国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

エイミー・チュア著 最強国の条件

2011年06月06日 | イスラエル・ユダヤ・国際金融資本
この本で最初に批判せねばならないのは、日本が非寛容さによって滅亡した国家の一つに挙げられていることである。著者は日本の朝鮮統治を朝鮮語禁止など非寛容として取り上げるが、これは全くの誤りである。李氏朝鮮時代には軽蔑されうち捨てられていたハングルを重視し、ハングルによる朝鮮語教育を大々的に日本が施行したことは特記せねばならない。朝鮮語が禁止されたのは第二次大戦期間中に限られており、それは大日本帝国の臣民を一つに団結させるという目的であったと思われる。また、日本統治時代には朝鮮の日本企業や日本軍で朝鮮人が多数登用されたし、日本に移住した朝鮮人は参政権を行使して国会議員になった者も存在した。この様な大日本帝国の寛容さは特筆すべきものである。著者は連合国のプロパガンダに完全に洗脳されている。 また、著者は第二次大戦中の日本軍による華僑迫害やインドネシア人迫害を取り上げている。しかし、華僑が欧米人の手先となって東南アジア人を搾取したことを考えれば、日本が華僑を迫害したことは正義である。更に、日本はインドネシアで住民を教育し将来の独立に備える中核階層を育成している。著者は中国生まれ・フィリピン育ちの東南アジア華僑の父母を持っており、そのことがこの本の記述を大きく歪めていると感じる。 では、著者の主張を分析した上で日本は今後どの様な戦略を取るべきなのか?私の答えは、日本は最強国家も地域覇権国も目指すべきではないというものだ。最強国家も地域覇権国も強大な軍事力が必要であり、その人的・経済的コストは非常に大きい。日本は中国・ロシア・インドと並ぶアジアの大国の一つと自らを位置づけ、他の国家を支配するのではなくコントロールすることを目標とすべきである。更に、日本は国家の目的を繁栄の極大ではなく、国家存続の永続化に置くべきである。建国以来一つの王朝が国家を統治しているという日本の特徴を維持することこそ重要であり、一時的な繁栄は長期的な国家継続にとって逆に危険であるからだ。また、移民政策について言えば、日本は移民の力に頼らずにまずは日本民族の力を強めることに注力すべきである。その上で、日本文明に同化可能な高い技能を持つ少数の人々に限定して移民を受け入れていくべきであろう。 . . . 本文を読む
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和田春樹と保坂祐二:実は日本の国益に貢献している「進歩的・良心的知識人」

2011年06月04日 | 韓国・北朝鮮
中央日報の二つの記事で重要なのは国の名前の順番である。「韓日米外相会談」「韓日米3者協力」「韓日中専門家カンファレンス」「韓日中バスケット通貨」という言葉に注目したい。日本が米国・中国の前に置かれている。これは反日感情が強く、日清戦争を清日戦争、日露戦争を露日戦争と呼んで日本を常に劣位に置いてきた韓国では異例のことである。21世紀の韓国を先進国として維持するためには日本との同盟が必須であるというコペルニクス的な意識転換が韓国知識階層内部で起きている可能性が高い。この意識転換は日本の国益にとって非常に危険なものである。米国の世界覇権消滅という国家存亡の危機に直面して日本にすり寄ってきた韓国を突き放していくことが日本に求められているのだ。この様な視点から見ると、竹島問題、従軍慰安婦問題などの歴史問題での日韓の対立は日本にとって重要なカードである。国際法違反の竹島実効支配を正当なものであると韓国人に認識させ続けること、竹島問題と歴史問題で韓国人の反日感情を煽ることは日韓の軍事同盟を不可能にすることに繋がる。憲法第9条の維持、集団的安全保障の否定も重要である。これらの主張は全て左翼系の人々からなされている。一見反日的な「進歩的・良心的知識人」は実は日本の国益に最も貢献している人々なのだ。逆に、竹島奪還を主張する右翼系の人々こそ、竹島を韓国が日本に返還して日韓の軍事同盟が成立するという最悪の事態へと道を開く、反日的日本人であると私は認識している。 左翼系の人々は、このブログの読者の皆さんの多くからは馬鹿な人間だと軽蔑されているだろう。表向きは日本の国益に反することを主張しているのだから当然である。ただ、私はこの「左翼系の人々」は二種類いると想像している。一つは単なる馬鹿で、左翼系の活動家の多くはこれに含まれる。もう一種類は陰謀家である。表向きは反日的言論を主張しているのだが、実際には日本の国益を守るための戦略の要になっている。この様な陰謀家が日本の左翼勢力を指導し運営しているのではないかと私は妄想している。そして、和田春樹と保坂祐二は実はこの「陰謀家」なのではないかと私は考えている。 . . . 本文を読む
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モンゴル族の不満が高まる内モンゴル自治区

2011年06月02日 | 中国
モンゴル族と漢民族の対立を解決するには、内モンゴルを分離独立させる他はない。しかし、それは重大な問題を抱えている。内モンゴル自治区の住民の80%は漢民族であり、先住民であるモンゴル族は20%に過ぎないのだ。従って分離独立しても内モンゴルのモンゴル族は差別された少数民族の地位から脱することができない。ウイグルやチベットも同様の域内漢民族を抱えているが内モンゴルより割合は少ないし、漢民族の多くは共産中国成立後の移住民であってウイグルやチベットが分離独立すれば出身地の中国本土に帰る可能性が高い。そもそも、チベットは農耕不能な高原、ウイグルも農耕不能な砂漠の国であり、漢民族の居住には適さない地域である。しかし、内モンゴルの場合は事情が異なる。清朝滅亡時に建国されたモンゴルは内モンゴルの征服を試みたが、既にこの時点で内モンゴルの人口の過半数は漢民族であり、内モンゴル領有によって新モンゴル国が漢民族を多数派とする国になり漢民族に乗っ取られることを恐れた指導者が内モンゴル征服を断念した経緯がある。内モンゴルは中国本土と広く接しており、黄河中流域などには農耕可能地域も多い。この地域は伝統的に漢民族とモンゴル族が混住してきた地域なのだ。 欧州の歴史は、このような多民族の混住が大きな軋轢をもたらすことを教えている。東欧諸国では凄惨な戦争や内戦を通じてこれらの混住問題が解決され、各民族が特定の地域に集中して居住するようになった。現時点で民族の混住が残存しているのはハンガリー周囲のハンガリー系住民のみである。これによって欧州諸国は民主主義の導入に障害が無くなった。民族の混住が存在する状態では、選挙の最大の焦点が民族対立になってしまうのだ。中国も将来民主主義が導入される可能性が高いが、内モンゴル自治区は漢民族が長年居住してきた地域であり、モンゴル族と漢民族のどちらに帰属すべきか決着のつかない問題になる。この問題を解決できるのか、解決できるとすればどのような方法で行うのかが重大な問題になってくるだろう。 . . . 本文を読む
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