大な水を消費することを考えれば、黄河流域に新たな大都市を建設することは下流の水不足を悪化させるだけである。私は、中国側がわざと西安遷都という偽情報を流したのではないかと疑っている。 ただ、北京市が近い将来に砂漠に飲み込まれかねない事を考えると、遷都の必要性は十分考えられる。では、中国にとって理想的な遷都先はどこだろうか? 首都への国民のアクセスのしやすさを考えると、首都は国土の中心に近い場所が望ましい。中国の国土の中心はどこかを考えてみよう。中国の国土は大興安嶺・雲貴線によって東方の低地と西方の山岳地帯に分けられ、秦嶺・淮河線によって北方の乾燥した麦作地帯と南方の湿潤な米作地帯に分けられる。この二本の線が交わる所は地理学的な中国の中心と言える。河南省の南陽市が丁度そこに位置しており、揚子江の支流である漢水の流域であること、漢水の上流側に丹江口ダムがあることから水不足の心配もない。 北京・上海・広州という三大都市から等距離にある内陸都市という観点からは武漢が挙げられる。武漢は三大都市から約1000km離れており、時速250kmの高速鉄道が出来れば4時間で結ばれる。揚子江の水運を利用できるのもメリットだが、洪水、特に三峡ダム決壊時には大打撃を受ける欠点がある。武漢周辺で揚子江流域でない地域というと、揚子江の支流である漢水の流域になる。 これらを合わせると、私の考える理想的な中国の遷都先は、南陽市から武漢市の間の漢水流域となる。新首都がこの地域のどこであれ、北京・上海・広州の三大都市から高速鉄道で四時間程度で移動可能である。 なお、上記の考察は中国が統一を維持した場合の話である。ただ、中国が分裂した場合でも、豊かな沿海地区だけが分離独立して貧しい内陸地区が取り残される場合なら、巨大な内陸国家の首都として南陽市から武漢市の間の漢水流域は理想的であると思われる。JJ予知夢の言う「西部にもう一つ大きく別れた国」がそれに対応するのかもしれない。 . . . 本文を読む
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