国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

グーグル:中国からの撤退騒ぎの真相は?

2010年01月15日 | 中国
米インターネット検索大手、グーグルは12日、中国政府の関与が疑われるサイバー攻撃を受けたことを明らかにした。また、検索サービスに対する中国政府の検閲を「これ以上受け入れ続けるつもりはない」と表明、撤退を視野に中国事業を見直す方針を決めたと発表した。「(巨大市場の)中国からグーグルが離れることはほとんど不可能」との分析もある。しかし、このままなら間違いなくグーグルは中国市場から撤退することになるだろう。この真相はどのようなものだろうか? 2chでは「日本にも要求が来てた、『IT製品のソースコードを渡せ』って要求に関し、色んな駆け引きがあったんだが、それが決裂したんじゃないかな。 」という興味深い書き込みがあった。西側諸国と中国との、ソースコード開示を巡る交渉の決裂の結果、グーグルが反旗を翻したという裏読みである。十分可能性があるだろう。また、東京kittyでは、「米国資本による中国株の売り浴びせと中国泡沫経済の崩壊、米国の投下資本と利益の回収が始まった」としている。 私の考えは、「米中G2の政治・経済関係が悪化し始めたのではないか」というものだ。米中間には貿易摩擦・人権問題など多くの紛争が存在する。昨年は米国政府はこれらの問題をフレームアップするのを控えていたが、それが永遠に続くとは思われない。振り子は一度振れると、その次には逆の方向に大きく振れるものだ。それが始まったのではないか、と言うのが私の予想である。当然ながら、それは中国のバブル崩壊を引き起こす可能性があるだろう。また、米中対立への移行は日本の政変を引き起こす可能性が高いと思われる。 . . . 本文を読む
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バブル崩壊後の中国に生まれる鉄のカーテン

2010年01月10日 | 中国
米国の投資家であるジェームズ・シャノス氏が中国経済のバブル崩壊を予測している。巨大な不動産バブルが存在すること、公式統計の数字が疑わしいこと、解消されない生産設備の余剰などが列挙されている。上海万博は2010年5月1日―10月31日に開催されるが、多くの人々が万博後に高度成長の反動が起きることを予想している。だとすれば、バブルが崩壊するのは恐らく万博の後ではなく前になるだろう。 バブルが崩壊した後の中国は、これまで以上に輸出(外需)に頼ろうとするだろう。しかし、欧州は恐らくエマニュエル・トッドの予測するように保護主義化する。米国は、中国が米国債を買い支える限りは中国の輸出を受け入れるだろうが、米国経済が先行きの見通しが暗い以上、対米輸出の増加は期待できない。内需もダメ、外需もダメという状態になれば、経済成長という中国共産党の唯一の正統性が失われることになる。その後に起きるのは大混乱であろう。(この混乱は、中国による米国債買い支えを終焉させ、それによって米国もまた経済的・政治的に大混乱に突入することだろう。) 混乱の中で、富裕な沿海部の省は北京政府から続々と独立し、福祉を重視した社会民主主義の国を目指す。その一方で、貧困な内陸部の省は混乱状態が続き、行政は麻痺してやがて軍閥が支配する様になる。中国大陸が沿海部と内陸部の二つの地域に分断され、その境界には人やモノの移動を遮る障壁が引かれることになるだろう。20世紀の鉄のカーテンは欧州に生まれたが、21世紀の鉄のカーテンは中国に出来る、と言うのが私の予想である。 . . . 本文を読む
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シベリア原油、対アジア輸出開始

2010年01月01日 | ロシア・北方領土
東シベリアの油田からパイプラインと鉄道と船でアジア太平洋地域へと原油を輸出するロシアのプロジェクトがとうとう動き始め、原油がタンカーで出荷され始めた。一部鉄道輸送区間があり、プロジェクトはまだ完成ではない。現状では年間1500万トン、最終的には年間5000万トンの輸出計画というから、その4割が日本に輸出されるとした場合、最終的には日本の原油需要2億トンの1割を占めることになるだろう。ホルムズ海峡やマラッカ海峡といったチョークポイントを経由しないで日本に輸出される点で、エネルギー安全保障の観点から見て利益が大きい。将来的には西シベリアや中央アジアのパイプラインと一体化してユーラシア大陸の石油を四方八方に運ぶシステムの一部となり、ロシアのランドパワーを大きく増大させることになると思われる。 しかし、日本にとって、またロシアにとって、最も有益なのはこの石油パイプライン計画ではない。石油は鉄道でも船でも容易に運べるので、パイプラインのメリットが小さいのだ。一方、天然ガスは鉄道では運べないし、船で運ぶには極低温で液化させる(LNG)必要があり高コストである。ロシアは天然ガスの埋蔵量世界一であり、二位・三位のイランやカタールにも近い位置にある。ロシア産や中東・中央アジア産の天然ガスをロシアのパイプライン経由で日本に輸出することができれば、日本の受けるメリットは計り知れない。現在は樺太の天然ガスすらLNGタンカーで輸入しており、日本のエネルギー輸入は全て海運に依存しているのに対して、新たにパイプラインという陸運の輸入手段ができることになるからだ。ロシアにとっても、富裕で社会が安定しておりガス代金の支払い能力の高い日本は中国や韓国と比較して好ましい顧客であり、輸出先の多角化の観点からも利益が大きいと思われる。 日本はエネルギーを含め貿易を全て海運・空運に依存している。米国の巨大な海軍力に日本の貿易は支配されており、大陸のパイプラインを日本に繋ぐことは米国が許さないのだろう。米国が更に弱体化してロシアと日本の接近(北方領土問題の解決)を認めるまでは、樺太から北海道への天然ガスパイプライン計画も現実化しないと思われるが、その時が徐々に近づいている。 . . . 本文を読む
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