国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

「知的制海権」「製造業の空洞化」と日本の未来像

2007年01月01日 | 日本国内
太田述正氏は近未来の日本の製造業について、悲観的な見方をしている。機能・品質に係る研究開発や、価格に係る生産、以外の何かである「匠」を追求するか、日本の企業の技術開発力を高め、かつ日本を生産基地として再生させる方法を必死になって求めなければ、日本の産業の空洞化は、とどまるところなく進行していくとしている。 国際戦略コラムのF氏も、日本企業が世界に日本文化を広めることで日本は繁栄可能だが、そのような企業に関係を持たない一般庶民は低賃金労働に苦しみ、国内優先と世界優先の間で対立が起きると予測している。これは、トヨタなどの日本の一流企業がロスチャイルドやロックフェラーの様な国際金融資本に変身するという悪夢をも想像させるものだ。 これに関して、「無形化世界の力学と戦略」の長沼真一郎氏は、欧米・インド・中国などの巨大人口を持つ地域が一丸となって製造業分野に参入して日本を圧倒し、日本の製造業での優位性という唯一の強みが失われるという悪夢の様な事態を予測している。そして、その様な事態で日本が生き延びる為には、陸軍的な経済力一辺倒の現在の体制から脱して海軍的な知的制海権を掴むしかないと断言する。また、大陸から適度に離れ、ユーラシア大陸のいずれの文明にも属さない日本は海軍的な国家を目指すのに適していると主張する。実に刺激的で大胆な提言だが、20世紀のアングロサクソン・ユダヤ連合の様に「知的制海権」を掴むには、世界に覇権国と認められ、世界の国々に希望のもてる未来像を常に提案しそれを実現していく必要があると思われる。そして、日本の規模でそれが可能かどうかというのが一つの難題であると思う。知的制海権を掴むとしても、独仏・ロシア・北米と共同という形態がせいぜいであろう。ただ、部分的にでも知的制海権を取れるならばそれは非常に好ましいことだが。また、知的制海権だけは保有していても、それを支える経済力が失われた状態では日本の国家としての生き残りは困難だろう。結論としては、日本は単独で世界覇権を取ることは不可能であり、製造業での優位性を失いつつもある程度維持しつつ知的制海権で部分的に世界覇権をとることを目指すしかないだろう。この路線は、20世紀後半のフランスが手本になると思われる。フランスが得意とする高級ブランドは「匠」を既に実現していると思われる。 . . . 本文を読む
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