私の闇の奥

藤永茂訳コンラッド著『闇の奥』の解説から始まりました

ロジャバのクルド人とアサド政権

2016-08-24 22:28:03 | 日記・エッセイ・コラム
 前回のブログにHitoshi Yokoo さんから『ロジャバ革命はどこにゆくのか』と題するコメントを頂きました。是非読んで下さい。ロジャバ革命の行方が本当に心配です。
 前回のブログの末尾に紹介したニュース・サイトsyria360が突如として再開され、二つの新しい記事(8月23日付)が出ました。

https://syria360.wordpress.com/2016/08/23/hasakah-ceasefire-agreement/

https://syria360.wordpress.com/2016/08/23/new-concept-turkey-syria-and-iran-attack-rojava/

ハサカでのシリア国軍とロジャバのクルド人軍との衝突の真意を読み取ることは、現時点では、私には至難の技です。クルド人たちも、この新事態が何を意味するのか分からずに困っているようですが、ロジャバのクルド人軍の背中に米国が張り付いていることだけは明らかです。しかし、停戦合意を告げる報道の行間に、アサド政権側の分別と正気を読み取ることができるような気もします。私にとって、これは唯一の頼みの綱です。


藤永茂 (2016年8月24日)
コメント (1)
この記事をはてなブックマークに追加

シリアのクルド人たちが危ない

2016-08-20 23:30:41 | 日記
 8月18日の夜10時でしたが、シリアの難民の数を知りたいと思ってグーグル検索をしてみたら、トップの「ニューストピック」のところに
『内戦下のシリア 刑務所で1万7000人余死亡か | NHKニュース』、
『「世界はシリアに背を向けた」2歳児も呼吸困難に』(BBCニュース)
とあるのを見て驚きました。BBCの記事は、アレッポの戦闘でシリア政府軍が毒ガスを使ったという報道、咄嗟に私は米軍がシリアで直接介入を始めたなと直覚しました。続いて、Omran Daqneesh という5歳のシリア人少年の写真が世界中にばら撒かれました。幼気な少年は、シリア北西部の都市アレッポの反政府勢力地区をシリア政府かロシアの空軍機が爆撃し破壊した建物の瓦礫の中から救出されたという説明です。これとほぼ時を同じくして、シリア北東部のハサカ地域でクルド人勢力側をシリア政府空軍機が攻撃したというニュースも一斉に報じられました。
 ロシアの軍事介入でアサド政権打倒の目的が阻止されそうになってきた状況を前にして、米国はなりふり構わぬ暴挙に出る構えだと私は判断します。昨年年末から今年の春にかけて、ハサカ地区で米軍が空軍基地を設置していると報じられました。VOA(ボイス・オブ・アメリカ)は米国政府が運営する国営放送ですが、その本年2月4日の中東記事で、ハサカの北のQamishliで空軍基地を建設していることを公式に認め

http://www.voanews.com/a/us-confirms-involvement-in-syria-airport-expansion/3176116.html

また、今回のハサカのクルド人に対するシリア軍の攻撃も米国側には罪がないように狡猾な形で報じています

http://www.voanews.com/a/civilians-flee-as-kurdish-enclave-bombarded-by-syrian-warplanes/3472133.html

私が以前から書いているように、ロジャバ革命を目指すクルドたちは、アサド政権が彼らに適当な形で自治的形態を許すならば、シリア国家の枠組みの中で生きてゆくつもりであったのですが、米国は強引にそのクルド人たちを米国陣営に組み込んでしまうつもりなのです。私は、着実に進行中のこの米国の企てに、血の凍る思いをしています。自己利益のためには何ものをも犠牲にして顧みない米国の残酷さを我々はしかと見据えなければなりません。入獄中の偉大な指導者オジャランの教えに従って、中東に真の平和をもたらす夢を抱くクルド人たちは、いま深刻な集団的苦悩の中にいます。
 (2016年7月27日)の記事『シリアの惨劇は続く』の末尾に、私は次のよう書きました:
***********
 私はロジャバのクルド人たちのことが心配でなりません。私が毎朝見ているクルド関係のサイトがあります。

https://syria360.wordpress.com/category/africa/world/middle-east/kurdistan/kudrish-defense-forces/

ロジャバのクルド人防衛軍関係のニュースを報じるサイトで、今年の2月27日に発効した停戦から4月中旬までは、毎日のようにシリア北西部の状況が詳しく報じられていたのですが、それ以後は途絶えるようになり、5月に入ってから、ロジャバのクルド人防衛軍とイラク北部のクルディスタン地域政府(KRG、大統領バルザーニー)の軍隊(ペシュメルガ)との間の軋轢が報じられ、それからまた空白の日々が続いた後、ロジャバ地区のクルド勢力の独立性を再確認するような内容の記事が出たので、私としてはホッと一息ついたのですが、その数日後、この二つの記事は削除されて、日付的に最近のものとしては4月14日付の記事が掲載されたままで、それより古いものは遡及して読むことができますが、新しいエントリーは現れません。何かよくないことが起こったのはたしかですが、わかりません。米国に強制されて、ロジャバのクルド人たちがアサド政権の打倒を目指す“シリア民主勢力軍”に組み込まれてしまい、その上、ISとの死闘という役割を担ってしまったことが、このニュース・サイトの死の根本の原因であろうとは推測できます。とにもかくにも、米国は酷いことをするものです。そのむごさを体現するような女性が米国の大統領になった後の世界の運命が大いに気になります。
***********
 本日もこのサイトは更新されていません。沈黙のままです。

藤永茂 (2016年8月20日)
コメント (1)
この記事をはてなブックマークに追加

フィデル・カストロが卒寿を迎えた

2016-08-13 22:22:36 | 日記
 キューバのフィデル・カストロは1926年8月13日の生まれ、90歳になりました。私は同年5月23日生まれですから、差はほんの僅か、でも、一つの人生として、何という絶大な違いでしょう。私はこれまで一度も暗殺の対象とはならなかったと思いますが、フィデル・カストロフィは文字どおり数百回も命を狙われたことが定説になっています。米国(の権力機構)がそれほど彼を消してしまいたかったという歴史的事実は、そのまま、フィデル・カストロの偉大さの確固たる証明のようなものです。彼が生き残ったのは、『奇跡』と呼ぶにふさわしい。米国は、国の内外を問わず、邪魔者を数知れず殺害してきたのですから。
 私の目には、フィデル・カストロは20世紀最大最高の偉人と見えます。その主な理由を、そのうちに、述べてみたいと思っていますが、一つ簡潔な良い記事を見つけたので、ここに紹介しておきます:

http://www.counterpunch.org/2016/08/12/tribute-to-fidel-castro-on-his-90th-birthday/

藤永茂 (2016年8月13日)
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

障害者殺傷事件

2016-08-03 22:52:51 | 日記
相模原の障害者施設での事件について、桜井元さんからコメントを頂きました。
その場所が4月9日の記事『治さなくてもよい認知症』ですので、皆さんに読んで頂きやすいように、以下に再録させて頂きます:

**********
命の価値の平等 (桜井元)
2016-07-28 23:26:36
今回の障害者殺傷事件でまず頭に浮かんだのは「ナチス」でした。昨年、NHKでちょうどそれをテーマにした特集番組があったのです。

『それはホロコーストの“リハーサル”だった~障害者虐殺70年目の真実~』

http://www.nhk.or.jp/etv21c/archive/151107.html

http://www.nhk.or.jp/heart-net/tv/summary/2015-08/25.html

今日(7月28日)のニュースの中で、容疑者がヒトラーの思想の影響を受けたことを口にしていたと伝わり、やはりそうだったかという思いでした。

もう一つ想起したのは、石原慎太郎の過去の発言です。
1999年、府中療育センター(重度知的・身体障害者療育施設)を視察後の発言でした。

http://homepage3.nifty.com/m_and_y/genron/ishihara/data/19990918fuchuu.htm

「ああいう人ってのは人格あるのかね。ショックを受けた。ぼくは結論を出していない。みなさんどう思うかなと思って。絶対よくならない、自分がだれだか分からない、人間として生まれてきたけれどああいう障害で、ああいう状態になって…。しかし、こういうことやってやっているのは日本だけでしょうな。人から見たらすばらしいという人もいるし、おそらく西洋人なんか切り捨てちゃうんじゃないかと思う。そこは宗教観の違いだと思う。ああいう問題って安楽死につながるんじゃないかという気がする。/〔「安楽死」の意味を問われて〕そういうことにつなげて考える人もいるだろうということ。安楽死させろと言っているんじゃない。」

第1期目の都知事就任の年になされた発言ですが、問題は、このような人物を都民の最大多数が支持したこと、さらには、この発言があった後にも4期にもわたって都知事に選出し続けたことです。
石原は「日本会議」の役員(代表委員)ですが、今この日本会議は本当に無視できない影響力を振ってきています。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%BC%9A%E8%AD%B0

今回の事件の容疑者のツイッターに「beautiful Japan」と記されていたそうですが、安倍首相の「美しい国、日本」とだぶります。

http://www.sankei.com/affairs/news/160726/afr1607260028-n1.html

http://www.s-abe.or.jp/policy

安倍は「日本会議」国会議員懇談会の特別顧問です。
ちなみに、都知事選に出ている小池百合子は副会長です。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%BC%9A%E8%AD%B0%E5%9B%BD%E4%BC%9A%E8%AD%B0%E5%93%A1%E6%87%87%E8%AB%87%E4%BC%9A#.E5.BD.B9.E5.93.A1

さらに思い出したのは、曽野綾子の「高齢者は適当な時に死ぬ義務あり」という発言です。
障害者に対するものではありませんが、石原慎太郎と同じく非常に危険な思想です。

http://www.j-cast.com/2016/02/02257388.html?p=all

全文は下記で読むことができます。

http://mmtdayon.blog.fc2.com/blog-entry-1571.html?all

http://blog-imgs-88.fc2.com/m/m/t/mmtdayon/201602201131539ce.jpg

「トリアージ」はなにも、命に序列を付けることではなく、「すべての命は平等」という大前提に立ったうえで、緊急時に治療の優先順位を付けるものです。この大前提に従えば、「軽症の若者」よりも「重症の高齢者」を優先することになるはずです。曽野綾子はトリアージの論理を歪曲し、牽強付会の主張を展開しているだけでした。

東大医学部出身で国立がんセンター等に勤務し、一般向けの著書も複数出している医師・里見清一なども、「『能率的に死なせる社会』が必要になる-建て前としての“命の平等”は外すべき」などというタイトルのインタビュー記事で持論を展開していました。

http://toyokeizai.net/articles/-/59971

「僕が役人だったら、能率的に死なせる社会のことを考えますよ。だってそうしないと間に合わねえもん。ただ現場の医者として、それは怖い。この患者はここまで治療すればOKという明確な方針で進めてしまうと、僕はナチスになりかねない。」

それとなく批判されることへの予防線を張っていますが、「すべての命に価値がある」「命は平等」という大前提を崩している時点で、もうこの人物は危険な領域に足を踏み入れてしまっています。

いま国民の最大の関心事は「景気」と「社会保障」のようです。どの選挙でも、事前の世論調査ではそういう答えが多数を占めています。それでは、こうした国民の要望に対して、財界のトップや政界のトップは何を示しているのでしょうか。

経団連は、「社会保障制度改革のあり方に関する提言」を、安倍政権は「一億総活躍社会」を掲げています。

http://www.keidanren.or.jp/policy/2012/081.html

http://www.kantei.go.jp/jp/headline/ichiokusoukatsuyaku/

つまるところ、「自助・自立の強調」「公的な福祉制度は必要最小限に縮小」ということです。「介護予防、認知症予防、健康寿命を伸ばす」などと聞こえの良いことを言いながら、その狙いは、介護や病気に陥るのは自己責任という社会的空気を充満させ、公的ケアの領域を縮小する方向を進めるだけでしょう。「一億総活躍」というのも、高齢者・障害者を福祉の対象から外し、生産システムの歯車に組み入れ、低賃金労働力として「活用」していくだけでしょう。そして、「一定の収入」があるからという理由を付け、福祉供給の蛇口をますます絞り込んでいくのでしょう。

最近、NHKで「“介護殺人”当事者たちの告白」という番組がありました。

http://www.nhk.or.jp/d-navi/link/kaigosatsujin/

この深刻な現状を前に、財界・政府はなんと無情な方向に舵を切ろうとしていることでしょうか。

今回の悲惨な事件は、容疑者一人の異常性の問題ではないと思います。
石原慎太郎、安倍晋三、小池百合子、曽野綾子、里見清一、日本会議、経団連…
日本社会全体が狂ってきているのです。
容疑者にこのような思想(障害者はお荷物、生きている意味がない、殺すに限る)を形づくらせるような価値観・言論が社会に蔓延してしまっているのです。

ナチス・ドイツと手を組んだ戦前の日本は、基本的人権・民主主義とは縁遠い「帝国憲法」の体制のもとにありました。そして戦後、国民は「日本国憲法」という非常に内容の充実した憲法を手にすることができ、そのもとでなんとか福祉国家路線を進めることが可能となりました。

今、無視できない勢力が、「自虐史観・戦後レジームからの脱却」、「日本の伝統の重視」などと言って、過去を不当に美化する一方で、戦後改革をおとしめています。その総仕上げとして、彼らの悲願である「改憲」までもが具体的視野に入ってきています。

こうした時代の重く垂れこめた空気が、今回の容疑者のような歪んだ思想を形成してしまい、悲劇を生んでしまったことは間違いないでしょう。
いま私たちは、ナチズムを根底から拒否しなければならない、日本を覆う危険な空気を払いのけねばならない、そう強く思います。

私の母は現在、要介護3の認知症ですが、直近で受けた脳画像検査では、アルツハイマー型と別の型とが複合するタイプで、血流が悪い領域が以前よりさらに広がっていると診断されました。症状は年々進んでいます。現代の医学では治らない病気ですから、こればかりは仕方ありません。この病気とは付き合いながらやっていくだけです。

先日、夜中に母が起き出して私にこんな言葉を言いました。
「私がこんな馬鹿みたいになったから、いろいろ迷惑をかけてるよね。ごめんね」と。

母からこういう言葉を聞くのは初めてで、たいへんショックでしたが、私は「迷惑なんて少しも思っていない。本当だよ。お母さんは、いてくれるだけでいいんだ、ただそれだけで僕はうれしいんだ。お母さんに何ができるとか、できないとかは、関係ない。さっきの言葉みたいのを聞くと寂しくなるから、もうそんなことは言わないで」と静かに語りかけました。
私の言葉を聞くうちに、母の顔に少し笑顔が戻り、私はホッとしました。

認知症になっても母には、こうして自分の息子を思いやる優しい気持ちがあり、その屈託のない笑顔には私の方が日々いやされています。

今回の事件の報道で、この施設の元職員として勤めていらしたという年配の男性が、たいへん愛情のこもったコメントをされていたのが印象的でした。その方がお世話をしていた障害者の中に、スライスした木の幹の表面を一生懸命に磨く作業をする人がいたそうで、その頑張る姿に自分の方が学ばされたという趣旨のことを話されていました。犯人への怒り、悔しさ、入所者との日々の懐かしさ、入所者への愛情などが画面から伝わるコメントで、認知症の母をもつ私としてもたいへん深く共感するものでした。

障害、病気、高齢、認知症などがあっても、皆が笑顔で、社会への引け目を感じることなく、周囲の人々との関係性のなかで、それぞれの生を全うできる、そのような社会にしなければならないと切に思います。
**********

桜井元さんの結びの思いを私も共有します。以前、言及したことですが、キューバの老人ホームでは喫煙が許されていると知って、驚きもし、感心もしました。キューバでは障害者施設の状況がどうなっているか、ご存知の方があれば是非教えてくださるようお願いします。
 数年前のことですが、福岡の地下商店街の通路で、重い障害の少年を乗せた大型の車椅子を押している中年の男性に出会いました。おそらく少年の父親で、少年はスティーヴン・ホーキングと同じ病気(筋萎縮性側索硬化症)と私は見ました。しっかりした歩調で車椅子を押して進むその男性の面立ちの何とも言えぬ美しさに、私は思わず息を飲み、その父子を凝視して立ち尽くしてしまったのでした。いわゆるイケメンなどでは全くない、ただしっかりとした静かな面立ちだったのですが、その形容しがたい美しさは私の心に焼き付いて今もそのままで、老老介護の日々の私の心の眼の前にしばしば立ち現れます。重度の障害者の子供を持つ親としての日々の苦難は並大抵のものではありますまい。そして、その苦難の日々が父親にあの静謐なしかし力強い美しさを与えたに違いありません。

藤永茂 (2016年8月3日)
コメント (2)
この記事をはてなブックマークに追加

シリアの惨劇は続く

2016-07-27 22:13:36 | 日記
 私が信頼するジャーナリストとして、ロバート・フィスクの名をあげました。1946年7月12日生まれの真のベテラン記者です。出来れば、
Wikipedia のRobert Fisk の項を見てください。次のインデペンデント紙掲載の記事は、この記者にしては異常とも言える激しい怒りのこもった筆致のものです。

http://www.independent.co.uk/voices/i-read-the-chilcot-report-as-i-travelled-across-syria-this-week-and-saw-for-myself-what-blairs-a7123311.html

私はこの記事をPaul Craig Robertのウェブサイトの客員寄稿の欄の
Washington’s Attempted Murder Of Syria「米国政府によるシリア国謀殺未遂」と題する記事の中から拾いました。

http://www.paulcraigroberts.org/2016/07/12/washingtons-attempted-murder-of-syria/

そこには
「Virginia state Senator Richard Black describes Obama’s attempt to murder Syria as “extremely reckless, an insane policy.” The straight-speaking Senator said: “We have never done anything more loathsome or despicable than what we’re doing in Syria.”」
とあり、“我々がシリアでやっていること以上に忌まわしくも卑劣なことを、我々は今まで何もしたことがない”というブラック上院議員の言葉は、米国がシリアで行っていることの言語道断の酷さをよく反映しています。

http://www.fort-russ.com/2016/07/us-senator-we-have-never-done-anything.html

 このFort Russの記事には、シリア政府の招待で今年の5月にシリアを訪問したブラック上院議員と、それとは別に、シリアの一般住民とインターネットで密接な関係を結んで同じ頃にシリアを訪れたジャニス・フィアリングというアメリカのキリスト教会関係の一女性が一緒にインタビューされて、一時間半ほど、あれこれとシリアでの見聞を語るビデオが含まれています。私が最も強い印象を受けたのは、アサド大統領夫妻の人柄と夫妻に対するシリア一般住民の敬愛の情の深さについての二人の語り口でした。Fort Russ News というサイトの性格から、このインタビューはロシアの情宣活動の一部と見るべきでしょうが、我々はこのビデオからプロパガンダ以上の真実を汲み取れると思います。
 7月14日に米国のメディアNBCが発表したアサド大統領のインタビュー(44分)も我々がシリア戦争とアサド大統領について判断するのに極めて有用なもので、多くのことが論じられていますが、

http://axisoflogic.com/artman/publish/Article_74660.shtml

その中から一つだけ選べば、米国とイスラム國(ISIS)との関係についてのアサド大統領の発言です。彼の見解と私の推測とは驚くほど完全に一致します。自慢をしているのではありません。卓上のパソコンだけを覗き穴にしてシリア情勢を理解しようと試みている市井の一老人にとってこれは大きな慰めであると同時に、マスコミの表面で活躍する専門家諸賢が、本心を語らずに、如何に売文用の嘘をついているかが、改めて確認されます。IS爆撃のためと称して米軍機が何千回、何万回と出撃しても、本質的にはISを痛めつけてはいないのです。IS は大切な手先であり、その意味で味方なのですから。
 イスラム国の“首都”はシリア北部の都市ラッカです。ロシア空軍の介入を野放しにしておけば、シリア国軍がラッカを奪還するのは必至ですが、これは米国にとって何としても避けたいところです。そこで、他国の住民の命など本当は何も気にならない残忍な米国の支配勢力は、シリア北部のロジャバのクルド人戦士たちを強引に駆り立ててIS“討伐”の最前線に押し出して死闘に従事させています。今までに何度もお話ししましたように、ロジャバ革命の達成を願って戦ってきたクルド人たちは、シリアという国の枠内で、シリア政府、米国政府、ロシア政府のいずれからも距離をとって、平和な自治制度を獲得することを目指してきたのですが、ここに来て、米国によって、シリアのアサド政権の打倒を掲げる反政府勢力に組み込まれ、しかも、ISとの死闘の最前線に押し出されてしまいました。言うなれば、米国は右手でISというパペットを、左手でクルドというパペットを操ってphony な戦闘を演じさせているわけですが、戦いの現場では、勿論、本物の血が流されます。兵士たちの血だけではありません。ラッカの北西に位置する要衝マンビジュ市での両者の戦闘で、IS側を空爆するはずの米軍機が一般市民多数を殺傷したので、その停止をクルド側が要請したというニュースも流れました(7月26日)。これは、これまでの米国空軍機によるIS空爆の本質を暴露している象徴的な事例だと私は考えます。米国機から投下された膨大な量の爆弾はシリア国土のインフラ破壊にもっぱら向けられてきたのです。
 私はロジャバのクルド人たちのことが心配でなりません。私が毎朝見ているクルド関係のサイトがあります。

https://syria360.wordpress.com/category/africa/world/middle-east/kurdistan/kudrish-defense-forces/

ロジャバのクルド人防衛軍関係のニュースを報じるサイトで、今年の2月27日に発効した停戦から4月中旬までは、毎日のようにシリア北西部の状況が詳しく報じられていたのですが、それ以後は途絶えるようになり、5月に入ってから、ロジャバのクルド人防衛軍とイラク北部のクルディスタン地域政府(KRG、大統領バルザーニー)の軍隊(ペシュメルガ)との間の軋轢が報じられ、それからまた空白の日々が続いた後、ロジャバ地区のクルド勢力の独立性を再確認するような内容の記事が出たので、私としてはホッと一息ついたのですが、その数日後、この二つの記事は削除されて、日付的に最近のものとしては4月14日付の記事が掲載されたままで、それより古いものは遡及して読むことができますが、新しいエントリーは現れません。何かよくないことが起こったのはたしかですが、わかりません。米国に強制されて、ロジャバのクルド人たちがアサド政権の打倒を目指す“シリア民主勢力軍”に組み込まれてしまい、その上、ISとの死闘という役割を担ってしまったことが、このニュース・サイトの死の根本の原因であろうとは推測できます。とにもかくにも、米国は酷いことをするものです。そのむごさを体現するような女性が米国の大統領になった後の世界の運命が大いに気になります。

藤永茂 (2016年7月27日)
コメント (5)
この記事をはてなブックマークに追加