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 青山剛昌の漫画「名探偵コナン」は、2人の息子が夢中になった時期があります。「名探偵コナン」は「週刊少年サンデー」で、1994年より連載が開始され、現在も連載が続いています。単行本も2012年10月現在で、77巻目を数え、41巻目(2003年4月9日発売)までは我が家の書棚に並んでいます。上の息子が夢中になった時期に買い揃えていきました。

 1996年からはテレビアニメの放映も始まり、下の息子も物心がつきだすと一緒に見始めました。下の息子がテレビに飽きてしまってテレビを見なくなると、私も付き合いで見ていた「名探偵コナン」からは遠ざかってしまいました。

 私の記憶の中では、コナンはよく「密室トリック」の謎解きをしていました。それを見ながら、「そんなことは現実には無理だよ。そんなに都合よくいくわけがない。」と心の中でツッコミを入れていました。口に出すと、「お父さんは、ドラマの楽しみ方を知らない。誰も現実に出来るとは思っていないよ。謎解き自体が面白いのさ。」と反論されます。

 しかし、「密室トリック」が岐阜県各務原市で現実に起こり、その謎解きも現実に岐阜県警が行ったというのです。「名探偵コナン」の中だけではなかったのです。

 2012年9月30日午前9時半ごろ、岐阜県各務原市鵜沼川崎町3丁目のアパートの3階の一室に、臨床検査技師の女性(29歳)の父親が訪れます。その日の朝、1人暮らしの娘が電話に出なかったのを不審に思った父親が訪ねてきたのです。父親は娘から2枚あるカードキーのうちの1枚を預かっていました。

 部屋を開けて父親は、娘の無残な死を知ることとなります。居間の床にうつぶせになっていて、首に布のようなものが巻かれて息絶えている娘を見つけるのです。119番通報します。着衣に乱れはなかったのですが、首にタオルが巻きついており、顔は鬱血していたといいます。救急隊は死亡を確認しました。警察が呼ばれます。部屋は施錠されて、窓も閉まっており、物色の跡はありませんでした。侵入した形跡がないことなどから、自殺の可能性が高いと岐阜県警はみている、と報道されます。

 カードキーは複製が極めて難しく、2枚ある1枚は父親が所有し、他の1枚は室内の玄関で見つかったといいます。完全な「密室」です。しかし、捜査員は何か不自然なものを感じます。それは、玄関ドアの新聞受け。事件発覚のとき、新聞受けの内側の箱のふたが開いたままだったそうです。新聞を取っていなかったという被害者がふたを開いたままにするのは考えにくかったそうです。そこで、ドアに何らかの細工をするために、犯人が開けたものなのではないか、と思い至ります。

 父親が交際していた男性のことを娘から聞いていたのでしょう。おそらくそれが捜査員に告げられたのでしょう。捜査員はその日の夕刻から、同じ病院に勤務する臨床検査技師の男性(32歳)から任意で事情を聞くことになります。女性が亡くなったのは、9月29日の夕方前後。アリバイ工作を十分にしていなかったのでしょう。容疑者は女性が殺害されたとみられる時間帯前後の供述に不審な点があることを見抜かれ、追及によって容疑を認めたといいます。容疑者は女性の部屋の「鍵をかけて出た」と供述したのですが、鍵を持っていなかったのです。

 容疑者は、ドアの外から新聞受けを通して内側の鍵にひもを付け、外側からひもを引いて施錠する工作を説明したのだそうです。「名探偵コナン」に出てきそうなトリックです。ことによると、この容疑者は「名探偵コナン」のファンで、よく読んでいたのかも知れません。しかし、「密室」なだけで「自殺」と判断されるわけではありません。「縊死(いし)」と「絞死(こうし)」では、所見が違います。自分で首を吊って「縊死」で亡くなることはあります。いわゆる「首吊り自殺」です。しかし、「絞死」で自殺することは極めて難しい。自分で首を絞めて意識が遠のいていけば、絞める力が弱まります。何かの道具の力を借りないことには無理なのです。

 記事によると、被害者は首に布のようなものが巻かれてうつぶせになって亡くなっていたといいます。一般的にこれは「絞死」です。首を絞められて亡くなったのです。これを自殺と考えるのは極めて不自然です。容疑者は「自殺に見せかけるつもりだった。交際トラブルで殺害した」などと供述したようですが、こんなトリックで警察を騙せると思ったのでしょうか。

 「鬱血(うっけつ)」があったといいます。定型の縊死では、鬱血はありません。頭顔部の鬱血は、「絞死」に顕著な所見なのです。捜査員がそれを知らないということはありません。岐阜新聞の10月20日の記事は読者の興味を引くようにドラマ仕立てに書いてありますが、記者は知ってて書いているようにも思えます。

 9月30日、午前。各務原市のアパートの1室で、遺体が見つかった。着衣に乱れはなかったが、首にはタオルが巻きついており、顔はうっ血。救急隊が死亡を確認した。(岐阜新聞から)

 コミックでは、実際には人は死にません。だから、被害者の苦痛や残された家族の悲痛に心が及ぶことはありません。しかし、これは現実に起きたことなのです。ご家族の悲痛には強く心を痛めます。

※ この記事は、産経新聞、読売新聞、岐阜新聞の記事などから構成しています。この記事内容が必ずしも真実とは限らないということをご承知おきください。iPS細胞に関して、十分に裏を取らずに報道した読売新聞や共同通信(一義的には嘘をついた研究員が悪いがその嘘を鵜呑みにした報道機関がお粗末)、 遠隔操作ウイルスに感染したパソコンから犯行予告が書き込まれた事件で誤認逮捕が相次いだ三重県警や神奈川県警、大阪府警などの警察(サイバー犯罪対策課(室)の人たちは遠隔操作について考慮しておくべきであった)。何が真実なのか、早計に断定できない時代です。

(追記) この記事を掲載して、妻に「私の旅行ブログに殺人事件のことなんか書いて!」と叱られました。しかし、Yahoo!ニュースが紹介していた岐阜新聞の「県警、密室トリック見破る 各務原女性殺害、現場に違和感」(2012年10月20日11:21)という記事を読んで、書かずにはいられなかったのです。

 twitterには、「よくやった!」という評価するコメントがあったのですが、私は逆に「え!このレベル?」と思えてしまったのです。記事には「県警幹部は「事件の線は薄いとの見方は確かにあった」と振り返る。」とありますが、これが事実だとすると疑問です(記者が面白くするためにちょっと作った?)。「縊死」と「絞死」では、所見が違います。「鬱血」があったといいます。それならば、「絞死」を疑うべきです。

 2010年、全国で警察が扱った死体は、17万体ほど。そのうちの834体が「犯罪死体」(全体の0.5%)で、18,383体が「変死体」と判断されました(10.7%。88.8%が「非犯罪死体」)。犯罪死体は検証・実況見分が行われ、変死体は刑事訴訟法第229条の基づいて検視が行われます。検視の結果、非犯罪死体と判断されたものが56.0%。「犯罪死体またはその疑いのある死体と判断された」のが44.0%。

 岐阜県で警察が取り扱った死体は、2,386体(警察庁刑事局捜査第一課に報告のあったもので、交通関係は除かれている)で、そのうちの614体に「検視官」が臨場していました。臨場率は25.7%。臨場率の全国平均が27.8%、最高が沖縄の84.4%で、最低は神奈川県の11.4%です。「臨場」とは、警察組織の人間が事件現場に臨み、初動捜査に当たることを意味します。

 刑事訴訟法第229条には、「1.変死者又は変死の疑のある死体があるときは、その所在地を管轄する地方検察庁又は区検察庁の検察官は、検視をしなければならない。2.検察官は、検察事務官又は司法警察員に前項の処分をさせることができる。」とあります。刑事部捜査第1課あるいは刑事部鑑識課には、一定以上の刑事経験を持ち、警察大学校において法医学を修了した警部または警視以上の階級を有する者がいて、これを「検視官」と呼称しています。

 「平成10年以降に発覚した犯罪死の見逃し等事案について」(刑事局捜査第一課)という報告があります。それによると、「絞死」を「縊死」としてしまったものが3件。1998年、栃木県で男性59歳が実際は絞殺されたもの(同年に発覚)、2000年、男性42歳が実際は妻とその知人に絞殺されたもの(10年後の2010年に発覚)、2002年、警視庁管内で女性81歳が実際は知人に絞殺されたもの(同年発覚)。

 犯罪を見逃した要因は、関係者からの供述を鵜呑みにした、偽装工作を看破できなかった、保険金照会・薬毒物検査を実施しなかった、裏付け捜査が徹底していなかった、が挙げられるようです。

 記事によると、「逮捕は翌日の未明。地検幹部は「事件、事故などあらゆる可能性を排除せず、迅速に犯罪性を見極めた捜査だった」と話す。」とあります。このスピードは褒められてしかるべきでしょう。しかし、この記事の論調は、出来の悪い子がたまたまいい成績を取ったので、褒めちぎっている感があります。スピードを別にして、この事案で「他殺」として事件性を認めるのは警察として当然の気がします。犯罪が見逃されて、自殺として処理された事件はどのくらいあるのでしょう。警察の捜査力の向上を期待してやみません。

(追記) 「死体は語る」、「死体は生きている」、「死体は知っている」、「死体は切なく語る」など法医学に関する多数の著作で知られる元東京都監察医務院長で作家の上野正彦氏は、ニュース番組にビデオ出演して次のようなことを語りました。

 自分で首を絞めて自殺することもまったく不可能なわけではない。その場合、立って首を絞めることはできず、座って首を絞める。首を絞めるために頭をやや後方にのけぞらせるから、意識を失うと後方に倒れる。自分で首を絞めて自殺した場合には、死体は「あおむけ」である。

 上野正彦氏は、「これまでに解剖5,000体以上、検死20,000体以上の死体を見てきた死体の専門家」(wikiより)なのだそうです。こういう知見を警察が共有していないということは、誤捜査を招く不幸な事態です。

(参考) 毎日新聞が2012年12月15日に配信した「4都府県警が公表したPC遠隔操作事件の捜査に関する問題点の検証結果の概要」です。

 ■警視庁 逮捕には相当の理由があったと考えられるが、遠隔操作に対する知識を捜査員が十分に有していなかった。今後はより慎重に逮捕の要否を検討・判断するよう指導を徹底することが必要である。脅迫メールを送信した経緯や動機についての男性の説明には曖昧な点があり、供述にも変遷があった。
 一時的であっても同居の女性をかばって犯人を装っていたと主張するなど、自白の信用性に疑いが生じる余地も多く見受けられた。結果的に虚偽自白を見抜けなかったが、説明態度や内容を鑑みれば、徹底した供述の吟味が必要だった。PC内に証拠が残され、ウイルス検査でも異常が発見されなかったことから、逮捕後も捜査員は犯行が遠隔操作によるとの認識を持つには至らなかった。
 ネット空間の犯罪については、民間との協力体制を一層強化すると共に高度な知識を有する捜査員の育成が急務である。虚偽自白を見抜けなかったことを教訓とし裏付け捜査の徹底や供述吟味担当官の活用、犯人性や秘密の暴露の有無を確実に検討するなど、「捜査の基本」を改めて徹底させなければいけない。

 ■大阪府警 PCの解析結果から得た客観的証拠を犯人性立証の柱としたため、否認供述の掘り下げが不十分で、供述の吟味が足りなかった。高度なネット犯罪は手段・方法が日々変化・複雑化しており、証拠の意味・内容を一層慎重に検討すべきだった。PC内の全ファイルの解析は、高度な技術力や長期の期間が必要で、1都道府県警察レベルでは困難だった。このためインストールされたソフトウエアなどに対象を絞り込んだが、不正プログラムは発見できなかった。
 サイバー犯罪対策部門が不正プログラムの発見、解析を実施していたが、近畿管区警察局大阪府情報通信部や情報管理課と緊密に連携して組織全体としての取り組みを考慮すべきだった。サイバー犯罪対策部門としては、解析能力を有する捜査員を複数投入し、より多角的に解析することも検討したが、解析資機材の数量不足のため実施に至らなかった。
 取調官から聴取したところ、「取り調べを始める際には供述拒否権を告知した」「客観的証拠による立証に重点を置き、淡々と取り調べた」「自白を強要したり、利益誘導したような事実はない」とのことであり、その他の調査結果からも不適正な取り調べは確認できなかった。

 ■神奈川県警 誤認逮捕された男性のパソコンの解析担当者は、(遠隔操作の手法の)クロスサイト・リクエスト・フォージェリの知見がなく、不審な通信履歴を第三者介入の証拠と認識せず、更なる解析を実施しなかった。上司にも報告しておらず、解析作業を組織的に把握・管理していれば、不審な通信履歴の更なる解析ができた可能性がある。
 男性は容疑を認める上申書を作成し、理由を「少年院に送られる不安と一刻も早く社会復帰したいとの思いから」と説明。自分が置かれた状況の苦しさから、うその供述をした状況が認められ、少年の特性である「迎合性」の可能性もある。取調官の刑事手続きの説明は、少年院に入ってしまう不安を助長させた恐れがある。否認している男性に、自らの犯行でないことを具体的に説明するよう求めた言動は、殊更に困惑させた可能性があり、不適正な取り調べにつながる恐れのある行為に該当する。
 ハンドルネームの由来に関する上申書の裏付け捜査を行わず、男性から示された(犯行予告の)「2秒間での打ち込み」に関する疑問に対し、不自然さを解消する捜査を行っていない。男性が犯人であることを打ち消す「シロにする捜査」が十分ではなかった。

 ■三重県警 警察署の捜査員にネット犯罪捜査の専門知識や、遠隔操作ウイルスの十分な知見がなかった。支援を要請された県警本部のサイバー犯罪対策室員も、遠隔操作ウイルスによる犯行との想定をしていなかった。ウイルスチェックは最新の対策ソフトで行ったが、検知されなかった。大阪府警と情報交換し、PCの解析範囲を広げてウイルス発見に至ったが、府警の関連情報がなければ更に時間を要した恐れがある。
 男性の身柄を拘束する前に、動機があるかなど犯人としての適格性について多角的に検討する余地もあった。関与を否定していた男性の供述について、男性が犯人でないとする方向性の検討を十分に行わなかった。豊富な知見を有する取調官を充てることなどを初期段階から考慮すべきだった。無差別殺人を防止しなければならないという焦りもあった。
 釈放後にポリグラフ検査を実施したが、任意捜査段階や勾留前に実施していれば、供述の信用性を吟味する材料として活用できた可能性もあった。取り調べに不適正行為は認められなかった。今後は、捜査部門から情報技術解析部門に初期段階から支援を要請し、連携の強化を図る。


              (この項 健人のパパ)

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