国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

東京生まれ・東京育ちと思われる株式日記のTORA氏の発想の貧困さ

2009年12月28日 | 日本国内
「日本の地方が衰退しているのは、地方の人が無気力で痴呆化しているからだろう。」とTORA氏は語る。「日本の地方が衰退している」「地方の人が無気力で痴呆化している」という二つの現象はある程度正しいと思われるが、だからといってその間に因果関係が成り立つわけではない。真の原因は、東京の強大な官僚機構にある。例えば、地盤沈下の甚だしい関西経済を見てみよう。戦後、多くの大企業が大阪から東京へ本社機能、あるいは本社そのものを移転させていることがこの地盤沈下の原因であることは明らかである。日本でビジネスを行うには官僚の許認可が必要であり、その為に東京に本社機能を置くことが競争上有利になっているからだ。多極型の国家であるアメリカやドイツと比較して、日本における主要企業の本社の東京一極集中は異常な水準に達している。関西すら地盤沈下している事を考えれば、それ以外の地方の苦難は当たり前と言って良いだろう。そして、地方でも勉強の出来る高校生は有力大学を経て東京の大企業を目指すことになる。地方に残される知的エリートは、医者と公務員ぐらいで、残りは「無気力で痴呆化」する事になるのだ。この地方切り捨てとでも呼ぶ政策は少なくとも戦後は一貫して継続している。政治家・財務官僚・財界・マスコミからなる日本支配階層がそれを正しいと考えているのだろう。TORA氏は観光と農業で地方を再生せよという。東京人は、地方と言えば観光と農業しか思いつかないのだ。何という発想の貧困さだろう!しかし、観光も農業も途上国と競合する産業であり、高い付加価値は期待できない。地方が目指すべきなのは、付加価値の高い情報産業や生命科学、知的財産権などの現在東京を中心に行われているビジネスである。例えば、京都大学の山中教授の開発したiPS細胞は巨大な付加価値を生み出す可能性を秘めている。徳島のジャストシステム、岡山のベネッセ、北九州のゼンリンなどの地方企業も、本社機能を全て地方に置いても経営が成り立つ様な体制が必要である。その為には、企業が東京に本社機能を移すのではなく、東京の官僚が許認可のために地方企業の本社に出向くといった発想の逆転が必要になると思われる。このような考えは地方に身を置いたことのある人は多かれ少なかれ理解しているものである。それを全く理解していないのは東京生まれ・東京育ちのTORA氏の愚かさと言う他はない。 . . . 本文を読む
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中国都市部の不動産バブルの行方

2009年12月19日 | 中国
先日、観光旅行で上海・杭州・蘇州を訪問した。ガイドに上海の住宅事情を聞くと、100平方メートルの集合住宅の値段が五千万円だという。これは東京二十三区の非都心部に匹敵するか、あるいは上回る価格である。一人ではとても支払えないので、夫婦共働きでローンを支払うのだとか。共働きでも、上海市民の平均年収を考えると厳しい返済事情になることは想像に難くない。 このような価格は間違いなくバブルである。そして、バブルはいつの日か必ず弾け、後に巨額の不良債権を残すことになる。投機狙いでマンションを買い漁った中国人資産家たちの多くが破産することだろう。それは、間違いなく中国経済の成長鈍化と失業増加をもたらし、政権を揺るがすことになる筈だ。そして、北京での優遇税制の駆け込み適用狙いの質草の急増との報道は、このバブルの崩壊の兆しを表しているようにも思われる。 . . . 本文を読む
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天皇特例会見問題

2009年12月17日 | 中国
天皇特例会見問題で小沢一郎民主党幹事長への批判が高まっている。私も小沢氏の発言や行動は非常に問題があるとの立場である。特に、「陛下の体調がすぐれないなら優位性の低い(他の)行事はお休みになればいいことだ。」「宮内庁の役人が作ったから、金科玉条で絶対というそんなバカな話があるかっていうんですよ。天皇陛下ご自身に聞いてみたら『手違いで遅れたかもしれないけれども会いましょう』と必ずおっしゃると思うよ」との発言は、一政党の幹事長の立場で天皇に命令を下し、陛下の意志を勝手に決め付けるものであり、言語道断である。彼はこの発言で事実上政治生命を失ったと言っても良いだろう。前原誠司国土交通相は、陛下との会見は一カ月以上前に文書で申請するルールについて「政権交代が行われたので、もう一度議論した方がいい」と主張しているが、私はこの主張にも反対である。天皇を一人の人間としてみたとき、75才と高齢で、しかも癌の手術後で体力が落ちている状態であるというのが基本認識であろう。その様な人が職務を制限されると言うのは健康管理の点から見て全く正当なことである。1ヶ月以上前に申し込むべきという制限を加えることで、陛下との会見希望の頻度を制限できるからである。そもそも、1ヶ月以内に訪日する外国政府要人は日本に緊急の用事があるから来るのであり、その様な人物は用事を済ませたら本国に帰国して貰えばよい。どうしても天皇陛下との会見を希望するのなら、再度訪日するか、あるいは訪日日程を延期すればよいだけである。習近平・中国国家副主席も、訪日日程を変更すれば何の問題もなかったのだ。政治家は体調に関わらず全力で働いているのだから、天皇陛下も多少の無理はしてもらうべきという批判もあるかもしれない。しかし、政治家は基本的に使い捨てなのに対し、天皇陛下には数十年の在位期間に渡って国事行為等の公務を実行していただく必要があり、その健康管理が政治家とは異なるべきである。その点で羽毛田宮内庁長官の発言は全く正当である。中国政府としては、1ヶ月ルールを破らせることで中国の国威を日本に見せつけるとの意図があったのではないかと思われる。今後も、中国政府要人の訪日では同様のルール破りが繰り返されることだろう。それに対して、日本政府は今後どう対応すればよいのか?今回の事件は今後に禍根を残す事になりそうだ。 . . . 本文を読む
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ウクライナの東西分割を狙うドイツ:21世紀のモロトフ=リッペントロップ協定

2009年12月12日 | 欧州
ドイツ軍の内部で、ウクライナを東西に分割した上で西ウクライナだけをNATOに加盟させる計画があるという。恐らく東ウクライナやベラルーシはロシア圏にとどまることだろう。21世紀のモロトフ=リッペントロップ協定と呼ぶべきこの計画は、ドイツとフランスを中心とするNATO圏とロシア圏に欧州を分断するものである。ただ、モロトフ=リッペントロップ協定が住民の意思を反映しない秘密協定であったのに対し、この計画は西ウクライナの親EU感情という住民の意思を反映している点が異なっている。 この計画は世界の多極化の反映である。独仏連合、ロシアという二つの極が発する強い引力がウクライナという国家を東西に引き裂きつつあるのだ。世界の多極化と共に、あらゆる国家はどの極に所属するのかを問われている。 . . . 本文を読む
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途上国への温室効果ガス排出削減義務付けは途上国の経済発展抑制が目的か

2009年12月10日 | 二酸化炭素による地球温暖化という大嘘
国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)で議長国デンマークがめざす政治合意案は、温室効果ガス排出を2050年時点で世界全体で「1990年比で半減」、途上国全体についても削減割合を決め、総排出量が減少に転じる年を盛り込むとした。京都議定書で削減義務を負わない途上国が反発を強め、交渉が難航するのは必至だとしている。この合意案が示すものは何だろうか? まず、この合意案は議長国デンマークの所属するEUの意志が反映されていると考えて良いだろう。EUはアメリカの次の世界覇権国として、温室効果ガス排出枠を使って世界経済の発展をコントロールしようとしているのだと思われる。経済発展や人口増加は温室効果ガスを増加させる要因であり、それは特に発展途上国で顕著である。温室効果ガス排出枠は発展途上国の経済発展に対するブレーキとしての役割が期待されているのだと思われる。中国・インド・ブラジルなどの途上国の無秩序な発展が世界システムに悪影響を与えることを防ぐのがその目的だろう。それによって、先進国による世界支配を継続するのが究極の目標だと思われる。 経済発展は天然資源の消費増加による枯渇など、多くの問題をもたらす危険がある。地球上で文明的な生活が可能な人の数には限界があるのだ。この限界を守るためには途上国の経済発展を抑制する必要がある。発展途上国側の反発は当然だろう。しかし、地球温暖化が温室効果ガス排出によるものであるとの仮定に基づく限り、世界全体での温室効果ガス排出を削減していく必要があるのは明らかであり、途上国も削減割合を決定することを拒否し続けることは出来ないと思われる。 . . . 本文を読む
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ロシアとの戦略的連携を深めるフランス

2009年12月01日 | 欧州
フランスとロシアは、反ロシア感情の強いウクライナ・ポーランド・バルト三国を通過しないガスパイプラインにフランスが出資することで合意した。ウクライナ・ポーランド・バルト三国はこの動きに懸念を強めているはずである。また、ロシアはフランスの最新鋭強襲揚陸艦「ミストラル」級を購入し、その後フランスからの技術移転を受けてヘリ空母4隻を国内で建造したい考えだという。グルジアやバルト三国はこの軍艦の脅威に直面することになる。 一方でフランスは昨年のグルジア紛争の解決を仲裁している。また、グルジアを通過するであろうナブッコ計画はロシアを経由しないパイプラインルートとしてEUが推進しており、フランスはグルジアを見捨てるつもりはないと思われる。グルジアとロシアの実質的な境界線は恐らく現状維持のままで今後推移するのではないかと思われる。 このような事態から見えてくるのは、欧州で主導権を握る独仏連合とロシアのような大国の地位が上昇し、小国は地位が低下するであろう、ということである。グルジア・バルト三国のような小国はロシアの軍事力に怯え、西欧諸国の軍事力に縋りながら生きて行かねばならない。現在のように反ロシア政策を採ることさえ困難になっていくことだろう。 各国が自国の国益を追求するパワーポリティクスの世界では、大国のみが自立したプレーヤーである。アメリカ一極時代には地域大国と小国は同格だったが、多極化する21世紀の世界システムでは、各極を形成する地域大国と小国の国力の格差が拡大することになるだろう。東アジアでは、日中印露の四カ国が全てを取り仕切る時代になると私は予想している . . . 本文を読む
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