詩とファンタジー№16 秋茜号
投稿詩とイラストレーション
責任編集:やなせたかし
かまくら春秋社
特集:サトウハチローの秋・東北・抒情
今号は「手のひらを太陽に」つなごう心と心プロジェクトとして、被災地からの応募作品がたくさん掲載されていました。
牛とおじいさん
熊田恵子(福島県郡山市出身)
その牛は、飼い主のおじいさんが大好きだった
細い目で嬉しそうに体をなでて、美味しいごはんを食べさせてくれた
ある日、地面が揺れた
おじいさんが見当たらない
「どこに行ったの? どこに行ったの?」と牛は鳴いた
その場所は地震で危ない場所になっていた
おじいさんは、泣きながら遠くに離れた
おじいさんは、いつ戻って来られるかわからなかった
だから、おじいさんは、牛が自分で草を食べに行けるように、離れる前に首輪を外した
牛は、草と水を求めて、初めての旅に出た
おじいさんは、牛のことを心配した
牛のことをあえて心配するようにした
それは、おじいさんは娘のことを考えないようにしたかったから
おじいさんの娘は海のそばに嫁いで住んでいた
地震で大きな波が押し寄せ、おじいさんの娘の家を壊した
そして、おじいさんの娘の家も危ない場所になった
だから、おじいさんは、娘を探しに行けなくなってしまった
「探しに行けなくてごめんね、探しに行けなくてごめんね。」とおじいさんは泣いた
まだ、おじいさんは、娘と会えていない
だから、おじいさんは、牛のことを考えるようにしていた
おじいさんには家族がたくさんいた
だから、ずっと目を細めて、その家族を撫でてきた
家族がたくさんいるおじいさんは、心配することもたくさんあった
牛は、今日もおじいさんを探している
牛は、今日もおじいさんのことが好き
つなげたい
あしび白帆(福島県石川郡)
地球が生まれて何億年
生命が宿って何億年
ずっとつながってきました
次へ渡されてきました
花は種へ
親は子へ
命を送ってきました
遠い昔からはるかな未来へと
進化とは賢くなって
エネルギーを作り出すことではなく
強くなって
戦うことでもありません
進化とは命を進めること
命を生み、育み
地球に生きることです
ここに生きたいのに
危険だから避難しろと言われ
私達はまちがった進化をしたのでしょうか
正しい進化にもどせますか
命をつなげますか
大波 坂本恭介(岩手県大船渡市在住12歳) 絵・梅川紀美子